表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/69

第4話:ウィンドウ

岩陰に身を潜め、息を殺す。 乾いた風が耳を撫で、背後の小隊の気配が徐々に遠ざかっていく。


《……よし》


俺は静かに立ち上がる。 前線に出れば、確かに経験値は稼げる。 だが――今の俺に必要なのは“勝利”じゃない。“生存”だ。


焼け焦げた集落へ再び足を踏み入れる。 血と煙の臭いが空気を支配し、死と災害が混ざったこの場所は、数分前とは思えぬほど現実味を帯びていた。


半壊した小屋へ滑り込み、扉を閉める。 静寂と闇の中、俺は膝を折る。


まずは、変化を確認する。


身長は150→175センチへと成長。 四肢は筋肉質に変化し、皮膚は緑褐色ながら滑らかさが増していた。 人間らしい――そう、皮膚も、声も。


「あいうえお……かきくけこ」


出てきたのは、くぐもった唸りではない。 明瞭な日本語だ。声帯すら“再構築”されたらしい。


俺はそっと呟く。


「ステータス……オープン」


沈黙。


「……ウィンドウ」


その瞬間、空気が“揺れた”。


空間に浮かぶ、透明なパネル。 そこには見慣れた文字列が、やわらかな光で並んでいく。




なまえ:たくと


ねんれい:16


しゅぞく:ごぶりんこーぽらる


れべる:5


けいけんち:350


HP:100


MP:0


すきる


ういんどう Lv1


いしのそうつう Lv1


まじっくぼっくす Lv1


「……これが、“ウィンドウ”か」


夢じゃない。脳が過去に触れてきたRPGの構造を、“現実に再現している”のかもしれない。


項目”ごぶりんこーぽらる”をタップ。


《つぎのしんか→ ごぶりんさーじぇんと》


俺は”まじっくぼっくす”を起動。


《まじっくぼっくす:しょうかばん》


しゅうのうすう:10こ


たいしょう:むきぶつ・せいぶつ


ほぞん:しゅうのうじのまま


しょじあいてむ:しょうぽーしょん ×4


カバンの中には、確かに4本の水色ポーション。 混乱の中でも、ちゃんと持ち込めていたらしい。


「……回復手段あり。これで“生存確率”は跳ね上がる」


喉の奥から、静かな笑みが漏れる。 そうだ。俺は、ただのゴブリンじゃない。


言語を理解し、スキルを起動し、そして――ウィンドウを開いた異端。


選択肢を持つ存在。


俺はゆっくりと立ち上がり、浮かぶウィンドウに目を向ける。 光の向こうに――次の進化が待っている。


「この世界のルール……だんだん見えてきたぜ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