第六話「塩と水の奇跡!? うま味結晶・クリスタスライム現る」
俺たちは、乾いた風が吹きつける**塩の大洞窟《セレナ鉱層》**にいた。
壁一面が結晶化した塩の岩。足元も、キラキラと光る塩の粒で白く染まっている。
水はない。湿度もゼロ。ここは“乾きの聖域”。
「……ここ、本当にスライムなんているの?」
「いるはずなんだ。“完全無味スライム”の最終進化系……」
「“クリスタスライム”。透き通った結晶体で、ほとんど動かないらしい」
「……それ、スライムっていうか……置物じゃない?」
だがそのとき。
風が止まり、空気が静寂に包まれる。
「……いた」
岩陰の奥に、まるでガラス細工のように透き通った存在。
ほとんど動かない。だが、確かに“スライム”だ。
◆ モンスター出現!【晶体種・クリスタスライム】
・体内に“うま味結晶”を宿すが、通常時は無味
・外部から“水”が供給されることで、結晶が溶けて味を持つ
・とくに“涙”に反応するという……?
「水……? つまり、調理するには……」
「水を与えなきゃいけない。けどこの洞窟じゃ、水なんて……」
マリーネがそっと指で触れる。
そのとき――
すうっと、彼女の目から、涙がこぼれた。
「……っ。なにこれ……触れた瞬間、昔のこと……一瞬だけ、胸にこみあげて……」
ぽたり、ぽたり。彼女の涙がクリスタスライムの中心に落ちる。
そして次の瞬間、体内の結晶がふわりと溶け始め――
キラキラと“旨味の光”があふれだす!
「これは……うま味が可視化されてる!?」
「食べようとしてるのに神々しすぎる……!」
◆ ◆ ◆
【調理フェイズ】
・涙+微量のミネラル水で、クリスタスライムをゆっくり加温
・体内の“旨味結晶”を完全に溶かし、ぷるぷるのうま味ゼリーに変化!
→ 完成!
**《うま味晶ぷるるん・塩涙コンソメ仕立て》**
「………………」
(ひとくち)
「…………これ、“味”じゃない。“記憶”だ……」
しょっぱい。でもただの塩味じゃない。
苦味、甘味、渋み、酸味……全部が一粒に凝縮されてる。
「……マリーネ、ありがとう。君の涙がなきゃ、この味は出せなかった」
「……勝手に泣かせたの、そっちでしょ……」
「……なあ、次は笑いながら食べようぜ」
「……うん。そうね」
◆ ◆ ◆
スライムは、ただの魔物じゃない。
食べれば食べるほど、この世界の“深さ”がわかってくる。
そして、マリーネと俺の距離も、少しずつ――