18
ある日の昼休み。
ここ最近はエセル様とお昼ご飯を食べていたけれど、今日彼は公務のため学園にいない。
さて、今日はどこでご飯を食べようか。
エセル様とは食堂や庭園、学園内にある王族のみが使える個室など、色んな場所で食べていた。
落ち着いて話をするのなら個室が一番いいのだけど、毎日王族の個室に入るのはさすがにちょっと気が引ける。
それに個室では仲睦まじい姿を見せることができない。
なのでこの契約について話がある時は個室。
そうじゃない時は食堂や庭園で、恋人らしく食事をしていた。
外で食べる日にはお弁当を作っていったりもしたよ。
ほら、舞台では貴族を演じる時もあるけど平民を演じる時だってあるからね。
だから色んな状況で練習させてもらった。
伯爵家の令嬢ではあるけど料理は得意で、エセル様が美味しいと言ってくれた時――もちろん演技なのは分かってるけど――は嬉しかったな。
あ、そういえば呼び方が変わった。
これまでは演技中だけ名前で呼ばせてもらってたんだけど、エセル様から『普段から呼んでた方が自然に演技できるんじゃない?』と言われて、演技していない時も名前で呼ぶことになったのだ。
ただの伯爵令嬢が王太子殿下を名前で呼ぶなんて不敬以外のなんでもないから遠慮はしたんだけど、
『本人がいいって言ってるんだから不敬にはならないよ』
なんて言われれば、従わない方が不敬になるからね。
まだ慣れないけどなんとか慣れるように頑張っている最中です。
「あ」
そんなことを考えながらたどり着いたのは、あの小さな森。
ここに来るのは久しぶりだ。
せっかくだしここで食べよう。それに時間があれば練習していってもいいだろう。
そう決め、歩みを進めていく。
少し歩くと開けた場所が見えてくるのだけど……
「ん?」
練習場所だったそこに、誰かがいる。
誰だろう。
「あれって……エリー?」
そこにいたのはエリー・ラストル。
これまでたくさんのカップルと縁談を壊してきた、学園の悪女。
そんな人物がこんなところで一体なにをしているのだろうか。
「え……泣いてる?」
驚いた。いつもは文句や悪口を言われても堂々としている彼女が、肩を震わせ泣いているなんて。
「ぐすっ……私はいつまでこんなことしなくちゃいけないの。お母さん……」




