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そんな自身の変化に戸惑いながらも、昼休みを三人で過ごすようになり一月が経った頃、思いもよらない出来事が起こる。
「た、退学ですか!?」
ここ数日、いつも一番乗りであの場所に来ていたエリーの姿がなかったのだ。
最初は体調が悪いのか、それとも何か用事があって学園を休んでいるのかと思っていた。
けれど次の日も、その次の日も、さらにその次の日もエリーは現れない。
普段はお互い学園内で関わらないようにしていた。
だけどさすがに何かあったのかと心配になり教師に尋ねたところ、返ってきたのが退学という信じられない答えだったのだ。
「ええ。昨日お父様がここにいらっしゃって退学届けを出していったわ」
「どうして退学なんて……」
「結婚が決まったからとおっしゃっていたわよ」
結婚だなんて……そんな話聞いていない。
「まぁ彼女は色んな生徒とトラブルがあったから……」
教師は言葉を濁しているが、トラブルメーカーがいなくなってホッとしたという気持ちが透けて見える。
たしかに彼女は何人もの恋路を邪魔してきた。
友人になるまでは私も彼女が悪女だと思っていた。
でもそれが本当の彼女なのか。
これまで派手だった彼女の行動が、私と過ごすようになってから嘘のように落ち着いていた。
人の恋人を奪ったなんて話も聞かない。
それにふと浮かんだあの日の涙。
私はまだあの涙の理由を知らない。
なんだか嫌な予感がする。
私は走った。
エリーに会わないと。とりあえずエリーの家に行って……
「……知らない」
そうだ、私は彼女の家がどこにあるのか知らない。
好きな食べ物や、本や色こと。兄妹はいるのか。
それにどうしてあんなことをしていたのかも……
なにも知らない。
私が知っているのはシェリーの大ファンであることと、人懐っこく笑う顔がすごく可愛いってことだけ。
「……何やってんだろう私」
友達ができたと浮かれていた。
でもその友達が離れていったら嫌だからと、もう少し親しくなってから……そんな言い訳ばかりして、彼女のことを知ろうとしなかった。
「どうしよう……」
突然退学して結婚だなんて、普通じゃあり得ない。
もしかしたらエリーは何かよくないことに巻き込まれているのかもしれない。
困っていることがあるのなら力になりたい、あの日の涙の理由を知りたい……そう彼女に伝えなければ。
でもそのためには彼女に会わなければいけない。
ああ、どうしたら……
「シェリア?」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
この優しい声を私は知っている。
でも彼にこんな情けない顔を見せたくない。
だから小さく息を吐いたあと、顔に力をいれた。
「……あらエセル様、どうされました?」
「いや、ちょうど教室に戻ろうと思ったらシェリアの姿が見えたからさ」
「そうだったんですね」
よかった。気づかれていないみたい。
これならなんとかやり過ごせ……
「それでどうしたのかな?そんな辛そうな顔をして」
「えっ」
嘘……まさか気づかれるなんて。
ちゃんといつもの私を演じたつもりだったのに。
「ねぇ、君にそんな顔をさせたのは誰?」
「な、なんのことですか?私はいつも通りですよ?」
エセル様に情けない姿は見せたくない。その一心で必死に演じ続けるが、私は今、ちゃんと笑えているだろうか。
「どこが?こんな泣きそうな顔をしているのに」
「……それはきっと気のせいで」
「気のせいじゃないよ」
「!」
「だって私は愛する人のことを間違えるわけがないからね」
愛する人って……ううん、違う。これも練習だ。
間違っても私に向けて言っているわけじゃない。私を通して愛する婚約者を見ているだけ。
でも練習ならちゃんとやらなくちゃ。
「……あ」
でもどうしてだか目の奥が熱く、視界が滲んでくる。
私が無力なのは彼には関係無いこと。だから余計な迷惑をかけてはいけない。
それでも今私を見つめ、手を握ってくれるエセル様。
そんな優しい彼にすがりたくなってしまう。
「一人で抱え込まないで。私はいつでも側にいるから」
「っ……」
本当に?
本当にいいの?
演技だって分かっている。だけど今はあなたの言葉を信じてもいいですか?




