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パンツを笑うものパンツに泣け!――俺はパンツで無双する――  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第25話 イザベル辺境伯の思い出


 イザベルは、まるで思い出を語るように一つの昔話をした。



 その昔、とても美しいエルフの姫がいた。

 透き通るエメラルドの髪を腰まで伸ばし、華奢な体を包むドレスは花のよう。

 だが傲慢にも自分は美しすぎて、この世に自分にふさわしい男などいないと考えていた。


 ある日、姫は聖なる竜の王子と出会った。

 純白の鱗を持つとても美しい竜で、人の姿になればウェーブのかかったプラチナブロンドの髪に白いジャケットとズボン姿。


 神々しいまでに華奢な美男子で、姫は一辺に恋をした。

 竜の王子も姫の美しさに心奪われ、お互いに愛し合った。


 ところが世界にひびが入った。

 この世界は闇に浮かぶガラス玉のようなもの。

 闇の瘴気が世界にあふれた。

 瘴気を浴びた動植物は異形化して化け物となる。


 このままだと世界は滅ぶ。


 そこで竜の王子は世界中を飛び回って瘴気を食らった。

 純白のうろこは次第に黒く染まっていき、限りなく命を縮めていった。

 瘴気をすべて喰らいつくして最も深い海の底に沈めば世界は助かるだろう。


 しかし王子は出来なかった。

 死の間際に愛する姫を今ひとたび見たくなったのだ。


 ぼろぼろになった竜の王子はエルフの村にやってくる。

 出迎えた姫は、どうして自分を犠牲にしてまで世界を救ったのかと、泣きながら問い詰めた。


 彼は微笑んで答えた。


「世界を救ったつもりはない。ただあなたを失いたくなかった。でも最後の最後で、あなたに会いたくなってしまった」


 竜の王子は死んで、エルフの村は壊滅。

 世界樹はその力で抵抗したが枯れて折れてしまった。


 エルフの姫は瘴気を消す聖なる魔法を発明するとともに、髪を切り、二度と恋をしないと誓った。


       ◇  ◇  ◇


 語り終えたイザベルは、軍服の襟を正した。気持ちを引き締めたようだ。

 エメラルドのような緑の瞳で俺を見て笑う。


「まあ、エルフでも忘れるぐらい遠い昔にそのような話があったそうだ」


「その姫って……いや、違うか」


「なんだ? 我輩のことだとでも言いたいのか?」


「娘がいたもんな。なんでもない」


 ――竜の王子に恋した姫ってイザベルじゃないだろうかと思ったが、家庭の事情にまで深く関わりそうだったので聞くのはためらわれた。



 ふっ、と意味深な笑みを浮かべるイザベル。


「ほかに何かあるか?」 


「いや、魔物のめどが付いただけで安心できたよ――じゃあ俺は王都へ向かうから。明日以降、騒がしく

なったら突撃するよ」


「うむ。気をつけて行ってくるのだぞ」


「ああ、またな」


 俺は軽く挨拶して東へと向かった。



 東の空からは、城壁を乗り越えてペガサスたちが飛んでくる。

 事後処理が終わったのだろう。


 途中、ミーニャが長いしっぽを揺らしてしなやかに近づいてきた。


「トラン、どこ行く?」


「王都へ行ってくる」


「む。あたしも行く」


「俺一人でいい。ミーニャは王女の傍にいてくれ。専属のメイドだろう?」


 無表情ながら、じーっと見つめてきた。何を考えているのか、いまいちよくわからない。


「わかった。でも、ごはんは?」


「どうせ二、三日だから、パンと干し肉だけ用意してくれないか?」


「ちょっと待ってて」


 ミーニャはメイド服の裾を跳ねさせて駆け出した。てきぱきと動いて袋にパンと肉を詰めていく。

 そしてすぐに背負い袋を持ってきた。


「はい、これ」


「助かる。ありがとうな」


 受け取って背負った。



 ミーニャは俺に興味を失ったかのように、鉄板に向かった。

 目にも留まらぬ素早さで、トングで肉を裏返して焼いていく。


「じゃ、行ってくる」


「にゃ」


 ミーニャはこちらへ目も向けずに返事をした。頭の上の猫耳だけが楽しそうにピコピコと動いている。

 そんな彼女に背を向けて、俺は東へと歩き出した。


 ――作戦は立った。

 今日中に王都まで行き、近くに潜伏する。

 明日の一斉蜂起に合わせて王都に乗り込み、手薄になった魔王を倒す。パンツ魔法を目立たせながら。


 ――ここからが正念場だ。

 もうフローリアに辛い思いはさせない。

 俺一人ですべてを成し遂げてやる!



 そんなことを考えているうちに中庭の端まで来た。

 目の前には高い城壁。灰色の石壁に太い木の幹や根が埋まるように絡まっている。

 まるで古代遺跡のようだ。


 上を見上げながら小声で呟く。


「――下着飛行パンツフライト」 


 下腹部に力が掛かって体が浮き上がる。

 風を感じながら上空へ。白い雲の浮かぶ青空が近づく。



 俺は東にある王都目指して空を飛んでいった。


次話は明日更新。

→『第26話 正体不明の攻撃』

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