第58話 神力集めのダンジョン
常夏の島にダンジョンが出現した。
ダンジョンと言えば、モンスターが蠢く暗い洞窟を思い浮かべるよな。
しかし案内妖精からダンジョン実装の内容を聞いた限り、普通のダンジョンとは違うらしい。
この世界はゲームではなく、ちゃんとした異世界だ。それなのにこのダンジョンはゲーム的な作りになっているようだ。
神力を効率よく集めるために、視聴者にわかりやすくしたのかな?
享楽之神も神力集めに、あれこれと試行錯誤しているのだろうか?
そもそもこのダンジョンの入口がおかしい。浜辺に巨大な扉だけ現れたのだ。
壁もないのにポツンと扉だけ立っている。
その扉の前に、多くのプレイヤーが集まっていた。
中には扉を開けようと、数人で押していたけど、ビクともしなかった。
「まだ入れないよな」
現在の時刻は十九時四十分。
「扉が開くのって二十時からだっけ?」
琴音がメニューのお知らせを再確認していた。
「まさにゴールデンタイムじゃない!」
そしていつになくアリサさんが目を輝かせていた。
「夜にライブ配信できるなんて最高よ!」
「確かにな」
「夜は酒をたしなむ時間でもあるのじゃが……」
狐鈴は少し不満そうだ。
「狐鈴は飲酒配信多いよな」
「少し酔った我が色っぽいと評判じゃぞ」
「ノーコメントで」
「カカカッ! お主に大人の色気はまだ早いようじゃの!」
見た目は同い年なのに、よく言うよ!
二十時になると、巨大な扉が音を立ててゆっくりと開いた。先頭にいたプレイヤーが少し様子を見てから入ると、みんな後に続いて入っていく。
「明日はちょっと時間ずらした方がいいなぁ」
「何言ってるのよ! 時間限定なのよ! 二十時から二十四時までしかないんだから!」
「そう興奮するでない。配信、始まっておのじゃろう?」
「はっ! そうだった! はいはい。落ち着くわよ!」
コメントで『落ち着け』とか言われたのかな?
ダンジョンの中に入ると、そこは広い石畳の空間だった。壁も石で舗装されていて綺麗だ。天井には等間隔に魔法の照明があって、遠くまで見渡せるくらい明るい。
「いいわね! 夜は暗くて危ないから、冒険しないけど、これなら夜も配信できるわね! しかもゴールデンよ! ゴールデンタイム!」
「夜に配信できないのが欠点だったからな」
配信を見る人はやっぱり夜が多い。今まではリアル志向すぎたんだよ。
「ねぇ見て! 奥に扉がいっぱいあるよ!」
琴音に促されて奥を見ると、扉が四つあって、その上に注意書きがあった。
一番右から『レベル20~39』、『レベル40~59』、『レベル60~79』、と続き、一番左は『レベル80~99』と書かれていた。
「わかりやすいな……」
案内妖精によると、『レベル80~99』の扉から入ると、地下八十階からスタートできるみたいだ。
「享楽之神も色々考えてるんだねぇ」
「さてと! 一番右がレベル二十から始まるやつで、一番左は八十オーバーかぁ」
アリサさんが扉を見て悩んでいた。
「我らは一番左じゃな」
「え? どうして一番左なの!? まずは安全マージン取ってレベル六十からのところでしょう!?」
「格下と戦っても面白くなかろう」
「でもダンジョンよ! 何が起こるかわからないじゃない!?」
「大丈夫じゃないかな」
琴音の目が上下左右に動いている。きっとメニューにあるお知らせから、ダンジョンの仕様を確認しているんだろう。
「このダンジョン。シールドがゼロになったら強制退場させられるんだよね?」
このダンジョンは、特殊仕様でシールドをオフにできない。そしてシールド残量がゼロになった瞬間、外の浜辺に強制転移させられ、ダンジョンで得たアイテムは全て没収されてしまう。死なないけど、成果がゼロになってしまうのだ。
取得したアイテムを持ち帰りたいのなら、シールドをゼロにしないで、帰還しないといけないんだ。
「それにこのダンジョン、アリサさんにすごいアドバンテージあると思うぞ」
「アレね……やってみないとわからないけど、ちょっと楽しみね」
「あっ! アリサじゃん!」
入口で喋っていたら、まどかさん達のパーティーが入ってきた。
「皆さんこんばんは」
「まどか! 凛!」
「このダンジョンさ! 私達に超有利ね!」
まどかさんが少し興奮気味だ。
「ガンガンレベル上げて、追い付いてみせるわ」
凛さんもやる気十分で、小さく拳を上げていた。
「特殊ルールに感謝ねー。あいつらの悔しがる姿が目に浮かぶわ!」
「結果オーライでしょう。キャサリンさんとレン君もすごい人気あるし。このパーティに入れてよかった。追放したあいつらに感謝しかないわ」
「あらぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
キャサリンさんが頬に手を当てて、しなをつくっていた。
「悔しいけど、まどかちゃんと凛ちゃんには負けるかな!」
レンさんがなぜか薔薇を取り出して、自分の案内妖精に向かってポーズを取っている。
「モンスターのレベル別に入口が分かれてるのね」
「ちょっと上を目指しちゃおうか? やられたら外に転移するんでしょう?」
「上を目指すしかないわね」
「貴方達大胆ねぇ。まぁ人気取るにはそれがいいと思うわ」
「僕らならやれるさ!」
そう言ってまどかさん達は、レベル四十以上の扉を開けて進んでいった。
「だってさ」
「や、やったろうじゃない!」
俺達はレベル八十オーバーの扉を開いた。




