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パンツを笑うものパンツに泣け!――俺はパンツで無双する――  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第21話 ウィズダの思い出


 どこかの草原。

 少年のウィズダとよく似た子供たちがいた。

 全員、黒いジャケットに半ズボン姿。喪服と思われた。


 背の低い弟が寂しげな声で言う。


「お母さん死んじゃったね。僕たちもダメなのかなぁ」


「僕が助けるよ。魔法を解明して、きっと病気を治す方法を見つけるから」


「お兄ちゃん賢いもんね。お願いね!」


「任せといて」


 ウィズダと子供たちがほほえみあう。



 小高い丘の上にあるトリストゥリム魔法学院の校門前。

 白シャツに半ズボン、短いマントを着た子供たちが門をくぐっていく。百人はいる。

 その中にウィズダもいて、顔を希望に輝かせていた。


 授業を受けるウィズダ。研究発表をして先生に誉められる。


 廊下で本を開きつつ先生に質問するウィズダ。


 図書館で頭を抱え込むウィズダ。


 

 深夜、学生寮の裏庭にウィズダがいた。

 地面に描かれた小さな魔法人の前に座り、呪文を唱えながら手に持ったウサギをナイフで刺した。

 傍には開いて置かれた鎖付きの分厚い本がある。


 ウサギから流れた血が魔法陣にかかると、紫色の妖しい光を放ち始める。

 すると、ウサギが前足をぴくっと痙攣させた。

 そっと魔法陣の中に降ろすと、ウサギは元気にぴょこっと跳ねた。


 ウィズダの顔に笑みが浮かぶ。


「よし、成功だ」


「何をしている!」


 突然、鋭い声に咎められた。

 ジャケットを着た若い男の先生が茂みをかき分けて現れる。


 驚いたウサギが魔法陣から飛び出した。

 しかし、そのまま地面に倒れて動かなくなる。

 赤い血だまりが広がった。


 ウィズダは立ち上がるものの、怯えて戸惑っている。

 傍へ来た先生が分厚い本を拾い上げて顔をしかめた。


「これは、持ち出し禁止の禁術の書! なんてことを!」


 先生はウィズダの腕をつかむと、引っ張っていく。



 重厚な調度品のある応接室。

 窓に背を向けて執務机に年輩の女性学長が座り、前にはウィズダと若い先生が立っている。

 学長が優しく微笑みかける。


「どうしてこんなことをしたのでしょう?」


「僕の家の人たちは魔力が多くて、それでみんな死んじゃうから……」


「魔力が暴走してしまう病気ね」


「だから治す方法を早く見つけたいんです」


「だからって禁術に手を出してはいけないわ。正しい魔法を学びましょう」


「もう四大元素魔法は上級まで。ほかは中級まで終わりました」


「そう、やっぱりね。とても優秀だわ。特別講師をつけて研究に専念させましょう」


 長い白髪を揺らして微笑む学長に、ウィズダが驚く。

 横に立つ若い先生が眼鏡を光らせつつきつい口調で言った。


「おとがめなしですか!? この生徒は禁術に手を出したのですよ!」


「基礎学問を終えた優秀な生徒が独自研究をしただけではありませんか。ウィズダ君もそう望むでしょう?」


「はい! 水属性は上級になれば生命を司ります。きっとこの属性をもって生まれたのは家族を助けるためだと思うんです」


「頑張りなさい」


 若い先生は不満そうにかをしかめたが、ウィズダの顔は笑みで輝いた。



 それからはウィズダは寝る間も惜しんで研究に励んだ。

 三本の塔の中にある研究室で、講師とともに実験を繰り返す。

 時には自分の体を実験台にもした。



 しかし、ある日のこと。

 本や器具が乱雑に並ぶ狭い研究室で、ウィズダが手紙を読みながら震えていた。


「弟が……」


 手紙には弟が病死したことが記されていた。

 魔力の暴走により、高熱を発して亡くなったと。


「何が正しい研究だよ……誰も真理にたどり着いていない正攻法じゃ、間に合わないじゃないか――っ」


 ウィズダは涙を流しながら手紙を握り潰す。


「どうして僕の家族だけ犠牲にならなくちゃいけない? 世界も犠牲を払うべきだ! ――僕はどんな手を使っても、生命の根元と魔法の真理にたどり着いてやる!」


 ウィズダは鞄に器具や薬、鎖の着いた本を乱暴に詰め込むと研究室を飛び出した。


       ◇  ◇  ◇


 森と断崖絶壁に挟まれた平地に「わぁぁ!」と声にならない音が響いて我に返った。

 砦の兵士が勝利の歓声を上げているらしい。


 俺はウィズダのパンツを握り締めて突っ立っていた。


 ――手の中のパンツはまだ語る。

 その後、学院を飛び出したウィズダはネビュラと出会い、非道な実験を繰り返すことになる。

 そこまでしても結局、病気を解明できないまま家族を失い、生ける死者となって研究を続けた。



 ――どこまでも賢く、そして愚かな奴だ。

 頭を振ってウィズダの過去を追い出すと、前を向いて歩き出す。


「方法を間違えた死者が、土に帰っただけだ」


 風が吹いて俺の黒髪を揺らしていく。

 魔法のパンツは、暇になった時にでも調べようと思ってポケットに突っ込んだ。


 ついでにズボンをずらしてパンツを見る。


----------------------------------------

名前:トラン   属性:パンツ


職業:賢者Lv95


戦闘スキル:【パンツ属性魔法:極級】【投擲:初級】

補助スキル:【狩猟:中級】【逃走:中級】【料理:初級】


筋力:B 敏捷:S 知恵:SSS

HP:2380  MP:9500

----------------------------------------

 レベルが90台だというのに、3つも上がっていた。

 MPも倍ぐらい爆上がりしている。

 死んでいたとはいえ、あれだけドラゴンを倒せば当然か。


 それに、ここでのレベルアップは嬉しい誤算だった。

 魔力の多さは、魔法を使える回数が増えるだけじゃなく、魔法の威力にも直結していた。


 つまり俺の魔法の威力が倍になったはず。

 魔王軍や魔王ハインリッヒを倒せる可能性が格段に増えた。



 俺は笑みを浮かべつつフローリアのいる方へ歩いた。

 すると、向こうから白いドレスを揺らして彼女の方からやってきた。

 彼女の隣ではメイド服を着たミーニャが、周囲を警戒しながら歩いてくる。腰の包丁に手を添えつつ。


 近づくとフローリアが風でなびく桃色の髪を手で押さえつつ微笑んだ。


「さすがトランですわ。一人で三魔将を倒してしまわれるなんて」


「パンツの強さは無限大だからな」


「なにゆーとーねん」


 ミーニャがボソッと呟いたが俺もフローリアも気にしない。

 フローリアは優しい笑みを浮かべて言った。


「でも少しお疲れのようですね。辺境伯の砦で休ませてもらいましょう」


「そうだな」


 俺は断崖の向こうにある砦に目を向けた。

 陽光に照らされる重厚な砦は、未だに歓声が続いていた。



 ――と。

 翼の生えた白馬が四頭、砦から飛び立った。

 白鳥のような大きな翼を羽ばたかせてこちらへと向かってくる。


 俺は飛んでくる幻想的な生き物から目が離せなかった。


次話は明日更新。

→『第22話 辺境伯イザベルとファナ』

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