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パンツを笑うものパンツに泣け!――俺はパンツで無双する――  作者: 藤七郎(疲労困憊)


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第13話 パンツの恩恵は無限大


 夜の森。

 休んでいるところを三魔将ゲーラとハーピィ軍団が襲ってきた。



 俺は鼻で笑いつつ、上空を眺める。

 たった今ハーピィたちが脱ぎ捨てたパンツが、星空を背景にしながらたなびいており雄大な景色を作っていた。


「愚かだな。しょせんは魔物か」


「なにっ!? この期に及んで強がりか!」


「違う! 偉大なるパンツを自ら捨て去る、その行為こそが愚かだと言ったのだ!」


「パンツごときが、訳の分からんことを! ――やれ!」


「「「キシャー!!」」」


 夜空を埋め尽くすハーピィーたちが、一斉に空へと昇っては、一気に俺めがけて下降してきた。

 俺は左足を前に出しつつ、右手を前に出して叫んだ。


「偉大なるパンツたちよ、風を纏いて空を切り裂け! ――下着大嵐パンツストーム!」



 俺は大きく右手を振った。蛇のように腕をぐにゃっと動かすと、上空の大気が従うかのように鳴動する。


「な、なに!」「ぎゃ!?」「ぐぎゃ!?」


 色とりどりのパンツが風に混じって押し寄せる。


「「「キィィ――ィ!!」」」


 空を飛んでいたハーピィたちは巨大なうねりに巻き込まれた。

 悲鳴を上げつつ、羽毛を散らして次々と墜落していく。



 ゲーラだけは竜巻のような風で全身を守って耐えていた。

 しかし彼女の表情は驚愕でゆがんでいる。


「ば、ばかな! パンツが風を操るだと!」


「俺のパンツに不可能はない! パンツは森羅万象とともにあるのだから! 自然の恵みだ!」


 俺の堂々とした物言いに、ゲーラは激高して叫んだ。


「何を訳の分からぬことを!」


「わからん、だと? パンツの素材たる蚕も麻も綿も羊毛も、すべて自然の恵みではないか! それらがパンツになるまでに火水風土の恩恵を受けている!」


「だからと言って――ええい、くそう!」


 ゲーラは何か言い返そうとしたが、思いつかなかったらしい。

 何も言えずに空中で地団太を踏んだ。なかなか器用な奴だ。

 まあ、パンツを語らせたら俺の右に出る者はいないからな。



 俺がうんうんと独り合点していると、ゲーラが苛立たしげな声で叫んだ。


「だが、部下を倒したことは誉めてやる! ただし触媒であるパンツを使い尽くした貴様はもう終わりだ! ――我が奥義にて貴様など切り刻んでくれる!」


 上空に留まるゲーラは両腕を前につきだした。

 体を覆っていた竜巻が消えて、人の背丈よりも大きな半月状の透明な刃が生み出された。


 俺は不適な笑みを浮かべつつ、ふっと鼻で笑った。


「なくなったら終わりだと、誰が決めた?」


「なに!?」


 俺は右腕でゲーラを指さしつつ叫ぶ。


「パンツは慈悲の象徴! なぜなら初めて与えられたパンツは親や親戚からの贈り物だ! 存在そのものが慈悲と安らぎの固まりなのだよ」


「それがどうした! ――くらえ!」


「もう遅い! ――下着贈与パンツギフト! 貴様に似合う、とびきりのレース編みパンツで空に散れ!」


 彼女の股間が光り輝く!

 ゲーラは風の刃を俺に向かって飛ばしてきた。


真空嵐ソニックストーム――わが命と引き換えにしてでも、貴様をぉぉぉ!」


「――下着大爆破パンツエクスプロージョン!」


 ドゴォ――ッ!


