第三四話:パセリと誘惑の渦――エスカルゴスライムの夢見る夜会(後編)
■ルヴァン晩餐会・調理対決――開幕
「さあ、踊れ。お前の“味覚のステップ”を見せてみろ。」
会場に響くのは、クラヴサン(チェンバロ)の艶やかな旋律。
舞台に立ったのは、主人公とシャルル、そして……
ぬるりと音もなく現れた、
エスカルゴスライム五体の選抜隊。
それぞれ、香りも個性も異なるスライムたち――
ガーリックフレア:香りの爆発を生む火属性スライム
パセリ・フィネス:香草の清涼感を操る繊細派
ブランデー・グレイス:洋酒香で記憶を曇らせる妖艶型
バター・ルージュ:脂と香りの重奏。最重量級
サイレント・カタツムリ:無香で他の香りを引き立てる調和型
それらが、舞台の上で主人公に“ダンス調理”を挑む!
■香草の舞踏――主人公、踊る!
「まさか……“スライムと踊る調理法”が、文字通りだったとはな……!」
シャルルは言葉を失い、主人公は覚悟を決める。
音楽に合わせ、リズムを刻む包丁――
回転するバター、宙を舞うパセリ、熱されたスライムがリズムに合わせてとろけていく!
観客たちは、香りと踊りに酔い、会場はひとつの舞踏会へ。
シャルル「……踊れ。お前だけの香りを見せてやれ!」
■そして、完成――
主人公が最終ステップで香草を舞わせると、
五体のエスカルゴスライムは一斉に震え、蒸気のような香りを残して料理へと昇華する――!
■『舞香のエスカルゴスライム ~渦巻くガーリックの夜~』
器の中で、貝殻にとろりと収まったスライムの一片。
香草バターが柔らかく広がり、口に入れた瞬間――
**「一口で恋をし、二口目で裏切られる」**ほどの官能的な旨味。
「これは……踊ってる。味が、音楽のように流れてくる……!」
■そして、静かに微笑む貴族たち。
「踊ったな、若き料理人よ。エスカルゴの真髄は、“香りと心を溶かすこと”。
今日、お前はひとつのスライムを、芸術に昇華させた。」
■エピローグ:
夜会のあと、ひとつだけ残された殻。
その中に、主人公は一滴の涙のようなスライムのしずくを見つける。
それはまるで――「ありがとう」と告げる小さな旋律のようだった。
主人公「……うん。また踊ろう。いつか、もっと旨いステップでな」




