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第61話 フロアボス

 かつてこんなにも連続して戦ったことがあっただろうか。


 この八十階層は迷路になっていた。

 案内妖精の話によると、ゴールにはフロアボスがいる大部屋になっていて、八十一階層へ続く階段があるそうだ。


 しかしボス部屋になかなかたどり着けず、頻繁に出会うモンスターとの戦闘でレベル二つほど上がってしまった。

 そろそろ視聴者も飽きてきたんじゃないかって思ったその時、遂に大きな扉が現れた。


「でっかい扉だな」


「いかにもフロアボスって感じね」


「ふむ。禍々しい気配を感じるの」


「ねぇ。ドアを開けたらさ。ありったけの火魔法とかぶち込んで、閉めちゃうおうよ」


「それ、配信映えしないだろ」


「コメントバフもらえなくなっちゃうわよ」


「ダメなやつだった!?」


「とりあえず正攻法で行こうぜ」


「うん」


 扉を開けるとそこは謁見の間だった。

 擦り切れた赤い絨毯が奥へ伸び、先には玉座があった。

 そこに座っていた巨漢が、ゆっくりと立ち上がった。

 鑑定スキルを発動させると『オーク・ロード・レベル82』

 普通のオークよりも二回り大きく、巨大な牙を生やしていた。

 巨体を重装鎧で身を包み、両手にそれぞれ大きな曲刀――シミターを持っていた。


「ヴォォオオオオオ!」


 咆哮が響いた瞬間、部屋の両脇にずらりと並んだ扉が一斉に開き、左右からオーク達が雪崩込んできた。

 その数、左右八体ずつで合計十六体。


 どいつもレベル八十だ。取り巻きならもっとレベル低くてもいいだろう。

 殆どがオーク・ウォーリアーだが、奥に二匹はオーク・シャーマンだ。魔法を使うやつは要注意だ。


「今日は《《宴会》》だ!」


「了!」


「援護と行くかの。我が全滅させる前に呼ぶのだな」


 狐鈴がマジカル・ショットを連打している間に、俺達は呪文を唱えた。


「オン・グレンザラ・バッソ・カザン・レンレン・ハク! 猛き鬼よ、煉獄の底より吼えよ。来たれ! 紅蓮童子!」


「オン・クラウシャナ・ダルミラ・ヴァルダナ・プラハラ・ソワカ! 」雷光の鬼よ、黒雲を裂き、轟き叫べ! 来たれ! 轟雷童子!」


「がーっはっはは!」


「ぬあーはっはっ!」


「出番ぞよ!」


「天使に負けてたまるかぁ!」


 童子達が巨刀を引き抜き、オーク達に襲いかかった。


「ぬおおおっ!」


「うるぁぁあ!」


 ドッスンドッスンと部屋が揺れ、鬼の雄たけびがダンジョンに反響すした。

 

 オーク・ウォーリアー達が、気おされて一歩、二歩と下がる。


「オン・ナーガ・ラージャ・スヴァー! 北方の守護よ、地を鎮め、禍を退けん! 神獣招来! 来たれ! 玄武! 急急如律令!」


 アリサさんも玄武を召喚し、続いて俺も朱雀を、琴音は白虎を召喚した。


 そして式神達とオーク達の乱戦となった。こうなったらもう近寄ることすら危うい。

 オーク・シャーマンが俺達目掛けて炎の魔法を放ってきた。


「玄武!」


 アリサさんが玄武に命じると、空中にシールドが展開され、炎の玉を迎撃してくれた。

 紅蓮童子の巨刀がオークを切り裂き、轟雷童子の蹴りがオークを吹っ飛ばす。

 一応やってみるか。


「コメント・チャージ!」


 宣言と同時にコメントで応援が流れた! アリサさんのおかげか、いつもよりコメントが多い!


