第五話「チーズスライムの誘惑!? 牧場と発酵のぷるぷる日和」
「……平和すぎるな……」
火山から無事生還し、次にやってきたのはのどかな牧草地帯――
フォンデュ牧場。
牛、羊、草原、青空。
そして、ほのかに漂う……チーズ臭。
「ってか、クサッ! この匂いなに!?」
「それが今回のターゲット……チーズスライムらしい」
◆ モンスター情報:発酵種・チーズスライム
ミルクスライムが長時間自然熟成されて変異した個体
体温は低めで、とろけるような柔らかさ
発酵臭により一部の冒険者を気絶させる(※チーズ嫌いは要注意)
「発酵って、なんかこう……勇気がいるよな……」
「っていうか、あんた、平気なの? チーズ臭……」
「むしろ得意分野だ。俺の実家、昔チーズ工房やってたから」
「へぇ……意外」
「って、あれ見ろ! あれがチーズスライムだ!」
◆ ◆ ◆
草原を、ぽよんぽよんと跳ねる黄色いぷるぷる。
見た目はモッツァレラ。ときどき表面が伸びている。
そして、たまにガスをぷしゅっ。
「ちょ、待って待って無理無理! わたし、あの匂いマジで無理ぃ……!」
――そう、ここで明かされるマリーネの重大な弱点。
「発酵臭が超苦手」
「泡魔法が効かないなら、どうするのよ……!」
「俺に任せろ……ここから先は、職人の領域だ……!」
◆ ◆ ◆
【戦術:低温熟成トラップ】
フォンデュ牧場に点在するミルクタンクを活用
冷却魔法でスライムの動きを封じる
熟成を逆に促進して、風味を引き出す!
→ チーズスライム、冷却と濾過を経て
→ とろける「三種混合チーズぷるぷる」へと進化!
・表面:カマンベールのように柔らかく
・中身:モッツァレラ風の弾力
・中央:青カビの刺激的なコク
「っっっっ、くっさ……でも食う!」
(ぱくっ)
「…………っっっ……これは……発酵の暴力……だが美味いッッ……!!!」
ミルクの優しさ、菌の個性、発酵の深み。
あらゆる味が重なりあって、**“濃厚の境地”**に達していた。
◆ ◆ ◆
「うぅ……チーズは無理だったけど……」
「お前、鼻つまんでまで食べたの、結構すごいと思うよ」
「……だって、あなたがすっごく美味しそうに食べてたから……」
「ちょっとだけ……その味、分かりたくなったの」
「…………マリーネ」
「な、なにその目。ちょっと照れるじゃない……って、あー!まだ匂い残ってる!くさっ!!」
(やっぱりこの人、可愛いな……)
◆ ◆ ◆
チーズスライムとの出会いで、またひとつ味の奥深さを知った俺たち。
でも、この世界のスライムグルメはまだ終わらない。