やらかした12月
12月某日。
最後の模試。会場はM校。
私は焦っていた。
この模試が本命校の目標偏差値を越える最後のチャンス。できれば上回ってセイフティリードを取りたい。
……だって、本番は70%から80%しか力が出せないって言うし。
アホな私は大事な事を忘れていた。プレイヤーは私ではなく、息子だと言うことを。
会場までの道、うるさいおばさんはぶつぶつと息子に言う。
「算数、途中式絶対書くんやで」
「理科は~」
「社会のこれ覚えている~」
こうして送り出してから数時間後。たろうは真っ青な顔で戻ってきた。
「お腹が痛い。駅まで歩けない」
「ええっ。大丈夫?」
「むり……」
急遽、車で帰宅する私達。横で辛そうに目をつむる息子を見て、私は猛烈に後悔した。
(たろうが調子を崩したのは私のせいだ……)
苦しみ様が尋常でないので急患で診察してもらった結果は。
ストレス起因の腹痛。
私は反省した。そう、たろうはチキンだ。小心者だ。只でさえ重圧がかかる模試。そんな子どもにプレッシャーかける言葉がけしてどうするんだ。
――「二月の勝者」で黒木先生が『試験に赴くお子さんに何と言葉をかけるか考えておいてください』といった場面がある。
当時、「二月の勝者」を読んでいなかった私は漫画「ファンシイダンス」に出てくる「見孔著楔(人を見て法を説け)」を思い出していた。
B先生の言葉が甦る。
「『ああ、また試験か』ってなって平気になります……」
たろうの様な小心者には余計な言葉がけはしてはいけない。本番の試験を「日常」にしなければいけない。――ならば。いつも同じ言葉、同じルーチンで試験に臨ませてみようか。1月の前受けで。
一方で思った。前受けは埼玉。
埼玉から車で帰ったらどれだけ交通費かかるんだろか……。
頭の中でSiaの「Chandelier」が響く。あ~~~あ、やらかした~~~。やらかした~~~。
腹痛になりながら社会を解いたという最後の模試。たろうの偏差値は本命校N校とほぼ同じ。全ての志望校の合格判定は80%になった。
この後、息子に謝り倒しました。
たろうは算数が解けない時、頭の中にSiaの「Chandelier」が流れたと言ってました。頭の中身が少し似ている親子です。




