番外 中学受験~のどあめの場合~
第二話で書いた通り、私のどあめも中学受験経験者です。その時の話。
私が受けた学校は女子校。今はどうかは知らないが、当時は試験と面接があった。保護者同席で。
当時、生意気だった小学生のどあめは受験する学校をなめきっていた。偏差値は軽くクリアしていて過去問もそこそこ。どうひっくり返っても合格できるだろうと。
試験当日。現地は大雪。
ただでさえ寒いのに「試験の後にすぐ面接があるから綺麗な格好しなさい!」と母に薄着をさせられのどあめは不機嫌だった。
しかもさ~会場はめっちゃ寒くて、試験監督している先生方だけがストーブにあたっているの。
(先生達だけずるい)
そんな恨みがましい目で先生方を見ていたのを覚えている。
試験は楽勝。なんなら試験時間の半分以下で解き終わり時間をもて余していた。監督の先生にはじろじろ見られ。左右を見るのもカンニングを疑われかねないから憚られ。ついに私は机にうつ伏せた。
後に、私の後ろにいた同級生に「試験中に寝ていて大胆だなと思ったよ」と言われた。
試験が終わりお弁当を食べて面接を待つ。校舎が年季の入っている建物で寒くてね。
そこで母が気がついた。
受験生全員が両親同伴であることに。やばい、と思った母は急遽父を呼び出した。
面接までに父は来てくれるだろうか。長く感じた時間の末にやってきた父は……不機嫌だった。
今日は大事な会議があったんだ、と溢す父。寒がりな父は寒い校舎の中でさらに長時間待たされてもの凄く不機嫌になった。最悪だ。
(この学校に落ちるとしたら、面接だな。私のせいじゃないな。)
落ちる筈がないと思われた受験に現れた思わぬ落とし穴。人生、何が起きるかわからない。
結果として合格したが忘れられないスリリングな経験である。
入学してから、両親揃って面接に参加しない家庭はどんなに成績が良くても落とすと聞いた。
母のファインプレーである。
そして。何十年も経ち、遺品を整理していた時に当時の手帳が出てきた。
その日、父は本当に重要な会議を抜けてきたのがわかって衝撃を受けた。いわゆる事業計画や商品化会議の本チャンとかそういうレベルの会議だった。よく抜けてこられたなあ。
手帳には
「のどあめの一生の事だから。」
と書いてあった。読みながら涙が出た。
お父さん、本当にありがとう。
今、父に向かって直接お礼を言えないのが寂しい。




