表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/71

第43話 ヒュドラ調伏

「たまには我も活躍せねばな。後方腕組みキャラなどと言われとうない」


 狐鈴が少し複雑な顔をしながら、ヒュドラの前に進み出た。

 絶対コメントで言われたな。


「オン・アグニ・マーヤ・クルタ・フシャーラ! 妖狐の焔よ、此処に顕現せよ」


 あ、まずい。

 俺は普段オフにしているシールドを、咄嗟にオンにした。


「妖炎爆雷! 急急如律令!」


 轟音と共に、真っ赤な炎が花が開くように広がった。

 衝撃波で飛ばされそうになるのを、踏ん張って耐える。

 気になってシールドゲージを見ると、ゴリゴリ減っていく。

 心配になって琴音を見ると、琴音もちゃんとシールドをオンにしていた。

 アリサさんは……


「ひぃいああああぁぁぁぁ……」


 悲鳴が聞こえた瞬間、声が遠ざかっていく。

 確かドップラー効果だっけ?

 

 ……多分大丈夫だろう。


 哀れなヒュドラを見ると、首が一本残して吹き飛んでいた。首の断面は焼くというより、真っ黒に炭化していた。胴体ももボロボロだが、ゆっくり再生している。


「すっご……」


 吹っ飛ばされてたアリサさんが、うつ伏せのまま顔を上げて呟いた。


 キャサリンさん達を見ると、結界の中で抱き合って震えていた。

 大丈夫。生きてる。


「ちょっとぉ! どこ触ってるのよ!」


「それは僕のセリフなんだけど!」


 あの二人、結構仲いいよな。


「む。真ん中の一本が無傷じゃな」


「狐鈴。そのまま弱らせろ。伝承通りなら、真ん中の首は不死属性だ」


「ほう。それは好都合じゃ」


 狐鈴は邪悪な笑みを浮かべた後、案内妖精にあざとい笑みを浮かべて、きゃるんと可愛いポーズを取った。

 片足を可愛く上げ、右手をまっすぐ上に伸ばした。

 すると、先端がハートになっているステッキが手の中に現れた。

 あれってこの世界の武器じゃないぞ。ネット通販で買ったのか、魔法少女のステッキだ。ただのおもちゃだよ……


「魔法少女マジカルフォックス! いっくよー!」


 は?

 狐鈴が声を高くして叫んだ。まるでアニメのキャラみたいだ……え? マジか!?


「スターライト・シュート!」


 星形の光がヒュドラの首を跳ね飛ばした。


「スターライト! いっぱい!」


「ええっ!?」


 狐鈴が突き出した、ハートのステッキの周りに、無数の星が次々と現れる。


「シュート!」


 ズドドドドド!


 次々と放たれる星形の光によって、ヒュドラはサンドバックになった。


「マジカル・バスター!」


 今度はピンク色のレーザーが放たれ、ヒュドラの首がくの字に折り曲がった。

 ……狐鈴が持ってるステッキって、なんの効果もないおもちゃだよな。つまり武器としての効果もゼロ。それでこの威力とはありえないだろ。


「クックック。やはりな。高レベルのモンスターに魔法を当てた方が、経験値が入るな。もう新しい魔法を閃いたぞ」


 邪悪な笑みにヒュドラが怯んだ。

 気のせいかな? ヒュドラは涙目になった視線を俺に向けてきた。


「狐鈴。もういいだろ。なんか可哀そうだ」


「ふむ。これ以上は視聴者も引くか」


「オン・マハー・ラギータ・ヴァジュラ! 星天の座、宵夜の天人、夜白を歩く霊天将。ここに応えよ。来たれ! アシリア! 急急如律令!」


「……来ないね」


「あれ?」


 数秒遅れて金の襖が現れ、中からアシリアが出てきた。


「ご主人様! 遅れてごめんなさい。ちょっとトイレだったの!」


「……あぁすまない。あれの動きを止められるか?」


 ヒュドラは心が折れたのか、ぐったりと動かない。

 しかし油断させるためかもしれない。



「まっかせて! グロリアス・チェーン・バインド!」


 空中から銀色の鎖がいくつも現れ、ヒュドラに巻き付いた。


「オン・カンマニ・パドマ・シャリラ・ソワカ! ヒュドラよ。調伏の印、いま結び奉る。縁鎖・魂縛・理鎖・封絶・従命! 急急如律令!」


 不死で倒せないなら、調伏すればいい。


 幽世かくりょに送るか。

 そう思った瞬間、ヒュドラと目が合った。

 胸の奥が、妙にざわつく。

 その目はどこかで見たことがある気がする。いやいや、絶対ないだろ。


 アシリアの時と同じように、幽世じゃなくて、浄土世界に送った方がいい気がする。良くわからないけど、こういう気持ちには、素直に従った方が良い。


「オン・アヌグラハ・スニティ・ナンダ・ソワカ! 暴威を慎み、妙光如来の慈悲にすがれ! 来迎之扉らいごうのとびら・開門! 救急如律令!」


 ヒュドラの頭上に、巨大な金の襖が現れて、ゆっくりと左右に開かれていった。

 そして黄金の手がいくつも伸び、ヒュドラを持ち上げて連れ去っていった。


「ご主人様。ヒュドラを浄土世界に送ったの?」


「……なんか幽世かくりょじゃダメな気がしたんだ」


「私も……なんだろう。懐かしい気が……。ヒュドラに知り合いなんていないんだけどなぁ」


「そりゃいないだろう」


「というか! 私アレと仲良く修行する未来が見えない!」


「え? ヒュドラに修行とかあるのか?」


「それもそっか。じゃぁまた呼んでね! 何でもない時でも呼んでよね! 一緒にご飯食べたいの!」


「そのうちな! 送還!」


「ちょ……!」


 ふう。琴音は……不機嫌になってないよな?

 琴音の方を向くと、琴音は難しい顔をしていた。


「琴音。どうした?」


「……うん。ギュッとして」


「どうした?」


 琴音を抱きしめると、予想以上の力で抱きしめ返された。


「なんかデジャブを感じたの」


「……琴音。俺が付いてる」


「うん」


 デジャブ。それはどこかで見たような体験とか、記憶の錯覚とか言われてるけど、陰陽師とか霊感がある者にとってそれは危険な予兆だ。

 前世の記憶だったり、未来視だったり、予知だったり、とにかく何かが起こる予兆。それも良いことよりも悪いことの方が多い。俺がヒュドラを浄土世界に送った方が良いと思ったのと同じだ。もしかしたらあのヒュドラ、何かあるのかもしれない。幽世かくりょで大暴れするとか?


「今日はもう帰ろう」


「うん」


「ちょっとぉ! いちゃついてないで早く出しなさいよぉ!」


「そうだ! そうだ! 爆発しろ!」


 あっ! キャサリンさん達、まだ結界の中だ!

 狐鈴を見ると、腹を抱えて大爆笑していた。

 悪い狐め!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