第87話 王都封鎖
王都に迫る闇
ゼヴァルドを倒し、安堵する間もなく——王都の上空を覆う黒い霧が、不吉な鐘の音とともに広がっていく。
「……これは、何だ?」
ハーブが険しい表情で霧を見上げる。
「王都の魔力が乱れている……何か、普通じゃない」
玲華も眉をひそめた。
「私……何か、すごく嫌な感じがします……」
雪奈が胸を押さえながら、小さく震える。
その時——
——ズズン!!
王都の四方にある城門が黒い魔力の障壁で覆われた。
「っ!? 門が……閉ざされた……!?」
「まさか……王都全体が、“封鎖”されたのか?」
ハーブたちの驚きの中、突如、黒衣の騎士団が城の方角から現れた。
「“王国戒厳令”の発令だ!」
「今より王都は完全封鎖される! 住民は外部との接触を禁ずる!」
「王の命に逆らう者は、容赦なく処刑する!」
——ギラッ!
黒衣の騎士たちが一斉に剣を抜き、王都の人々を威圧する。
「処刑だと……!?」
ハーブが拳を握る。
玲華も歯を食いしばりながら剣を構える。
「まさか……この騎士団、“黒鋼会”と繋がってるんじゃ……!?」
雪奈の呟きに、ハーブの中で疑念が膨らんだ。
王都の封鎖——それは”ただの異変”ではなく、何者かの計画の一部だった。
⸻
王都の反乱
封鎖された王都では、市民たちが騎士団の圧政に怯えていた。
「な、なんでこんなことに……!」
「王様はどうしたんだ!? こんなの、王の命令のはずが——」
「黙れ!」
騎士の一人が、反抗した市民を容赦なく斬り伏せる。
——ドサッ!
「……っ!!」
「くそっ……!」
ハーブの中で怒りが湧き上がる。
「……黙って見ていられないわね」
玲華が剣を握りしめる。
「でも、相手は王国騎士団……下手に動けば、王都全体を敵に回してしまう……!」
雪奈が不安げに言う。
「そんなこと言ってる場合じゃない……!」
ハーブが叫んだ、その時——
「お前たち……まさか、まだ生きていたとはな」
どこからともなく、黒いフードを被った男が現れた。
「……貴様は?」
ハーブが警戒する。
男はゆっくりとフードを外し、銀色の髪をあらわにした。
「俺の名はグレイヴ。“王都粛清”の指揮を任されている者だ」
「“粛清”……?」
雪奈が小さく息をのむ。
「まさか、王都を封鎖して虐殺するつもりか……!」
玲華が叫ぶ。
グレイヴは淡々と答えた。
「虐殺ではない。“正しい秩序”を取り戻すだけだ」
その言葉に、ハーブの怒りが爆発する。
「正しい秩序だと……? そんなのただの暴虐だ!」
「貴様らには理解できまい」
グレイヴは静かに剣を抜いた。
「ならば——力で黙らせるまでだ」
⸻
ハーブVSグレイヴ
——シュンッ!
次の瞬間、グレイヴの姿が消えた。
「っ!? どこに——」
「甘いな」
——ギィンッ!!
ハーブの背後から、一閃の斬撃!
「くっ!」
ハーブは間一髪で剣を交差させ、攻撃を受け止める。
「早い……!」
玲華が驚愕する。
「こいつ……ただの騎士じゃない!」
雪奈も警戒を強める。
「察しがいいな。俺は王都最強の処刑人——“影迅剣”のグレイヴ」
「影迅剣……!?」
「俺の剣は、一瞬の影に紛れ、一撃で敵を葬る」
——スッ……!
グレイヴが再び姿を消した。
「消えた!?」
玲華が周囲を見回す。
「違う、これは”高速移動”……!」
ハーブはすぐに察知するが——
——ギィィィィン!!!
次の瞬間、グレイヴの剣がハーブの肩を貫いた。
「がっ……!?」
ハーブの身体がよろめく。
「ハーブさん!!」
雪奈が駆け寄ろうとするが——
「動くな」
グレイヴが雪奈に剣を向けた。
「……この剣を受けた時点で、お前の負けだ」
「まだ……終わりじゃねぇ……!」
ハーブは歯を食いしばりながら立ち上がる。
「フン、まだ立つか」
グレイヴが冷ややかに剣を構える。
その時——
「ハーブ!!」
玲華が飛び込み、ハーブをかばうように剣を振るった。
——ガキィン!!
玲華の剣がグレイヴの攻撃を弾く。
「……邪魔をするな」
グレイヴが玲華に向けて鋭い一撃を放つが——
——バシュン!!
突如、グレイヴの動きが鈍った。
「……何っ!?」
「……ハーブさん……!」
雪奈が光を纏った手を前にかざしていた。
「雪奈の”光の結界”か……!」
ハーブが歯を食いしばりながら剣を握り直す。
「玲華、雪奈……行くぞ!」
「ええ……!」
「はい!」
ハーブたちは、王都を封鎖した強敵・グレイヴとの戦いに挑む!
⸻
次回予告
王都を封鎖した”影迅剣”グレイヴ。
彼の圧倒的な剣技に、ハーブたちはどう立ち向かうのか!?
次回、第88話「影迅剣の極意」
決着の時が迫る——!
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