 夜空に巨大な爆発が散る。

 ゲーラの悲鳴が轟いた。


「ぎゃぁぁぁ――!」


 鳥の羽毛と千切れたパンツが舞い散る中、俺は背を向けて歩き出す。


「パンツを笑うもの、パンツに泣け!」


 高らかにそう断言しながら。



 俺は、ゆうゆうと洞窟へと戻っていく。

 入り口には戦いの行く末を心配してか、ミーニャに支えられたフローリアがいた。


 俺は気軽に声をかける。


「もう終わった。安心して休むといい」


「トラン、うしろ」


 ミーニャが鋭く言って、すばやく包丁を抜いた。

 頭の上の猫耳が警戒するようにピピっと動く。


 振り返ると、ずたぼろになった女が地面を張ってきていた。

 マントのような翼は焼け落ち、白い肌にはやけどの後がある。


 ゲーラだ。

 生きてはいたがぼろぼろの姿になっていた。

 ただ下半身で大爆発したわりには形を保っているなと少し不思議に思った。



 ゲーラは翼を引き摺り、細い腕で地面を這いながら傍へと来る。


「まだだ……まだ終わってはいない」


「俺の魔法に耐えたとはやるな――そうか、全身を覆う羽毛が衝撃を減らしたか――だが、諦めろ。次は死ぬぞ」


 ゲーラは歯ぎしりをしながら俺をにらみ上げる。


「負けるわけにはいかぬ。ハーピィ族の自治独立こそ、我々の悲願! 決して諦めない!」


「そうか。覚悟を決めているのか。だが俺も王女との約束を果たすためには負けるわけにはいかないんでな。残念だが――」


「お待ちください」


 フローリアが桃色の髪を揺らして進み出てきた。

 俺は彼女をかばうようにゲーラとの間に立つ。


「フローリア、危険だ。下がっていろ」


「いいえ、トラン。話し合いをさせていただけませんか?」


「別に俺は構わないが……ゲーラが素直に従うか?」


 俺は不審な目で地面を這うゲーラを見下ろした。



 フローリアは大きな胸を抑えるように手を当てて、悲痛に顔をゆがめた。


「ハーピィさんは見た目で誤解されていますが、半人半妖のエルフと同じ妖精の一派であるはずです。どうして魔王軍に協力されておられるのでしょう?」


「ふんっ、言ったところでどうなる!」


「あなたがどう転んでも、得する方法を教えられます」


「なんだって!?」


 ゲーラは驚きで目を見開いた。

 フローリアは伏し目がちに一つ頷く。


「今後わたくしたちに攻撃しないのであれば、勝利の暁には望みの土地を与えましょう」


「二重スパイになれと?」


「いえ、そこまでは。やられたふりをして、しばらくおとなしくしていてくれたら助かります」


 ゲーラは地面に横たわったまま唸る。考え込んでいる様子。

 ダメ押しとばかりにフローリアが言葉を続けた。


「どう転んでも目的は達成される。民を率いる長として、悪い話ではないと思いますが?」


 その言葉に、ゲーラの体からだから力が抜けた。

 落ち着いた声で話す。


「わかった……受け入れよう」


「よかったですわ」


 フローリアはたれ目がちの目に優しい笑みを浮かべた。



 俺はゲーラに言った。


「決まりだな。手助けはいるか?」


「ふん。こんな傷、しばらく休めば直る!」


「そうか。だったら、どうにもならない物だけ直してやろう」


「なに?」


「――百下着贈呈ハンドレッドパンツギフト


 俺は右手に魔力を集めると、回すように振った。


 青い光がゲーラの腰の辺りを包む。

 森のあちこちでも光る。倒れたハーピィたちだろう。

 同時にフローリアも桃色の光に包まれた。



 ゲーラが目を見開いて腰を手で押さえた。


「こ、これは……パンツ」


「そうだ。青空を飛ぶお前に似合う、青色のパンツにした」


「貴様に施しなど受けぬ!」


「履かずに飛ぶというのか? なにもかも見られ放題になるぞ?」


「くっ! だからといって我を負かした相手に同情されるなど屈辱の極み!」


 ゲーラは顔を赤くしつつ、悔しそうに吐き捨てた。


 俺は彼女を見下ろしつつ堂々と言い放った。


「ふん。四の五を言わず、もらっておけ。なぜなら、パンツは人に与えられた最後の砦だからだ!」


「と、とりで……?」


「そうだ。全裸を見られてしまうのと、下着姿を見られてしまうのは、どちらが恥ずかしい?」


「そ、それは……」


「言わなくてもいい。答えなどもうわかりきったことだ。――パンツこそ、人の尊厳を守る最後の一枚フォートレス! パンツは決してバカにしていいものではない! 敬意を払うべき存在だ!」


 俺は胸を張って言い切った。


「なにゆーとーねん」


 どこからかツッコミが入ったが、俺の自信は揺らがない。



 ゲーラは口を半開きにして唖然とした表情で俺を見上げていたが、ふっと相好を崩して呟いた。


「己の力に対する信頼と想いの強さが、力の差につながったのだな……」


 フローリアがドレスを揺らして前に出ると、胸の前で手を合わせた。


「協力してもらうのですから、怪我は直しましょう――聖樹花園セフィロトガーデン


 フローリアの背後に背丈ほどもある巨大な蕾が生まれた。

 桃色の花弁が開いていくと、空中に白や黄色の細かな花びらが舞う。

 倒れたゲーラに舞い落ちると、光を放って体に染み込むように消える。すると傷が癒えていった。


 また森の上空にも花びらが舞い散る。

 手下のハーピィたちにも癒しが降り注いでいるのだろう。



 ゲーラが驚愕で目を見開きつつ上体を起こした。翼をまじまじと眺めて呟く。


「これが、花魔法の力……部下たちも治ったようだ」


「よかったですわ」


 フローリアは心からの笑みを浮かべると、まだ座り込んでいるゲーラに手を差し伸べた。

 ゲーラは少し戸惑いを見せたが、手を取って立ち上がる。


「世話になった。部下たちの怪我を治してくれたこと、感謝する」


「こちらこそ。これからもよろしくお願いしますわ」


 王女の素直な言葉が照れ臭いのか、ゲーラは頬を染めて視線を逸らした。


「では、戦いが終わるまでさらばだ」


 ゲーラは颯爽と背中の翼を羽ばたかせて森の木々の向こうに飛んでいった。



 俺はフローリアに近寄る。


「すごい魔法なんだな、花魔法って」


「トランには及びませんが、少しは役に立てて良かったです」


 フローリアは胸に手を当てつつ、安堵の息を吐く。しかし足元がふらついた。

 俺は手を伸ばして彼女の柔らかな体を支える。

 熱っぽい柔らかさを手のひらに感じた。


「治りかけなのに大技を使ったから、疲れも出るだろう。ゆっくり休んでくれ」


「ありがとうございます、トラン」


 洞窟へと歩みを進めると、フローリアは身を預けるようにして寄り添ってくる。大きな胸が体に当たって少し緊張した。


 その後はミーニャの手伝いで薬草粥を食べ、三人で眠りについた。


次話は明日更新。

→『第14話 三魔将ウィズダ』

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