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中間テスト結果発表〈ルート共通イベント〉①

時間は一気に初夏へと進みます。


「――あっ! お疲れさまです、つむぎさん!」

「白雪さんか。白雪さんも、テストお疲れさま。頑張ったみたいだね」

「つむぎさんにそう言って頂けるなんて、光栄ですわ」


 ――寮内でそこそこ重大な事件が発生し(風呂場水浸しより、その犯人を白雪にすべく、領内の防犯カメラがクラッキング被害を受けたことの方が、重要度としては高い)、その余波で白雪が特別寮へ移動になったり、風紀委員の綱紀見直しが行われたりしている間に、一月余りが経過した。季節は初夏へと移り、つい先日行われた中間テストの結果が、高等部の全学年分、壁にどどんと張り出されている。同じものは学内配布のタブレットでも配信されているので、わざわざここまで来る必要もないのだけれど、昼休みに何となく足を運んだつむぎは、同じく結果を見に来たらしい白雪と鉢合わせることとなった。


「つむぎさんは、今回も安定の学年一位ですのね。さすがです」

「全科目で満点を取っているわけでもないし、そう讃えられるものでもないよ。――三年の同率一位、オール満点のお二人に比べたら、私などまだまださ」

「お人柄に優れていて、人並外れた特技もあって、加えて勉学の面でも隙がないなんて、ちょっと現実離れした方々ですけれど」


 挨拶を交わした白雪と、そのままの流れで雑談へと移行する。特別寮へ移動した白雪と顔を合わせる機会は減ったが、彼女はとても社交的なようで、校内でも普通に近くを通ればこのように挨拶してくれるため、それほど離れた感覚はない。挨拶ついでに、時間があれば雑談するのも毎度のことだ。


「白雪さんも、外部入学生として初めてのテストで、総合五十位以内というのは、なかなか大健闘なのではないかな?」

「同じ外部生でありながら、入学以来学年一位を譲ったことがないつむぎさんには、遠く及びません。わたくしなりに最善を尽くしましたけれど、やはり苦手な理数系の科目が足を引っ張りましたわね……」

「高校の、特に数学は、中学と比べて急に難しくなるからね。もともと理数科目が得意か苦手かで、どうしても明暗が分かれがちな科目ではある」

「これでも、特別寮のあき……寿くんに教えてもらって、かなりマシにはなったのですが」

「寿くん、といえば、超天才科学者と名高い、あの?」

「えぇ。わたくしとは正反対に、寿くんは理数科目がずば抜けて良く、反対に国語と社会科目は苦手気味だそうです。お互いに教え合えるので、よく一緒にテスト勉強してました」

「今期の特別寮生は、随分と仲が良いようで何よりだ」


 当たり障りないつむぎの相槌に、白雪は輝くような笑みを浮かべて。


「本当にありがたいことと、学園の方々には感謝しかございませんわ。同学年の三人とはもちろんですけれど、先輩方もよく気にかけてくださって、今回のテスト期間中も、時間が合えば談話室で勉強会をしておりました。先輩方の中でも、特に布袋先輩は全教科オールマイティにこなせる方でして、わたくしたち後輩の面倒もよく見てくださいますの」

「へぇ。布袋先輩が剣道だけじゃなく勉学にも真摯な方なのは知っていたけれど、全教科オールマイティとは。確かに三年の総合順位表でも上位にいるね」

「そうでしょう? 生徒会長といい、風紀委員長といい、三年生は本当にハイレベルな戦いを繰り広げていますわ。やはり受験生だからでしょうか?」

「どうだろう。布袋先輩のことは分からないけれど、生徒会長と風紀委員長に関しては、一年生の頃からこんな感じだったらしいよ?」

「まぁ。では単純に、あのお二人の出来がズバ抜けてよろしいのですね」

「だと思う」


 ハイレベルなその他のことは知らないけれど、少なくとも亘矢は単に頭の出来がバケモノクラスなだけだということは断言できる。あれはいわゆるギフテッド的なやつでは? とつむぎは常々思っているし、本人にも言ってみたことはあるが、その返事は「優秀に生まれても、それでつむを守れなきゃ意味ないから、その辺はどうでもいいな」という歪みないものだった。中学卒業時点で、既に日本一の難関大学の赤本を完全制覇していた亘矢は、その気になれば海外留学して大学までスキップ卒業できる頭脳の持ち主なのだ。


