第8話:魔導士の距離、再生の確信
赤い熱気が漂う鏡の前。 戦場とは思えない静けさ――その中で、俺たちはカバン越しに会話を交わす。
「ラノ」
「はい、タクさん」
声が自然と柔らかくなる。 この空気が、俺たちの絆を物語っている。
「お前のステータス、レベル13の魔法使いだったよな?」
「うん。ギルドで、みてもらったらそうだった。“レベル13の魔法使い”って」
「なら、次の進化は“魔導士”だな」
「そうなの!レベル15で“魔導士”に進化するって聞いてる。もしかして……タクさんって、私のステータス見えるの?」
「見えるさ。自分のも、お前のも」
「わぁ……それすごいよ。魔導士のさらに2段階上、“アークメイジ”以上じゃないと、普通は見れないのに」
「なるほどな……スキル《ういんどうLv1》の効能かもしれん」
俺は画面を見つめながら、ふと思いを口にする。
「……魔導士になったら、その腹の傷、消えるんじゃないか?」
ラノの瞳が、月のように輝く。
「……え!? それって……!うん、言われてた!進化時には“肉体の再構築”が起こる可能性があるって!」
「だからさ……今、ちょうどタイミング的にあり得ると思ってさ」
「でもレベル15って……何日かかるか分かんないよ……」
「いや、違う。今のお前の経験値は4150。魔導士になるには11853。で、今の加算ペースなら……」
ステータスをはじき出す。
「1日で7200ポイント稼げる。だから……明日には魔導士になれる」
ラノは信じられないという顔で、思わず声を上げる。
「えええええ!? 早すぎじゃない!? すご……!」
痛みで体を動かせずとも、彼女の表情は一気に晴れやかになる。
「そんな……まさか一日で……」
「俺が調整した鏡が、自動でゴブリン生成→溶岩へ落下→経験値加算を繰り返してる。完全放置型」
「……自動撃破……?」
「そう。俺は手を出してない。でもポイントは入り続ける。しかも、お前にも平等に加算される」
ラノは目を伏せて少し考えたあと、微笑んだ。
「タクさんって……すごいよ。ゴブリンなのに……頭いいし、優しいし……」
「ゴブリン“なのに”は余計だ」
「ふふ、ごめん。でも……ありがとう。魔導士になれたら、この傷も消える。もっと魔法も使えるようになる」
「そうなれば……俺も、生き延びやすくなる」
「うん。絶対に……タクさんを、助けるよ」