第9話:選択する容姿、進化の知性
《つぎのれべるまで:あと8》
――ついに、進化の瞬間が迫る。
そのとき、眩い光が身体を包んだ。筋肉が引き締まり、骨格が軋むように再配置されていく。 脳内には痺れるような刺激――まるで、思考そのものに新しい神経が接続されるような感覚。 意識の器が広がっていく。
2度目の進化――身長は約2メートル。 自分が“ゴブリン”という種を超えはじめている実感がある。
「ウィンドウでも見るか」
その一言すら不要だった。 ただ意識すれば、ステータス画面が展開された。
なまえ たくと
ねんれい:16
しゅぞく:ごぶりんさーじぇんと
レベル:13
けいけんち:8700
HP:150 MP:40
ういんどう Lv2
いしのそつう Lv2
まじっくBOX Lv2
ちゃっとAI Lv1
ようしへんこう
まほう
すてーたすふりわけ
「容姿変更……?」
クリックすると、自分の現在の外見が表示される。 角張った顔、鋭い牙、緑の肌。まるで“大鬼”。このまま街へ出れば、間違いなく狩られる。
「……チャットAIって何だ?」
すると、淡い電子音とともに、声が返ってくる。
「この世界では“天の声”とも呼ばれていますが、“チャットAI”という名称があなたには適切かと。あなたの質問に答え、支援を行います」
「うお!喋った!?……」
「簡単に言うとあなたの疑問や質問にお答えしたり、できることをサポートします」
「……すっごい便利じゃん」
「はい。以後、支援機能として常に稼働します」
「基本的にあなたにしか聞こえません、ウインドウのコマンド選択も私が行う事が可能です」
「すごい便利なんじゃないそれ、よし、名前は……“アイ”でいいな」
「了解しました。以後、“アイ”と呼んでください」
「声も、女性でいこう。できるか?」
「もちろんです」 アイの声が、柔らかな女性ボイスへ変化した。
「アイ。容姿を変更したい。なるべく人間に近づけて」
「完全な人間化は不可能ですが、記憶ベースで人間類似形の容姿へ調整可能です。……生成します」
画面に反映された新たな姿は――童顔、八重歯、痩せ型イケメン。褐色の肌、緑がかった髪、わずかに尖った耳。
角は消え、肌も“ゴブリン色”から離れた。
「……ギリギリ人間に見えるか?」
「はい。この容姿であれば、都市潜入および会話の障害は著しく減少すると推測されます。」
「ちょっとかわいくないか?」
「年齢が16歳なのでそれ以上にはできません、それ以下にはできますが」
「まあいいや、次の進化以降も、この姿を維持したい」
「了解です。容姿設定をロックします、ただ能力を”最大解放”する際は本来の姿に戻す必要があります。」
よしよし、よくわからない所に転生した様だがまずは全て順調だな!