第89話 影を討つ刃
影の奥義
「はああああっ!!」
玲華の剣が閃く。
——ギィィンッ!!
グレイヴの剣と玲華の刃がぶつかり、火花が散る。
「ほう……なかなかの腕だな」
グレイヴが不敵に笑う。
「だが……お前に俺の”影迅剣”は捉えられない」
次の瞬間、グレイヴの姿がかき消えた。
「くっ……また”影”に……!」
玲華が警戒する。
「来る……!」
ハーブが鋭く声を上げた。
玲華は息をのむ。
「……どこから!?」
周囲の影が揺れる。
「影迅剣——」
「——闇穿」
——シュンッ!!
影の中から、鋭い突きが玲華を狙う!
「……っ!」
玲華は即座に剣を振り抜いた。
——ギィィンッ!!!
一閃。
「ほう……」
グレイヴが初めて驚いた表情を見せる。
「影迅剣を、見切った……だと?」
玲華は静かに息を整えた。
「……少しずつ、わかってきたわ」
「ほう? 言ってみろ」
「あなたの”影迅剣”……影を通じて移動し、影から攻撃を繰り出す技……」
玲華が剣を構え直す。
「でも、それは”影”がある場所に限られる」
「……」
グレイヴの瞳が鋭くなる。
「つまり、影がなければ、あなたは動けない」
玲華が低く構えた。
「その通りだ」
グレイヴが笑う。
「だが、それを知ったところで、お前に何ができる?」
「それを、今から見せるわ」
玲華の瞳が、確信に満ちていた。
⸻
影を断つ刃
「玲華……!」
ハーブが玲華の変化に気づく。
玲華の剣の軌道が、これまでとは明らかに違っていた。
「来い……!」
玲華が誘うように言う。
「面白い……!」
グレイヴが影に溶け込む。
「”影迅剣”——黒影一閃!」
——シュンッ!!
無数の影から同時に攻撃が放たれる!
玲華は——
「これで……終わりよ!!」
——ザンッ!!!
玲華の剣が、影を裂いた。
「なっ……!?」
グレイヴの身体が弾かれる。
「お前……まさか!?」
「気づいたのよ」
玲華が冷静に言う。
「影を通じて動くなら、その軌道を断てばいい」
「お前は……」
グレイヴが歯を食いしばる。
「”影を断つ剣”を生み出したのか……!」
玲華の剣先が、静かにグレイヴを指した。
「……あなたの影迅剣は、もう通用しないわ」
グレイヴは一瞬、沈黙した。
そして——
「……フッ」
彼は笑った。
「なるほど、見事だ」
グレイヴは剣を収める。
「俺の負けだ」
玲華は驚いたように目を見開く。
「まだ戦うこともできるだろうに……」
「俺は戦士だ。負けを認めないほど、愚かではない」
グレイヴは玲華をじっと見つめる。
「次に会う時は……俺が勝つ」
そう言い残し、グレイヴは闇の中へと消えていった。
玲華は剣を下ろし、深く息を吐いた。
「終わった……」
ハーブと雪奈が駆け寄る。
「玲華、すごい……!」
「本当に……よくやった」
玲華は二人の顔を見て、小さく微笑んだ。
だが——
「……これは、まだ”始まり”なのよね」
玲華の言葉に、ハーブも雪奈も黙り込む。
王都を覆う不穏な空気は、まだ消えていないのだから——。
⸻
次回予告
影迅剣のグレイヴを退けた玲華。
だが、王都の混乱は終わらない。
新たなる脅威が、ハーブたちを待ち受ける——。
次回、第90話「黒鋼の死神」
強敵、再び現る——!!
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