13
「やぁ」
翌日の放課後。
昨日と同じ場所に向かうと、そこにはすでに王太子殿下の姿があった。
「遅くなってしまい大変申し訳ございません」
「私もさっき来たばかりだから気にしないで」
「ですが……」
そう言われても王太子殿下はこの国で二番目に高貴なお方。
それなのに伯爵家の娘ごときが待たせしてしまうなんて……なんたる失態。
目立つのはよくないかなと思って歩いてきたけど、ここはやっぱり走ってくるべきだっ――
「走るのはだめだよ?」
「え?」
どうして口にしていないのに、私の考えていることが分かったの?もしかして表情に出てた?
「だって」
「?」
「誰かとぶつかったりしたら大変だから、ね?」
「っ!そ、そうですね!」
王太子殿下はただ走るのは危ないと教えてくれただけ。
それなのになぜかあの時のことを思い出してドキリとした。
結局あの日、私とぶつかったのは誰だったんだろう。
相手もぶつかったのが私じゃなければ、もしかしたら運命の出会いにでもなっていたのかもしれないのに……
そう思うとなんだか相手に申し訳なくなってきた。
「……ふふ」
「お、王太子殿下?」
どうして笑っているのかは分からないけど、王太子殿下の笑顔の威力は凄まじいな……
殿下に恋しているわけでもないのに、あまりの美しさにドキッとする。
昨日といいさっきといい今といい、王太子殿下は何度私をドキリとさせるのだろう。
「いや、なんでもないよ」
「そ、そうですか?」
そんな人と恋人役……大丈夫かな。
「さてと。それじゃあ行こうか」
「へ?行くってどこに……」
たしか今日はここで詳しい打ち合わせをする予定のはず。それなのに一体どこに行くというのか。
「ん?どこって街にだよ」
「えっ!?ど、どうして」
「どうしてって、それはもちろんデートをするためさ」
「デ、デート!?」
デートって恋人同士でお出掛けするアレのことだよね?合ってるよね?
「そう、デート」
「ですが今日は」
「打ち合わせだろう?だからデートしに行くんじゃないか」
なにがどうなったら打ち合わせがデートに変わるというのか。
「えっと、意味がよく分からないのですが……」
やっぱりからかわれていたの?
王太子殿下が何を考えているのかまったく分からない。
「あれ?君は役者なんだよね?」
「は、はい。そうです」
「それならさ、何事も実践しないとダメなんじゃないかな」
「……!」
王太子殿下の言葉にハッとした。
何事もまずは実践……あの日あの人もそう言っていたじゃないか。
まさかここでこの言葉を聞くことになるとは。
「さぁ行こう」
王太子殿下の手が差し出される。
この手を取った瞬間から、私は殿下の恋人だ。
……ええい!女は度胸、役者は根性!
そんなことを心の中で叫び、私は目の前の手を取った。
「よろしくお願いします!」
「!……そうこなくっちゃ」
それから私たちは馬車乗り場へと向かった。
学園から街までは歩いていけない距離ではないが、少し時間がかかる。
私は歩いても構わなかったが、さすがに王太子殿下を歩かせるわけにはいかない。
だからどうしようかと思っていたら、どうやら王太子殿下の中では最初から街に行くつもりだったようで、しっかり馬車が用意されていたのである。




