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伯爵令嬢シェリア・ハジェットの夢~はじうま令嬢は、舞台の上で輝きたい~  作者: Na20


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 そんな自身の変化に戸惑いながらも、昼休みを三人で過ごすようになり一月が経った頃、思いもよらない出来事が起こる。



「た、退学ですか!?」



 ここ数日、いつも一番乗りであの場所に来ていたエリーの姿がなかったのだ。

 最初は体調が悪いのか、それとも何か用事があって学園を休んでいるのかと思っていた。

 けれど次の日も、その次の日も、さらにその次の日もエリーは現れない。

 普段はお互い学園内で関わらないようにしていた。

 だけどさすがに何かあったのかと心配になり教師に尋ねたところ、返ってきたのが退学という信じられない答えだったのだ。



「ええ。昨日お父様がここにいらっしゃって退学届けを出していったわ」


「どうして退学なんて……」


「結婚が決まったからとおっしゃっていたわよ」



 結婚だなんて……そんな話聞いていない。



「まぁ彼女は色んな生徒とトラブルがあったから……」



 教師は言葉を濁しているが、トラブルメーカーがいなくなってホッとしたという気持ちが透けて見える。

 たしかに彼女は何人もの恋路を邪魔してきた。

 友人になるまでは私も彼女が悪女だと思っていた。

 でもそれが本当の彼女なのか。

 これまで派手だった彼女の行動が、私と過ごすようになってから嘘のように落ち着いていた。

 人の恋人を奪ったなんて話も聞かない。


 それにふと浮かんだあの日の涙。

 私はまだあの涙の理由を知らない。

 なんだか嫌な予感がする。


 私は走った。

 エリーに会わないと。とりあえずエリーの家に行って……



「……知らない」



 そうだ、私は彼女の家がどこにあるのか知らない。

 好きな食べ物や、本や色こと。兄妹はいるのか。

 それにどうしてあんなことをしていたのかも……

 なにも知らない。

 私が知っているのはシェリーの大ファンであることと、人懐っこく笑う顔がすごく可愛いってことだけ。



「……何やってんだろう私」



 友達ができたと浮かれていた。

 でもその友達が離れていったら嫌だからと、もう少し親しくなってから……そんな言い訳ばかりして、彼女のことを知ろうとしなかった。



「どうしよう……」



 突然退学して結婚だなんて、普通じゃあり得ない。

 もしかしたらエリーは何かよくないことに巻き込まれているのかもしれない。

 困っていることがあるのなら力になりたい、あの日の涙の理由を知りたい……そう彼女に伝えなければ。

 でもそのためには彼女に会わなければいけない。

 ああ、どうしたら……



「シェリア?」



 自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。

 この優しい声を私は知っている。

 でも彼にこんな情けない顔を見せたくない。

 だから小さく息を吐いたあと、顔に力をいれた。


「……あらエセル様、どうされました?」


「いや、ちょうど教室に戻ろうと思ったらシェリアの姿が見えたからさ」


「そうだったんですね」



 よかった。気づかれていないみたい。

 これならなんとかやり過ごせ……



「それでどうしたのかな?そんな辛そうな顔をして」


「えっ」



 嘘……まさか気づかれるなんて。

 ちゃんといつもの私を演じたつもりだったのに。



「ねぇ、君にそんな顔をさせたのは誰?」


「な、なんのことですか?私はいつも通りですよ?」



 エセル様に情けない姿は見せたくない。その一心で必死に演じ続けるが、私は今、ちゃんと笑えているだろうか。



「どこが?こんな泣きそうな顔をしているのに」


「……それはきっと気のせいで」


「気のせいじゃないよ」


「!」


「だって私は愛する人のことを間違えるわけがないからね」



 愛する人って……ううん、違う。これも練習だ。

 間違っても私に向けて言っているわけじゃない。私を通して愛する婚約者を見ているだけ。

 でも練習ならちゃんとやらなくちゃ。



「……あ」



 でもどうしてだか目の奥が熱く、視界が滲んでくる。

 私が無力なのは彼には関係無いこと。だから余計な迷惑をかけてはいけない。

 それでも今私を見つめ、手を握ってくれるエセル様。

 そんな優しい彼にすがりたくなってしまう。



「一人で抱え込まないで。私はいつでも側にいるから」


「っ……」



 本当に?

 本当にいいの?

 演技だって分かっている。だけど今はあなたの言葉を信じてもいいですか?


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