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それから数日。
私は困っていた。
「まただわ……」
最近ずっと見られている。
初めはエセル様との関係に不満がある人なのかと思って身構えたけど、どうにも敵意は感じられない。
それなら一体誰がと思い、陰に隠れてそっと見てみると、まさかのエリーだった。
もしかしてこの間のことを口止めにしに来たのだろうか。
でもそれなら、何日も話しかけてこないのはなぜ?
彼女の意図は分からないが、悪感情も嫌悪感もなさそうだしと放置していたんだけど……
「さすがにこのままってわけにはいかないか」
こうもずっと見られていると落ち着かないし、明日からエセル様も学園に来る。その前になんとかしないと。
昼休み。
人目につかず話をするにはここしかないとやってきたいつもの場所。
そこで立ち止まり勢いよく振り向くと、木の陰からこっそり覗いていた彼女と目が合った。
「あっ……」
驚いたようであたふたと慌てているが、その姿がなんとも愛らしい。
もしかしてバレていないとでも思っていたのかな。
「ねぇ、私に何か用でもあるの?」
「っ!そ、そんなわけないじゃない!」
今回で彼女と会うのは二度目だが、この姿からは学園で有名な悪女だとは到底思えない。
「そう?それならごめんなさい。私の勘違いだったみたいね」
「え」
それに今日会って確信した。
彼女は演技をしている。それも己の望んでいない姿に。
「それじゃあ私はこれで」
そう言って彼女に背を向け歩きだす。
こうすればきっと……
「ちょっと待って!」
ほらね。向こうから声をかけてきてくれたでしょ。どう?私の演技は。
「……何かしら?」
始めから去る気なんてなかった。ただあのまま問い詰めても口を開きそうになかったから、ひと芝居うってみたのだ。
間違いなく彼女は私に用がある。でもそれがなんだかは分からない。
この間の口止め?文句?
とりあえずなんでもいいから、つきまとうのはやめてもらわないと。
「……」
「何か用があるから呼び止めたのではなくて?」
「……」
「はぁ、だんまりなのね」
「……」
こ、困った。
何か言いたそうにはしているんだけど、どうして何も言わないの?
こっちは話を聞く準備はできているのに。
「あなた、最近私の周りをうろついているでしょう?」
早く。
「何がしたいのかは分からないけど、やめてくれるかしら?これ以上続けるのであれば、先生に報告させてもらうわよ」
早く何か言ってよ~!
「……」
嘘でしょ?ここまで言っても何も言わないなんて……。
もしかして私の勘違いだった?
いやでも、あの目は間違いなく何か訴えたそうにして……
「……あの」
来た!
「聞きたいことがあって……」
え、聞きたいこと?言いたいことじゃなくて?
「何かしら?」
なんだか思っていた反応と違うけど、それを表情に出してはダメだ。
何事もないよう平然を装おって――
「もしかしてあなたって……シェリーなの?」




