第七話「果実の香り、誘惑の罠!? ワインスライムと幻のデザートバトル」
ここはブラン・ヴィーニュ地方。
芳醇なブドウの香りが漂う、ワインとデザートの聖地だ。
「うわ~、ブドウの甘い匂い……もうそれだけで満足かも……」
「いや満足するな、ここが今回の狩場なんだからな。狙うは――」
**《ワインスライム》**
果実スライムが長期熟成の末に変質した高級種。
体液はアルコール分を含み、香りも味も強烈。
一度香りを嗅いだら最後――
舌と心を、酔わせて支配する誘惑の魔物。
「……スライムのくせに、色気出してんじゃねぇ……」
「どう見ても、そっちの分野じゃ私の負けよね……くっ……」
だが、マリーネの自虐に突っ込む暇もなく、
突如――地下セラーに響く拍手の音。
「ふふ……この香りに誘われてきたのは、君たちだけじゃないよ?」
振り返ると、赤いマントにワイングラスを持った男。
髪は巻き、目元は妙に艶っぽい。
「シャルル・ド・グルメール、世界を旅する“味の求道者”さ」
「誰だお前!」
「なにそのラノベ主人公みたいな肩書き!」
「このスライムはいただく。なぜなら、“美食”とは――誘惑に勝つものではなく、抱かれる覚悟だ」
「……くっそウザい……!」(マリーネの心の声)
◆ ◆ ◆
戦いは突如始まった。
一体だけ現れた、ワイン色のスライム。
触れればとろり。
香りはぶどう、チェリー、バニラ、スパイス。
まるで液体の誘惑。
「だめだ……頭がぼーっとする……っ!」
「飲むな! 食べるな! 今は味を想像するなァァァァ!」
が、すでにシャルルは一歩リード。
ワイングラスにワインスライムを“デキャンタージュ”し、
高級チーズと果実の盛り合わせと共に、完璧なペアリング!
「これが……“デザートフルコース召喚陣”!」
「戦い方が上級者すぎる……!」
しかしマリーネは静かに目を閉じ、手をかざす。
「……ふふ。甘く見るなよ、スライムなんて……“泡で包めば無害”なんだから……!」
必殺技:泡魔法!
発酵系スライム特効!
スライム本体を繊細な泡で包み、香りを封じて“無臭デザート”に変換!
→ ワインスライム、香りの支配力を失う
→ 食べると芳醇な味だけが残り、逆に“酔わない美味しさ”が際立つ!
「う、うまっ! しかもさっぱりしてる!」
シャルル、グラスを落とす。
「……まさか、“香りを封じて旨味を開放する”とは……ッ」
「そっちが“抱かれる覚悟”なら……こっちは“味を殴る覚悟”だ!」
◆ ◆ ◆
【ワインスライム・至高のデザート】
ぷるぷるの果肉ゼリーに、
香りを閉じ込めた泡をまとわせ、
冷やしたグラスにそっと注ぐ。
→ 《無限果実の夢泡ヴェリーヌ》、完成!
「ふふ、今日の一皿、文句なしね」
「……あれ? ちょっと、なんか頬赤くない?」
「わ、わたし!? そ、そんなこと――酔ってないし!」
「(泡の隙間から香り、ほんの少しだけ残ってたんだな……)」
◆ ◆ ◆
スライムグルメ旅は、味だけでなく新たな因縁も連れてくる。
次回――
**「薬草とミントの森!? メディカルスライムで心も体もリフレッシュ」**
今度のスライムは、癒し系!?
でもちょっとクセ強で、触れると超クール!