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受験を洋楽で乗りきった話(主に親が)  作者: のどあめ


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16/21

流れが変わる1月

 年が明けて、やってきました前受け受験。


 1月、埼玉でP校、Q校、R校。千葉でS校を受ける。


 レベル的には9月のたろうの偏差値の+5~-10の範囲と思って頂ければ。

偏差値はN校>R校>M校=S校>Q校>>P校です。


 トライアンドエラーな前受け。

 私は次を課題としていた。


 試験までの準備や持参物確認

 交通機関の使い方

 声のかけ方、タイミング

 トラブルが起きた時のリカバリー


 他には、たろうの気分をあげる為におやつ(めったに食べさせないの)を持たせたり、洋楽を聴かせたり。そうして2月までにルーチンを固めようと考えていた。


 イメージはイチロー選手。さすがにどちらの足から踏み出すかまでは決めないけど。




 その日、私とたろうはさいたま新都心駅にいた。埼玉は空が広くどこまでも風が吹いていた。


 翌日のP校の受験会場はさいたまスーパーアリーナ。


 私は前泊を選んだ。私もたろうも朝が弱い。朝早くから電車に揺られて行くとやらかしそうだし、緊張しそうで。私達、小心者親子だ。初めての受験で失敗なんて耐えられない、主に私が。


 こうして心の安寧を私は買った。

 さようなら、私の預金。


 P校は筆記用具の他にコンパス持参を指定していた。だが、たろうは忘れた。男子あるある。


 で、ホテルに着いて早々に私達はコンパスを買いに出かけたのだ。


「売ってなかったらどうする?」

「大丈夫、大丈夫。ここら辺で、毎年中学受験やってるんだからコンビニに置いてあるって」


 店の商魂を信じてコンビニまで行ったら、やっぱり売ってた。

やったね。


 帰り道。夕飯をどうしようと私達は迷っていた。朝食代わりに食料は買い込んだが、夕飯におにぎりはちょっとねという感じだし。ホテルの食事も微妙な感じだったのだ。


 近くの神社の鳥居のすぐ側、大きめの川魚屋さんがあった。埼玉は大宮の辺りは川魚屋やうなぎ屋が多い。店の前で成人式セールとして売ってたのは鰻弁当だった。


 美味しそう。でもお高い。


 そんな私の迷いをたちきるように声がかかった。


「迷ったら買う!」


 きっぷの良いお姉さんの迫力に負けて鰻弁当を二つ買う私。


 少し待たされたが、鰻を焼いているおじさんとお姉さんに「受験頑張ってね~」と言われながらホテルに 戻った。


 蓋を空けると、一つのお弁当のご飯の上にぎっしり乗っている鰻。


 中学受験に挑むたろうにサービスしてくれたんだ。

 ……埼玉の人ってこういう優しさがあるから好き。


 男子にしては食欲にむらがあるたろう。その息子がびっくりする位、がつがつと鰻を食べた。

「おいしい、おいしい。鰻食べてたら緊張がとけてきたよ」


 ――春からずっと苦しかった、たろうの受験。流れが変わったと思ったのは、きっとこの時。



 翌朝。

 目覚まし代わりに勝負ソングとお気に入りの洋楽を数曲聴いて。

「Bad Blood」も「「We Will Rock You」も聴いたよ。


 算数の問題をいくつか解いてから会場へ出発。余裕を持って歩いて行った。


「いってらっしゃい。がんばってこ~い」

 と背中をポンと叩いて送り出す。余計な事は絶対言わない。



 P校は過去問の初っ端で算数でつまずいた学校だ。初手からこんなんでええんかと焦りまくる私に、塾長A先生は

「難しかったでしょう?偏差値が低くてもね、学校はね『なめんなよ』と難しい問題を出題するんですよ。」

 と解説してくれた、そんな学校。たろうは、算数大丈夫だろうか。


 案の定、

「……算数が難しかった。」

 としょぼくれて戻ってきた、たろう。そんな息子に、

「大丈夫。あんたができなければ大抵の子はできないよ。」

 とあえて言った。内心びっくびくだったけど。

「今は練習だからね。まだ失敗しできるからね。今、失敗してくれた方が課題出しになって助かるわ~。」



 みぞれの中。頑張ったご褒美に、たろうが大好きな家電店に寄り道してから帰宅。巨大な家電モールに心奪われた息子は「大人になったら、ここに住む」と言い出した。埼玉、良い所だもんな。そっか、頑張れや~。


 ――結果は特待スライド合格。

 幸先の良いスタートを切れた。


たろうの特待合格を何よりも喜んでくださったのはA先生でした。

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