「オン・キリキリ・ウン・バッハッ! オン・キリキリ・ウン・バッハッ!」


 式神を強化する術を唱えたが、陰陽術には効果がないみたいだ……。システム外ってことか!? それでも通常通り紅蓮童子と轟雷童子の妖力が上がる。


「がーはっはっ! みなぎる! 紅蓮の炎よ!」


 紅蓮童子が持った巨刀が炎に包まれ、力任せにオークに叩きつける。オークは剣で受け止めようとしたが、剣ごと真っ二つにされた。


「があああっ!」


 轟雷童子が巨刀を振りかぶる。バチバチと雷光が弾け、辺りに触手のように稲妻が伸びた。


「おうらぁあっ!」


 轟雷童子が剣を薙ぎ払うと、稲妻の刃が飛び、オークをまとめて黒焦げにした。

 オーク・シャーマンが紅蓮童子に炎の玉を投げつけたが、紅蓮童子は拳一つで払いのけ、巨刀を投げつけた。


「だーはっ!」


 巨刀は炎をまといながら宙を駆け、オーク・シャーマンの胴体を貫いた。


「戻れぇい!」


 すると巨刀が霞のように消え、紅蓮童子の手へ戻る。。

 瞬く間にオーク達の数が減り、中央に空間ができた。いや作ってくれた。

 奥に見えるのは、動揺したオーク・ロード。

 俺達はオーク・ロードに狙いをつけた。既にコメント・チャージは済んでいる!


「水の精霊よ。凍える息吹よ。我に集いて刃となれ! アイス・ランス!」


「光の精霊よ。我、光の理なる環状印を捧げん。汝、光陣より来たりて槍と化せ。全てを貫き疾走せよ。シャイニング・スピア!」


「あまたに漂う風の精霊よ。天空より御下りて敵を撃て。来たれ、蒼き稲妻! ブルー・ライトニング・レーザー」


「マジカル・バスター!」


 氷、光、稲妻、熱。四つの魔法がオーク・ロードに突き刺さり、何もできないまま崩れ落ちた。

 最後はコメントチャージもあって、過剰過ぎたな。


 玉座の裏に宝箱があった。中にはオーク・ロードが着ていた鎧やオーク・シャーマンが持っていた杖などが入っていた。


「鎧は着れる大きさじゃないな。キャサリンさんに上げようか?」


「うーん、キャサリンさんって剣闘士だよね? こんな重そうな鎧着るかな?」


「確かに……」


「なにこのダサい杖。でも魔力が上がるわね……」


「こっちの剣はちょっと重いなぁ」


「筋力足りなくて持てないよ」


「ふむ。この首飾りはなかなかよな」


 宝箱の中身は、当たりだと思うけど、俺達のパーティには不要なものが多そうだ。他のパーティとトレードするのもありかもな。どこかのパーティが刀をゲットしたら是非交換したい。


 いつの間にか奥の壁に二つの扉があった。


「片方は地上に戻る扉で、もう片方は地下八十一階へ行く扉よ」


 案内妖精が現れて教えてくれた。


「ここってしばらく安全なのか」


「ええ。明日の二十時になったらまたオークロードが出現するから、それまでは安全よ」


「明日は八十一階から挑めるの?」


「そうよ。八十一階への扉の向こうに、小型のアストラルゲートがあるから、登録しましょう。因みに二十四時になったら強制的に外に戻されるからね」


「じゃあ四時間の間に一階層クリアしないといけないのか」


「そうなるわね」


「現時刻は二十二時五十分か。とりあえず宴会だな!」


 童子二人への礼の品を出さないと。


「それなのだが、幽世で飲ませてもらおうか」


「いいのか?」


「お主らも忙しかろう」


「うむ。毎回宴会があると、そもそも呼ばれなくなるからな!」


「天使に竜人に獣人。我らも負けておれん!」


 そう言って童子達は酒と肴を持って帰っていった。


 最近呼んでなかったから、気にしてたのかな……



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