7
話しを戻そう。
私の瞳の色を見たにも関わらず、相手が黙ったままでいる理由。
あと考えられるとすれば、ぶつかった相手の家が王太子殿下の婚約者の座を狙っているくらいか。
ただもしそうであれば、私の素性を調べて脅しをかけてくる可能性もあるはずなんだけど、今のところ脅しのおの字も見当たらない。
だから私は結論付けた。
きっとぶつかった相手は、お達しの内容を知らないか、知っていたとしても忘れていると。
劇場内は広くて暗い。それならメガネをとって舞台に立ってもいけるのではないかと思ったのだ。
ちなみにいまだに王太子殿下には婚約者がいない。ということは、あのお達しはまだ有効だということ。
どうして十年が経った今でも、王家がこの瞳の色の娘を婚約者にしたがっているのは分からない。
でもせっかく手にしたチャンス。
それをこの瞳の色のせいで無駄になんてしたくない。
「なんとかなるかなって」
「なんとかってあなた……まぁあの人が何かしら対策を考えてはいると思うけど……」
レベッカさんの言うあの人とは団長のこと。レベッカさんは団長の奥さんなのである。
「そうなんですか?」
「そりゃああれでもこの劇団の団長だからね。団員を守ることは大切な仕事だもの……って噂をすれば来たわね」
「え?来たって……」
「シェリー!」
私たちの元に駆け寄ってくる一人の大男。
この大男こそが『暁の星』の団長、ラスターさんである。
「だ、団長!お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ」
「どうかしたの?ずいぶんと慌てているようだけど」
「レベッカ……」
「その様子だと何かあったのね」
おお、さすが奥さん。
私にはいつも通りの団長にしか見えなかったけど……
「……実はシェリーに渡すものがあってな」
「私にですか?」
「ああ。これを」
そういって団長が差し出してきたのは一つの箱。
「これは?」
「開けてみなさい」
「……はい」
何が入っているのか分からない箱を開けるのは少し緊張する。でも団長が開けろと言うのなら開けるまで。
私は受け取った箱の蓋を開けた。すると――
「これは……ペンダント?」
箱の中に入っていたのは、青い石のついたペンダントだった。
青い石……これはサファイアだろうか?すごく綺麗で素敵だ。
でもこんな高価なものを私にって、どういうことなのか。
初めての舞台だから特別に?……ううん。私の知っている団長はそんなことしない。だって団長は団員の誰に対しても平等だから。
それは奥さんであるレベッカさんに対しても同じ。
だからそんな団長が、初舞台の祝いに高価なペンダントを贈ってくれるとは思えない。
じゃあ一体これはどこの誰から……
「これはとあるお方からシェリーにと」
「あるお方……?」
たしかに今回の舞台の主演は私だ。でも私はまだ無名の新人。
こんな高価な物を贈ってくれるような人に心当たりなんてない。
だとすれば、あと考えられる可能性は一つ。
「あ!もしかして後援者の方が見つかったんですか?」