「沙門先輩はどちらかといえば文系科目の方がお得意みたいですけれど、お家のことを考えれば経済学も外せないからと、布袋先輩に聞きつつ数学も頑張っていらっしゃいましたわ。大天先輩は全体的にお勉強はさほど得意じゃないそうですが、沙門先輩から『お前も永遠にサッカーだけしてれば良いわけじゃないんだから』と言われて、苦手ながらも机に向かわれていましたね」

「あぁ、うん、大天くんはね……」


 何しろ、脳筋比率が限りなく高い二年A組の中で、群を抜いて運動能力特化なサッカー馬鹿である。教師たちは早々に彼の成績を並にすることを諦め、「まぁ大天は特別寮生だし、赤点さえ取らなければそれで……」モードへ移行した。決して勉強に対する意欲が低いわけではないけれど、それより何よりサッカーに比重が傾いている、ある意味特別寮生らしい生徒なのだ。

 そんな彼がどうやって赤点回避しているのか、実はさり気なく気になっていたのだが、白雪の話から察するに、どうやら特別寮内で毎回先輩たちから勉強を教わっていたらしい。三年の先輩二人はどちらも成績は良い方だから、晴緋の面倒も請け負えたのだろう。


「三年生のお二人と違って、特別寮の二年生は、どちらもさほど成績が上位というわけではございませんよね。弁財先輩も演奏旅行がお忙しいこともあって、授業すら飛び飛びですし」

「弁財くんに関しては、仕方ない面もあるが……もしかして、布袋先輩と沙門先輩は、大天くんと弁財くん、二人の勉強を見ながらご自身のテスト勉強もされていたのか?」

「談話室では、ほぼほぼ二年生の家庭教師状態でしたわ。わたくしたち一年生組は、寿くんとわたくし、恵比くんと福禄くんでそれぞれ分からないところを尋ね合って、分からなければ四人で考えて、それでも答えが見つからないときに三年生を頼るようにしていましたので、『助かる』と布袋先輩から言われました」

「……今度、クラスメイトとして、布袋先輩と沙門先輩へ、お詫びの菓子折りを持っていこう」

「でしたら、飯母田製菓の夏の新作和菓子がよろしいかと」

「なるほど。考えてみよう」


 そろそろ夏の和菓子が店頭に並び出す頃合いで、それらの箱詰めをお詫びとお礼の菓子折りとするのは、和菓子屋の娘として〝あり〟だ。あくまで名目上お詫びなだけで、実際は特別寮全体への差し入れのようなものだから、数は多い方が良いだろう。

 特別寮へ移動してからの白雪は、こうして雑談する際はいつも、今のように特別寮生の様子について、話を聞かせてくれていた。真面目な話、特別寮の面々は社会ステータスが上位なだけあり、顔見知りの知人程度の立ち位置にはなれても、そこからどう顧客として取り込めるか難しいところだったので、お菓子を差し入れするチャンスを教えてもらえるのはありがたい限りなのだ。


「それにしても、今期の特別寮生は、本当に仲が良いのだな。私は話に聞いただけだが、去年一昨年の特別寮は、とても寮生全員が談話室に集まって和気藹々と勉強会をするような雰囲気じゃなかったらしいぞ?」

「わたくしも沙門先輩から聞きました。先輩が一年生の頃の二年三年の特別寮生は個性的でアクが強く、個人主義の極みみたいな人たちで、元から仲の良かった沙門先輩と布袋先輩がちょっと談話室で話しているだけでも良い顔をされなかった、と」

「一人一人とお話すれば、そう悪い方々ではなかったのだがな……。協調性という点では、確かに欠け気味だったのは否めない。大天くんは特にそういう不和の空気を厭う人だから、たまに息苦しそうだったよ」

「……さすがはつむぎさん。よく見ていらしたのですね」

「大したことじゃないさ」


 大袈裟な白雪の賛辞に笑ったところで、昼休み終了を告げる予鈴が鳴った。


「あぁ、授業が始まるね。それじゃ、白雪さん。また会おう」

「はい、つむぎさん。ごきげんよう」


 穏やかに挨拶を交わし、二人はそれぞれの教室へ向かうのであった。


今回から微妙に執筆方法を変えているので、もし読みづらい部分などあれば、感想欄などでお知らせくださるとありがたいです!

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― 新着の感想 ―
これは白雪の家族へ向けた良いパス 多分あいつら「つむの家のお菓子いいなー」とかなってそうだし
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