第8話 交錯する影、新たな出会い
夕暮れが白陽高校をオレンジ色に染める頃、ハーブは校舎の屋上に立っていた。
昼間の騒動——倉田真司との衝突は思いのほか周囲に影響を与えた。
「面倒なことになったな……」
彼は静かに呟く。倉田のグループは単なる不良の集まりではなく、裏で何かを企んでいる気配があった。
——その時だった。
「……なるほど、やはり貴方が件の転校生ですね」
背後から冷静な声が響く。
ハーブが振り向くと、そこにいたのは一人の少女だった。
長い黒髪をなびかせ、鋭い瞳でこちらを見つめている。制服の着こなしは乱れひとつなく、端正な顔立ちには凛とした気品が漂っていた。
「……誰だ?」
「二年、氷室玲華。生徒会副会長をしています」
玲華——それが彼女の名だった。
「あなたに興味があって、話を聞きに来ました」
「興味?」
玲華はハーブをまっすぐ見つめたまま、静かに言葉を続ける。
「今日、倉田真司と衝突しましたね。あの男は単なる不良ではありません。この学校の裏で動いている ‘ある組織’ の一員です」
「……組織?」
玲華は小さく頷き、続けた。
「白陽高校には、表向きには知られていない ‘裏の派閥’ が存在します。倉田たちはその一つ、【黒鋼会】というグループの手先です」
「黒鋼会……?」
「彼らはただの不良ではなく、異世界から流入した ‘力’ を求めて動いている……」
ハーブは玲華の言葉に、内心驚きを隠せなかった。
異世界の力——それは自分の出自にも関わる話だった。
「お前は何者だ?」
玲華は少しだけ目を細めた。
「私は…… ‘この学園を守る者’ です。黒鋼会の動きを監視し、必要があれば排除する立場」
「なるほど。だが、なぜ俺に話す?」
「あなたが ‘普通ではない’ ことは、既に分かっています」
玲華の目が鋭く光る。
「転校初日から不良を一蹴し、戦いに長けた動きを見せた。……それだけではありません。あなたの ‘剣’ は、異世界の技術に基づいたものですね?」
ハーブは静かに目を細めた。
——この少女は、何かを知っている。
玲華は静かに息を吐く。
「私も、あなたに協力します」
「協力?」
「あなたが ‘敵’ なのか ‘味方’ なのか……見極めるためにも」
ハーブは彼女の言葉を噛み締めながら、夕焼けの空を見上げた。
新たなヒロイン、氷室玲華——
彼女の登場が、ハーブの学園生活にまた新たな波を呼び込もうとしていた。
次回予告
「貴方の強さ、試させてもらいます」
玲華が告げる ‘試練’ とは?
そして、黒鋼会の暗躍が本格的に動き出す——
新たな戦いが始まる、第9話!
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