第33話 エピローグ
魔王を倒し、魔王軍を国外へ追い払った後。
いろいろとドタバタした。おもに国内の復興で。
魔王軍が各地に残した爪痕は、一朝一夕には戻せなかった。
農業国でもあるテルティア王国は、肝心の農地の大半が荒れていた。
土属性魔法や水属性魔法を使って急ピッチに農地と水路の回復がおこなわれる。
でも一番のダメージは行政だった。
テルティア王国は三つの騎士団を持ち、王国の領土を細かく分割して魔導騎士や貴族騎士によって領地経営がなされていた。
その騎士の大半が、魔王軍とぶつかった「トリティク平野の戦い」で全滅したのだ。
つまり領地経営や都市の市長になるものがいなくなったと言うこと。これには王国も大混乱だった。
かろうじで生き残った騎士たちがいるので、何とか行政機構を再編する。
――というか、貴族騎士筆頭のあいつは、ちょっと信用が……いや、復興が最優先だ、仕方ない。
ハーピィ族や他の魔物に対する対処もおこなわれた。魔王が乗っていたドラゴンも。
主に辺境伯のところに住むことで、落着を見せた。
そんな状況でドタバタして、ようやくひと段落したころ。
念願の、俺とフローリアの想いを叶える儀式。
国を救った英雄に対する、功績をたたえる式典が行われた。
◇ ◇ ◇
暖かな昼の日差しが降る王都。
街のあちこちに陽だまりができている。
お城の前の広場に、民衆が詰めかけていた。
一様に広場の奥にある一段高い舞台を見つめている。
そこには、俺とフローリアがいた。二人とも白い服を着ている。
俺は白いスーツ姿。
彼女は白いドレス。
背中へと流れる桃色の髪に純白のドレスが似合っていた。
ごてごてした紫の衣装を着た神父――に扮した辺境伯イザベルが舞台端から進み出てくる。
俺たちの前まで来ると、厳かに口を開いた。
「王女フローリア、大賢者トラン。両人、健やかなるときも、病める時も、愛を貫くと誓いますか?」
俺の答えは当然決まっていた。
「はい」「はいっ」
フローリアは恥ずかしそうに微笑みつつ、良く通る声で答えた。
イザベルが聖水を巻き、錫杖を掲げる。
「では、神の前で誓いのキスを」
俺はフローリアに向き合うと、彼女の細い顎に指を添えて上を向かせる。
フローリアのすみれ色の瞳が戸惑うようにぱちぱちと瞬きする。
「フローリア、いいか?」
「は、はい」
「好きだ。結婚してくれ」
俺の問いかけに、フローリアの垂れ目がちの目尻に涙が浮かぶ。
「はいっ! ――ん」
彼女の心からの返答を受けて、俺は思わずキスをしていた。
唇に感じる、柔らかな花弁。甘く優しい感触。
それから唇を離した。名残惜しさを感じる。
「フローリアを、すべてのパンツごと愛してる」
「は、はいっ、トラン! わたくしのパンツの底まで愛してくださいませ!」
「だからなんでパンツやねん」
抱き合う二人を、舞台袖にいたミーニャがジト目で見つつツッコミを入れた。
その瞬間、広場に歓声が爆発した。
「新しい王様の誕生だ!」「フローリア王女ばんざーい!」「パンツ国王、ばんざーい!」
俺とフローリアは手を握りつつ、空いた方の手で民衆に手を振った。
ますます広場に歓声がこだまする。
青空から降る陽光は、夢のように輝いていた。いつもでも。
『パンツを笑うものパンツに泣け!――俺はパンツで無双する――了』
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