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「そう……それはずいぶんとお似合いの姿ね。そうでしょう?エリーさん」
「……!」
「は、はい?今なんと」
「あなたの娘にお似合いの姿だと言ったのよ」
「なっ……!娘はあなたの恩人なのでしょう?それなのになんて失礼なんだ!」
どうやら男爵の中では、いつのまにか私が娘に助けられたということになっているらしい。
勘違いとは恐ろしい。
「あなたこそ何を言っているの?この娘が私の恩人ですって?そんなわけないじゃない」
「な、何っ!?さっきお礼をしに来たと言っていたではないか!」
「ええそうよ」
「それなら」
「この娘が私の婚約者を奪ったから、そのお礼をしに来たの」
「え」
扇があったらもっと悪女らしくなるけど、さすがに小道具までは用意できていない。
それならここは手を顎に、小首を傾げて……
「ふふっ。当然よね?家同士の大切な契約を壊してくれたんだもの。それ相応のお礼をしないと……ね?」
「ひっ!」
どうやら今のはうまくできたようで、男爵は怯え震えている。いや、これくらで怯えるって余程小心者なんだろう。ただ問題はこっちではなく……
「~~っ!」
エリーの目が異様に輝いている。
おそらくこの演技のせいだとは思うけど、やめて。男爵にバレるから今すぐその目はやめて!
今はそんな場合じゃないからね!?
「あなたの娘のせいで我が家は損失を被ったわ。それもかなりの金額をね」
嘘は言っていない。
ただ一刻も早く縁を切りたかったからお金の回収は諦めただけ。
カステッド侯爵家にはかなりの金額を支援していた。
その額は……
「三億」
「へ?」
「これが、あなたの娘に婚約者を奪われたことによって失ったお金よ」
借金の立て替えに品位を維持するためのお金、食費に交際費に、使用人の給料まで。
婚約している期間はずっと支援をしていため、このような金額になっている。
「さ、三億……」
「どう?これでことの重大さが理解できたかしら?」
エセル様の話によれば、ラストル男爵の借金は数千万ほど。
もちろん数千万だってすごい金額だ。でもここにきてそれよりもはるかに多い金額を耳にするなんて思っていなかっただろう。
「さぁどうやって弁償してくれるのかしら?」
「べ、弁償ですか?」
「ええ、当然でしょう?子どもの不始末は親の責任だもの」
こうは言ったが、男爵の反応は容易に想像できる。
どうせ自分には関係がないとでも言うのだろう。
「さ、三億だと?そんなふざけた話があるか!私には関係ない!」
「関係ないですって?」
「ああ!全部こいつが勝手にやったことだ!私は何も知らない!」
何も知らないと言えば許されるほど、貴族社会はそんなに甘い世界ではない。
子の不始末で命を落とすことだってあるくらいだ。
でも今はこれでいい。私の目的はお金ではなくエリーを助けること。
「あくまでも自分は無関係だと言いたいのね」
「そもそも婚約者を盗られるあんたが悪いんじゃないか?そんな地味な見た目だから男から捨てられるんだ!」
よくもまぁそんなことが言えるものだ。
たしかに私の容姿は地味だが、それとこれとは関係ない。
「……そう。あなたの言いたいことは分かったわ」
「そうだ!私は何も悪く」
「ではこの責任はエリー・ラストルにとってもらいましょう」




