第60話 ダンジョン攻略
モンスターが単発で現れたのは、ダンジョンの入口付近だけだった。
こんなものか? と気が緩みかけたその瞬間、通路の奥で何か光った。
「みんな伏せろ!」
叫ぶと同時に、俺は倒れるように伏せる。琴音も俺に言われるまでもなく伏せていた。
「え?」
アリサさんが咄嗟に反応できなかったけど、狐鈴が頭をガシッと掴んで無理矢理押し倒した。それとオレンジ色の弾が頭上を通り抜け、後方で大爆発が起きた。
「きゃあっ!」
後ろから熱波が襲い掛かり、轟音で耳がいかれそうだ。
俺と琴音は瞬時に跳ね起きると、通路の奥へ向かって走り出した。
通路の奥には緑色の鬼――オークが四体いた。そのうち三体が鎧姿で、剣と盾を構え、残り一体はローブを着て杖を持っていた。
凝視してアナライズを発動させると、『オーク・ウォーリアー・レベル80』と『オーク・シャーマン・レベル80』。
魔法を放ったであろう、シャーマンから倒したいが、前衛のウォーリアーが邪魔だな。向こうもちゃんとパーティを組んでいるとは厄介だ。
「コメントチャージ」
背後から狐鈴の声。
俺と琴音は左右に避けて射線を空ける。
「マジカル・ショット!」
ハート型の光が奥に飛んで行く。
しかしオークが盾を斜めに構えて受け流した。
ハートの光は軌道を逸らされ、天井に当たって爆発した。
「むっ!」
こいつら今までの奴とは違う!
「コメントチャージ!」
スキルを発動すると、コメント欄に応援コメントが流れる! さっきよりコメントが多い! アリサさんのおかげだな!
「パワー・チャージ!」
そして俺はバフスキルを発動させつつ、剣の間合いまで距離を詰める。
「はあっ!」
最前列のオーク・ウォーリアーへ剣を叩き込んだ。
しかし盾で受け止められる。
俺はオーク・ウォーリアーの横に回り込むと、相手も体ごと回転し、盾を正面に向けて追随する。
――馬鹿だな。相手は俺だけじゃないんだよ。
「コメントチャージ」
狐鈴が再びスキルを使った。
「マジカル・ショット!」
迫りくるハートの光にオーク・ウォーリアーは慌てて盾を向けるが遅すぎる。
今度こそオーク・ウォーリアーの胴体にマジカル・ショットが直撃し、鎧が砕け散り、破片を撒き散らしながら、吹っ飛んだ。
俺はオーク・ウォーリアーに止めを刺さず、その奥にいたオーク・シャーマンに向かって間合いを詰める。
「グゴバァ!」
オーク・シャーマンが炎の矢を放ってきたが、紙一重で避ける。そして大きく踏み込みながら剣を突き出した。
「ピアーズ・スイティンガー!」
突進しながら放った突きより、剣が根元まで突き刺さった。
俺はオーク・シャーマンに蹴りを入れ、反動で剣を抜くと、剣を横に構える。
「タイタン・ブレイカー!」
横薙ぎに振るった剣が発光し熱を帯び、オーク・シャーマンの胴体を上下に真っ二つに切り裂いた。
周囲を見渡すと、吹っ飛んだオーク・ウォーリアーは狐鈴の追撃によって倒され、残り二体のオーク・ウォーリアーも琴音とアリサさんによって倒されていた。
「さすがレベル80のダンジョンか……」
「油断できなくなってきたね」
「いや、あんたら刀と陰陽師使ってない時点でまだ余裕でしょ!」
「剣の熟練度上げたいし」
「私も魔法の熟練度上げたいし」
「うむ。高レベルなモンスター程熟練度たまるからの。一撃で倒してはもったいない」
「……余裕のレベルが私と違ったようね」
「それだけじゃないぞ。コメントの力もあったよ」
「うんうん。なんかいつもよりパーアップした感じ!}
「次も頼むぞ。ホレホレ」
また狐鈴がスカートを持ち上げて、ギリギリのラインを見せようとしていた。
「狐鈴は自重しろ!」
「はっ! しまった!」
「ねぇ。狐鈴さん」
「ん?」
「今日戻ってから、ライブスフィアの管理画面を見てみて」
「なんかあるのかえ?」
「警告出てるかもよ。その状態で同じことを続けたら、収益化がストップするからね」
「な、なんじゃと……!?」
「当然コメント・チャージもできなわいよ」
「な、ならどうすればいいのじゃ! そもそもアバターのパンツ如きで警告がくるのかえ!?」
「露骨な仕草がまずいのよ。センシティブでしょ。そうなるとチェックが厳しくなるし、視聴者も萎えるわ」
「なるほど……」
「さりげなく! 自然に見せるのよ! 私はそういうのしないから……そうね……まどかが得意だから、アーカイブ見てみるといいわよ」
「うむ。その助言。ありがたくいただこう」
何をやっているんだか……
「琴音はやるなよ!」
「やらないよ!」




