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第49話 琴音視点 がしゃどくろ

「琴姫! 無事か!」


「ええ無事よ。炎華さんのおかげで」


 やっと秀之介様と合流できた。


「炎華。良くやった」


「当然のことをしたまでだ」


 そういう炎華さんの顔が、妙にうれしそうだった。

 ……竜の尻尾をブンブン振ってるんだけど……この人やっぱり……


 悲鳴のような声が聞こえたと思ったら、空が歪み、裂け目が走り、その向こうから、巨大な骸骨が這い出てきた。


「……がしゃどくろだ」


 秀之介様の声から、緊張を感じた。

 がしゃどくろ。それは戦死した者や、野垂れ死にした者など、埋葬されなかった死者の怨念が集まってできた、巨大な骸骨だ。


「次から次へと、今日はどうなってるんだ!?」


 がしゃどくろがこちらを向き、歯をガタガタと揺らした。


「くぅ……」


 それだけで圧倒的な妖気が襲ってくる。


「琴姫、祝詞は使えるか?」


「いいえ。祝詞まで手が回らなくて……」


「俺もだ。式神に頼り過ぎたな。白夜! 炎華! 一気に倒すぞ」


「はい」


「承知」


 白夜さんが真空刃の竜巻を起こし、炎華さんが圧倒的な炎の塊をぶつけた。

 がしゃどくろは炎の竜巻に包まれて、身もだえる。


「オオオォォォオオ!」


 しかし、がしゃどくろが怨念の雄叫びを上げると、炎の竜巻は一瞬で吹き飛んでしまった。

 

 がしゃどくろが巨大な腕が振りかぶり、上から腕を叩きつけてきた。


「くっ」


 私は大きく飛んで避ける。地面がひび割れ、土埃が舞う。


「オン・ソラソバ・レイマク・サンバラ・カンマン! 火行の理よ、陽炎を纏いし紅蓮の業火となれ! 朱焔爆炎しゅえんばくえん! 急急如律令!」


 私の手から紅蓮の炎が放たれ、がしゃどくろの腕を焦がす。

 でも秀之介様の式神が強すぎて、私の攻撃なんて搾りかすみたいだ。どうすればいい? 攻撃は式神に任せて、私は自分と秀之介様を守るべき。


「オン・ヴァラナ・サンガ・カルマ・ラジュラ! 四方の霊脈、結びて円環となる! 護界ごかい白環封陣びゃっかんふうじん! 急急如律令!」


 私と秀之介様の足元に、白い光で書かれた梵字が現れ、聖なる光が私達を包み込んだ。

 

 それを見た白夜さんと炎華さんが、刀を召喚して、がしゃどくろに向かって飛んでいった。

 

 私は防御に専念し、秀之介様は式神を強化する術を次々と唱えていった。


「オン・ナルカ・スヴィア!」


 白夜さんが放った神聖な光によって、がしゃどくろがのたうち回った。


「オン・アグニ・ラジュラ!」


 そこへ炎華さんが炎をまとった槌を召喚し、がしゃどくろに落として押しつぶした。


「オン、ヴァジュラ! ラジュナ!」


 更に浄化の炎ががしゃどくろを燃やしていく。


「ォォォオオ!」


 怨念の叫び声と共に、しゃどくろから鬼火が幾つも飛び出し、白夜さんと炎華さんに襲いかかった。


 白夜さんと炎華さんは左右に飛んで避ける。

 しかし鬼火達は白夜さん達を執拗に追いかけた。


「オン・アグラ・ミトラ・スディヤ・ラジュラ! 穢れよ散れ、天に召されよ! 聖焔祓せいえんばらい浄滅じょうめつ! 急急如律令!」


 私と秀之介様は鬼火の殲滅するために、浄化系の術を何度も放ち、鬼火を次々と撃ち落としていく。

 こんなことなら、祝詞を勉強しておくんだった。

 高速回避する白夜さんと炎華さんが、上手く誘導してくれたおかげもあって、やがて鬼火の数が減り、白夜さんが攻撃に転じた。


「はっ!」


 白夜さんががしゃどくろに迫り、その巨大な腕を一本切り落とした。


「やあっ!」


 そして炎華さんがすかさず落ちた腕を、炎の槌を召喚して、粉々に破壊した。


「オォォォォオオオ!」


 怒り狂ったがしゃどくろが、残った腕を振り回すが、白夜さんが腕を掻い潜り、今度は足を切り落とした。

 がしゃどくろが体制を崩して、片手をついたところに、炎華さんが刀で腕を切り飛ばした。

 そしてうつ伏せになったがしゃどくろに、白夜さんと炎華さんが術を放つ。


「オン・ナルカ・スヴィア!」


「オン・アグニ・ラジュラ!」


 再び聖なる光と浄化の炎によって、がしゃどくろが削れていく。

 とうとうがしゃどくろは、バラバラに砕け、人魂がブワッと溢れ出し、四方八方に飛んでいった。


「倒したの?」


「無数の魂が散っていった。がしゃどくろは哀れな魂の寄せ集めだからな。もう大丈夫だろう」


「そう」


 辺りにもう妖怪の気配はなかった。


「白夜、炎華。ありがとう」


「はい」


「うむ」


「あの……秀之介様……」


「わかっているよ。実は式神達に高成様と紫苑様の居場所を探させていた」


「ええっ! ありがとうございます」


 秀之介様の気遣いに、胸が熱くなった。

 お父様、お母様も都の北部で戦っているはず。



 警戒しながら街を探索していると、一人の式神が戻ってきた。

 狼の耳と尻尾を生やした、青い髪の美少女だ。この子とはまだ話したことがなかったな。


「秀之介様。朝霞行房あさかのゆきふさの怨念を発見しました」


「蒼蓮。よくやった!」


「場所は九条家……琴姫様のお屋敷です」


「何っ!?」


「ええっ!」


 お父様もお母様も、北で妖怪退治に出向いていたはず。


「お二人は件の元凶、朝霞行房あさかのゆきふさの怨念と戦っています」


「怨霊は西に移動してたのか!?」


「そのようで。お二人は怨念を追って西に向かい、霊的に有利なお屋敷に誘導したのでしょう。今、翠嶺と紅羽と煌姫が助けに入っています。あの怨念は強い。お急ぎを」


「わかった。琴姫、いくぞ!」


「ええ!」


 ここで私は目を覚ました。

 わずかな時間で夢を忘れていく……

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