アルケミストの昼休み
お得意先のおばさまから最高級のアクセサリーを贈られて戦々恐々としながら除草剤の合成を進めること数時間。
工房の外が賑やかになってきた。
そろそろ昼休みにする時間だな。
しかし今合成中の除草剤がまだ完成していない。
錬金術において合成、錬成、再構成が終わらないうちにその場を離れることは厳禁とされている。
除草剤の合成はまだ終わっていない、つまりここを出るわけにはいかないのだ。
「アルト、なにか食べるものあったっけ?」
「お持ちします。しばしお待ちを」
アルトはそういうと工房を離れて家へと戻っていった。
自分が持ち場を離れずに他のことをしてもらえるのは助手がいてこそだ。
それから十数分後、アルトは手作りしたであろう昼食を持ちこんできた。
こうして俺様たちはアルケミストらしい昼時を過ごすことになった。
持ち場を離れられない仕事をするアルケミストたちにとって工房内で食事をとるのはよくあることだ。
中には工房内に台所や食糧庫を作るアルケミストもいるらしいが流石に俺様はそこまではやらんな。
「しかしあのおばさん、何者なんでしょうね」
「さあな。よくわからんけど俺様が工房構えてすぐにお得意様になったおばさまだ」
おばさまについて俺様が知っている情報は少ない。
わかることはなんかめっちゃお金持ちってことと若い女の子が好きってことぐらいだ。
「私が男だったときよりも機嫌がよかったように見えましたね」
「あのおばさまは若くてかわいい子がみんな自分の子みたいに見えるんだと」
「なるほど……」
おばさまがうちをお得意先にしている理由は二つある。
まず一つ目は俺様のアルケミストとしての能力に対する信用、もう一つは俺様みたいな美少女が好みだからだ。
アルトが助手に付く前におばさま本人から直接聞いた話だ。
「マスター、除草剤の合成が終わった後の予定は?」
「なーんも。せっかくだし町の中でもぶらぶらしてみるか?」
除草剤の合成はあと一時間程度あれば終わる仕事だがその後の予定は空白だ。
おばさまからの依頼が入ってはいるが別に今日中にやらなければならない仕事ではないし、そんなに手間もかからない。
この機会にアルトを外へ連れ出してみようと誘ってみたが当の本人からの反応は微妙だ。
「えぇ……外を歩くのはちょっと……」
「いつも材料調達とか食料の買い出しとかで外出てるのに今更そんなこと言うか」
アルトはなぜか外出を渋っている。
アルケミストは仕事内容を差し引いてもあまり外に出たがらないものだが普段から雑用だのなんだので外出の多いアルトがなぜこんな反応をするのかがわからない。
「なんというかその……女の子になっていきなり外で歩くのって不安じゃないですか」
なるほど、そういうことか。
俺様がいきなりやったからとはいえ、望まぬ形で女の子になったアルトは右も左もわからない状態だ。
ならばなおさら外に出さなければ。
「だから早めに外に慣れようぜって言ってんの。お前のものをいろいろ買い揃えないといけないし」
「そういうものなんですか」
「そういうものだ。というわけでこの仕事終わったら外出るからな」
なんだかんだで押し通して俺様はアルトを外に連れ出すことにしたのであった。




