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「そんなに緊張しないで?」
「は、はい……」
この状況で緊張しない方が無理だ。
今は役者根性などどこかへ飛んでいってしまった。
「ごめん。やっぱり先に言っておくべきだったね」
「い、いえ……」
先に言われても後に言われても結果はあまり変わらなかったと思う。
そもそも私が会ってみたいとお願いしたのだ。エセル様が謝ることではない。
チラっと王妃様を見る。
艶やかに煌めく銀の髪と暖かな陽だまりのような黄色の瞳。
美しい。それ以外の言葉が思い浮かばない。
(エセル様の美貌は王妃様譲りか……)
目の前に国宝級の美女と美男子……これを美の暴力とでも言うのだろう。
うんうん、またひとつ賢くなれ――
「シェリア?」
――なんて現実逃避をしていた私だが、エセル様の声に現実に戻った。
「あ……いえ。王妃陛下があまりにお美しくて」
「うふふ、ありがとう。そうだ!王妃陛下なんて言いにくいでしょう?だから私のことはベルティーナって呼んでね」
「えっ!?い、いえ、そんな恐れ多いです!」
「そんなことないわ。だってシェリアちゃんは近い将来私の娘に」
「は、母上!」
「……何よ。別にそれくらいいいじゃない」
「よくありません。何事にも順序というものが」
「あーはいはい。分かったわよ」
エセル様は完璧な王子様だ。それなのに今は完璧な王子様の顔ではなく、年相応の少年のような顔をしている。
こんな表情見たことがない。意外だ。でも……
「……ふふ」
でもこの表情の方がとても好ましいと思うのはなぜだろう。
「シェリア?」
「はっ……!」
私ったら一体何を……王族を前にして笑うなんて!
緊張しているから何かやらかす気はしてたけど、とんでもないことをしてしまった。
言い訳なんてできない。もうこの首を差し出すしか……
「も、申し訳ございません!大変な失礼を」
「いやいや!全然気にしていないから頭を上げて!」
「どうか私の首だけでご容赦していただければ」
「ちょ、首なんていらないからね!?私が欲しいのは」
「え?」
「はい、ストップ」
エセル様が何か言いかけたところで、王妃様によって私たちの口は塞がれてしまう。
「ん!」
「むぐっ!」
「はいはい。二人とも落ち着きなさい」
まさか王妃様に窘められてしまうなんて。
しまったと思ってももう遅い。




