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「エリー・ラストル。いい加減にしてくれないか?」
「それはこっちの台詞です。王太子殿下こそこんなところにいないで、綺麗なお部屋にお戻りになっては?」
あれから私はエリーと友達になった。
もちろんシェリーであることも秘密にしてくれると約束してくれている。
学園で初めてできた友達。すごく嬉しいが、さすがに学園内で一緒にいるわけにはいかない。
私はエリーに婚約者を奪われている。
私としては感謝しているのだが、それを周囲に言うわけにはいかない。
ルース様の前で悲しむ演技をしちゃったのを一応クラスメイトが見ているからね。
きっと私のことなんて気にはしていないだろうけど、そのせいでエリーが悪く言われるのは嫌だ。
「この女狐が」
「このエセ王子が」
「……二人とも落ち着いてください」
だからこうして昼休みに、いつもの場所で会うようになったんだけど、いかんせん二人の相性が悪い。
昼休みはこれまでエセル様と過ごしていた。
学園で長い時間一緒に過ごせるのは昼休みくらいだから、少しでも本物の恋人に見えるように演技力を磨かないといけないから。
エセル様は忙しい中、私の練習に付き合ってくれている。本当に感謝しかない。
ただ最近は頭を撫でたり、頬に手を添え見つめてみたり、膝枕をしたりと、ちょっと大胆な練習が多くて心臓が持ちそうにない。
それに嬉しそうにはにかむエセル様の顔が、頭から全然離れなくて……
よく分からないけど、このままじゃよくない。だから何か状況を変えたいと思った時、エリーから昼休みに会いたいと言われたのだ。
エリーは私とエセル様の契約のことは知らない。
でも私がシェリーだということは知っているから、エセル様に紹介したんだけど……
『シェリア。友人はちゃんと選んだ方がいい』
『シェリア。私の方があなたを幸せにできるわ』
『え、えっと……』
『『ふん!』』
と初めからずっとこんな感じなのである。
それなら別々に過ごした方がいいとは思うのだけど、私も放課後は劇団の練習や家の管理で時間がない。
そんな私のわがままに二人は付き合ってくれているのだ。本当にありがたい。
でもエセル様がこうして付き合ってくれるのは以外だった。
さすがに面倒だからと練習の頻度が減ると思ったのだけど、公務のとき以外はいつも付き合ってくれている。
なんだかくすぐったい気持ちになる。
エセル様は私を恋人として扱わなくちゃいけないから気を遣ってくれているだけだとは思うけど、時々本当に大切にされているように思ってしまったりする。
エセル様には本物の婚約者がいるというのに。
エセル様は婚約者のため、私は夢のため。
そういう契約……。決して惹かれてはいけないのだ。




