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伯爵令嬢シェリア・ハジェットの夢~はじうま令嬢は、舞台の上で輝きたい~  作者: Na20


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(なんでよ……)



 どうして学園一の大物が、こんな学園の端っこにいるのよ。

 王子様にはもっと華やかでふさわしい場所がたくさんあるでしょうに。

 それに私は隠し事をしている身。できるだけ王族には関わりたくないのに、ついていないにも程がある。



「大丈夫?手を貸そうか?」


「あっ……い、いえ大丈夫です!」



 いけない。

 受け入れがたい現実に直面して、反応するのが遅れてしまった。



「そう?ふふ……」



 あー…これ絶対に変なやつだと思われたよ。

 そりゃ木に抱きついている人なんて、そうそうお目にかかれませんもんね!



「……見苦しい姿をお見せしてしまい、大変申し訳ございませんでした」



 急いで木から離れ、謝罪をする。

 別に悪いことをしたわけじゃないんだけど、相手は王太子。謝罪以外選択肢なんて存在しない。

 さぁ、笑うなりバカにするなり好きにしてください。

 その代わり、早くここから立ち去ってくれるとありがたいんだけど……



「君は役者なの?」


「え」



 ねぇどうしてそう勘が鋭いんですか!?

 ……いやもしかして、木に抱きつく前から見られていたとか?



「あの、もしかしてさっきのを見ていたりなんて……」


「あー……うん、ごめんね?覗き見るつもりはなかったんだけど」


「~~っ」



 終わった。私の平穏な学園生活が……ってまぁ言うほうど平穏ではなかったけれども。

 でもまさか王太子殿下にさっきの全部見られていたなんて。

 ちゃんと人がいないか確認したはずなのに……

 というか学園卒業まであと一年以上あるのに、これからどうしろっていうのよ。

 口止めする?……ううん、相手は王族。そんなことしたら学園生活どころか人生が終わっちゃう。一体どうすれば……



「よかったら私が相手役になろうか?」


「……へ?」



 なんだか今、信じられない言葉が聞こえた気がしたんだけど……え、耳がおかしくなっちゃった?



「木と練習するより私と練習した方がいいんじゃないかな?」



 聞き間違いじゃなかった!

 だけど王太子殿下ともあろう人が何を言ってるの!?

 そりゃあ木を相手にするより、人を相手に練習した方がいいに決まっている。

 正直言ってすごく魅力的な話だよ?

 ただでさえ劇団での練習時間は限られているし、家では資金管理と勉強でとても練習している暇はない。

 だからこうして休み時間に練習しているわけなんだけど、やっぱり一人じゃ限界を感じていたところで。

 練習相手がいたらいいなとは常日頃思っていた。

 でもさ、そうは思ってはいてもその相手は間違っても王太子殿下ではないことくらい、混乱している今の私にだって分かる。



「えっと、何をおっしゃっているのか……」


「そう?いい案だと思うんだけど」



 というか本気じゃないのに何を言って……って待って。もしやこれは何かの策略とか?

 お前の弱味を握ったんだから言うことを聞けよ、的な?



「……何か目的があるのでしょうか?その提案は私にとってはとても魅力的ですが、王太子殿下にはこれといって得られるものはありません。むしろ損をするかと」


「それは……」



 当然だ。練習相手になれば、貴重な時間を私に割くことになるのだ。間違いなく損でしかだろう。

 それならその時間で、観劇をした方が余程有意義だと思う。

 ただ何か目的があるのなら話は別だ。

 考えられる可能性……それはお金しかないだろう。我が伯爵家はお金だけはある。

 もしかしたら王太子殿下は私がどこの家の人間か知っていて、弱味をちらつかせて金を巻き上げようと考えていたり……って落ち着け。

 王太子殿下がお金に困っていることなんてある?

 ……うーん、それならあと考えられるのは単純に私を馬鹿にしているだけ?

 貴族で役者になりたいなんて人は私以外にいないだろう。

 役者のほとんどが平民階級の出身。

 中には団長のように素晴らしい功績を上げて爵位を賜る人もいるけど、そんなのはごく僅かだ。

 まぁ私が馬鹿にされるのは構わない。どうせ王太子殿下に逆らえないしね。

 でも役者という存在自体を馬鹿にされるのは我慢ならないけど。



 おそらく練習相手になると言ったのは、私の気を引くため。

 果たしてこれはただの親切心か、打算か、侮蔑か。

 どれが王太子殿下の本心なのかは、私には分からない。

 だけどきっと何かとてつもなく面倒な事に巻き込もうとしている……そんな予感がしてならない。



「あの、私はこれで……」



 この場から一刻も早く立ち去ろう。

 しかし現実はそううまくはいかないもの……



「実はね、君にお願いがあるんだ」


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