第3話 人気アイドルVTuber・アリサとの出会い
一階に降りるとすでに十五人くらいの人達がロビーにいた。奥にはカウンターがあって、ギルドの職員らしき人が立っていた。やっぱり享楽之神の関係者なんだろうか? そんなことを考えていると、揉めごとっぽい声が聞こえてきた。
「い、嫌よ!」
「そんなこと言うなって。俺らとコラボしようぜ。一人だと死んじゃうかもよ?」
「私、男の人とコラボは……」
「はぁ? この間マサムネ達とコラボしてたじゃん!」
「あれは案件で……」
金髪ツインテールの女の子が、三人の男達に詰め寄られていた。
男達も青い髪や緑の髪、赤い髪と派手だ。配信者って目立つために派手な見た目をしてる人多いよな。
「ちょっと、あなた達! その子、嫌がってるじゃない!」
琴音が割って入って、女の子を背中に庇った。
「あん? なんだテメェ。お、可愛いじゃん。お前も俺らとパーティー組もうぜ!」
「笑えない冗談ね!」
「あんだよ。俺らのこと知らねぇの?」
「この人、ヤスノさんだぞ。有名なストリーマーなんだぞ!」
「登録者数、七十万人超えてんだぞ!」
「……秀ちゃん、知ってる?」
「……うーん。聞いたことあるような……ないような?」
「馬鹿にしてんのか!」
「おいガキ! 邪魔だからあっち行ってろ!」
「女の子はいていいよ」
「あっちに行くのはあんたらだ。配信始めるぞ」
「はぁ? お前らみたいな見たことねぇ奴が配信したって、痛くも痒くもねぇんだよ!」
「ヤスノさん。どこから拡散するか、わからないっすよ」
「大丈夫だろ」
「私も配信するわよ」
金髪の女の子が言うと、ヤスノの顔がひきつった。
「チッ! クソが! 行くぞ。お前らの顔は覚えたからな!」
去り際に怒りマックスな顔で睨まれた。
「大丈夫?」
「えぇ。ありがとう」
「あいつら感じ悪かったな」
「一応有名なストリーマーよ」
「ふぅん。あなたも有名人? あ、私は近藤琴音っていいます。こっちは早川秀一。私の彼氏です!」
「どうも、カップルチャンネルやってます。初めて半年くらいなので、弱小チャンネルです」
「私はVtuberだから……」
「あっ! もしかしてアリサちゃん!?」
「えっ! まじか!」
バーチャルアイドルのアリサって言えば、大手バーチャルアイドルグループ所属のトップアイドルじゃないか! やばい! 雲の上の存在だ!
「声でバレちゃったか。まぁ遅かれ早かれよね。素顔で配信することになっちゃうし」
そうか。Vtuberのアバターで戦うことなんてできないよな。
「それは心配ないわよ~」
ふわふわした雰囲気の妖精が現れた。たぶんアリサの案内妖精だろう。
「あなた達、事前にキャラクターを作ったじゃない? 配信ではそのキャラクターに置き換わるから~大丈夫よ~」
「え? 何その技術。規格外過ぎて怖いんだけど」
「ふふふ。すごいでしょう~」
確かにリアルな戦闘をそのまま配信に映すのはキツイな。視聴者には俺達が操作するキャラで戦っているという認識を与えるのか? 神の力って奴で。
「ええっ! ってことは! 私達もVtuberになっちゃうの!?」
「そういうことだよな。アバターはキャラクリで作ったやつか」
「私も秀ちゃんも、リアルとそんなに変わらない姿だよね?」
「あぁ。ネタで作らなくてよかったぜ」
「んふふ。ゲームで同じ姿でいようって言った私に感謝してね!」
「あぁ。ありがとうな」
おっとアリサのことを忘れるところだった。彼女に視線を向けると、ちょっと居心地悪そうだ。
「あ~。助けてくれてありがとうございます。私はこれで……」
アリサが立ち去ろうとすると、琴音が待ったをかけた。
「あの! アリサちゃん! もし良かったら私達とパーティー組みませんか? 私達カップルチャンネルだから、色んな意味で安全だよ?」
「琴音。アイドルのチャンネルに男が映るのはまずいって」
「でも女の子だけでパーティー組むのも心配だよ」
「何とかなるんじゃないか?」
「秀ちゃん、気づいてる? この人、《《見鬼》》だよ」
なんだと!?
「是非俺達とパーティーを組みませんか?」
「え? 怖っ! いきなり言ってることが真逆なんですけど!? ケンキってなに?」
「えっと……霊力がすっごくある人?」
「琴音はオーラが見える人なんですよ」
嘘だけどな。
「何この人達!? さっきのストリーマーよりヤバい気がするんだけど」
「テレビでオーラが見える占い師とか、たまに見るじゃないですか。琴音はあれと似たような能力を持っているんですよ」
「アリサちゃん。すっごくオーラがあるから、強い魔法使いになりそうだなぁって」
「俺も琴音も小さい頃から剣術やってます。俺達が前衛になるので、後衛の魔法使いになってくれそうな人がいたらいいなって思って……」
「な、なるほど?」
「それに俺達カップルチャンネルだから、俺は絶対にアリサさんに手を出さないし、手を出したらチャンネルごと吹っ飛びます。俺は常に琴音とイチャイチャしてるので、リスナーさんも変な疑いを持たないと思いますよ」
「それはそれでムカつくわね。私マジで年齢イコール彼氏いない歴なんだけど」
確かアリサさんの公式プロフィールに二十歳って書いてあったな。サバを読んでなかったらだけど。年上のお姉さんだから、あまり調子乗らない方が良いな。
「どんまい!」
琴音がアリサさんの肩をポンと叩いた。おおいっ! お前何やってんだよ!
「ムッカ!」
「琴音!」
「あんたの方は……まだまともそうね」
「どうも……」
「……ちょっとだけ考えさせて。うーん……」
アリサさんはため息をついた後、下を向いてしばらく考え込んだ。
「良いわ。パーティー組みましょう。確かに女の子だけでパーティー組むのは、現実的じゃないと思うわ。それに後衛の魔法使いでいいなら……なんとか戦えるかも?」
「男がいても大丈夫ですか?」
「案件だと男の人とコラボもあるから、完全にNGってわけでもないの」
「おおっ!」
「正直ホッとしたわ。またあいつらに絡まれるのも嫌だしね」
「じゃあよろしくね! アリサちゃん!」
「アリサさんね? あなた達って学生でしょ? 私の方が……」
「アリサさんな! 琴音! 俺達より先輩だし、雲の上の存在だぞ。アリサさんがフッってやったら俺達なんか消し飛ぶぞ!」
「あああっ! そうだった! アリサちゃ……アリサさんが可愛すぎるからつい……」
「まぁ確かに可愛いけど琴音の方が可愛いぞ」
「秀ちゃん! 好き!」
琴音が満面の笑みで抱き着いてきた。
「え? 何このバカップル? イラっとするんだけど? 早まったかなぁ……」




