流れが変わる1月
年が明けて、やってきました前受け受験。
1月、埼玉でP校、Q校、R校。千葉でS校を受ける。
レベル的には9月のたろうの偏差値の+5~-10の範囲と思って頂ければ。
偏差値はN校>R校>M校=S校>Q校>>P校です。
トライアンドエラーな前受け。
私は次を課題としていた。
試験までの準備や持参物確認
交通機関の使い方
声のかけ方、タイミング
トラブルが起きた時のリカバリー
他には、たろうの気分をあげる為におやつ(めったに食べさせないの)を持たせたり、洋楽を聴かせたり。そうして2月までにルーチンを固めようと考えていた。
イメージはイチロー選手。さすがにどちらの足から踏み出すかまでは決めないけど。
その日、私とたろうはさいたま新都心駅にいた。埼玉は空が広くどこまでも風が吹いていた。
翌日のP校の受験会場はさいたまスーパーアリーナ。
私は前泊を選んだ。私もたろうも朝が弱い。朝早くから電車に揺られて行くとやらかしそうだし、緊張しそうで。私達、小心者親子だ。初めての受験で失敗なんて耐えられない、主に私が。
こうして心の安寧を私は買った。
さようなら、私の預金。
P校は筆記用具の他にコンパス持参を指定していた。だが、たろうは忘れた。男子あるある。
で、ホテルに着いて早々に私達はコンパスを買いに出かけたのだ。
「売ってなかったらどうする?」
「大丈夫、大丈夫。ここら辺で、毎年中学受験やってるんだからコンビニに置いてあるって」
店の商魂を信じてコンビニまで行ったら、やっぱり売ってた。
やったね。
帰り道。夕飯をどうしようと私達は迷っていた。朝食代わりに食料は買い込んだが、夕飯におにぎりはちょっとねという感じだし。ホテルの食事も微妙な感じだったのだ。
近くの神社の鳥居のすぐ側、大きめの川魚屋さんがあった。埼玉は大宮の辺りは川魚屋やうなぎ屋が多い。店の前で成人式セールとして売ってたのは鰻弁当だった。
美味しそう。でもお高い。
そんな私の迷いをたちきるように声がかかった。
「迷ったら買う!」
きっぷの良いお姉さんの迫力に負けて鰻弁当を二つ買う私。
少し待たされたが、鰻を焼いているおじさんとお姉さんに「受験頑張ってね~」と言われながらホテルに 戻った。
蓋を空けると、一つのお弁当のご飯の上にぎっしり乗っている鰻。
中学受験に挑むたろうにサービスしてくれたんだ。
……埼玉の人ってこういう優しさがあるから好き。
男子にしては食欲にむらがあるたろう。その息子がびっくりする位、がつがつと鰻を食べた。
「おいしい、おいしい。鰻食べてたら緊張がとけてきたよ」
――春からずっと苦しかった、たろうの受験。流れが変わったと思ったのは、きっとこの時。
翌朝。
目覚まし代わりに勝負ソングとお気に入りの洋楽を数曲聴いて。
「Bad Blood」も「「We Will Rock You」も聴いたよ。
算数の問題をいくつか解いてから会場へ出発。余裕を持って歩いて行った。
「いってらっしゃい。がんばってこ~い」
と背中をポンと叩いて送り出す。余計な事は絶対言わない。
P校は過去問の初っ端で算数でつまずいた学校だ。初手からこんなんでええんかと焦りまくる私に、塾長A先生は
「難しかったでしょう?偏差値が低くてもね、学校はね『なめんなよ』と難しい問題を出題するんですよ。」
と解説してくれた、そんな学校。たろうは、算数大丈夫だろうか。
案の定、
「……算数が難しかった。」
としょぼくれて戻ってきた、たろう。そんな息子に、
「大丈夫。あんたができなければ大抵の子はできないよ。」
とあえて言った。内心びっくびくだったけど。
「今は練習だからね。まだ失敗しできるからね。今、失敗してくれた方が課題出しになって助かるわ~。」
みぞれの中。頑張ったご褒美に、たろうが大好きな家電店に寄り道してから帰宅。巨大な家電モールに心奪われた息子は「大人になったら、ここに住む」と言い出した。埼玉、良い所だもんな。そっか、頑張れや~。
――結果は特待スライド合格。
幸先の良いスタートを切れた。
たろうの特待合格を何よりも喜んでくださったのはA先生でした。




