表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/124

第71話 異端の王子

新たなる影


黒鋼会の襲撃を退けた翌朝。


学院の空気は一見平穏そのものだったが、ハーブたちの間には緊張が走っていた。


(……昨夜の襲撃、ただの威嚇じゃない。奴らは雪奈の”均衡の鍵”としての力を確認しに来た……)


ハーブは食堂で食事を取りながら、無意識に剣の柄に手を当てていた。


玲華が隣で腕を組み、難しい表情を浮かべる。


「黒鋼会の連中が妙に慎重だったのが気になるわね。まるで、本番に向けて”準備”を進めてるような感じだった」


雪奈は不安げに俯く。


「私……やっぱり、狙われてるんですね……」


ハーブは静かに頷いた。


「だが、俺たちはそう簡単にやられはしない。学院の警備を強化するのと、玲華、お前は生徒会に頼んで情報収集を続けてくれ」


玲華は自信ありげに頷く。


「了解。こういう情報戦は私の得意分野よ」


その時——


ガラッ!


食堂の扉が勢いよく開き、一人の生徒が入ってきた。


銀髪の青年。鋭い紫色の瞳を持ち、気品と威圧感を兼ね備えた存在。


学院の制服を着ているが、その雰囲気は周囲とまるで違った。


「……あれが、転校生?」


玲華が小さく呟く。


ハーブも彼を一目見て、直感的に分かった。


(……只者じゃない)


青年はゆっくりとハーブたちの方へ歩いてくると、不敵な笑みを浮かべながら言った。


「やあ、君が”最強”の剣士か」


異端の王子


食堂のざわめきを無視しながら、青年はハーブの前に立つ。


「初めまして、私はヴァルター・クロイツ。今日からこの学院に転入してきた」


玲華が目を細め、警戒の色を浮かべる。


「……その名前、聞いたことがないわね」


ヴァルターは肩をすくめる。


「当然だ。私は異世界から来た”王子”だからな」


雪奈が息をのむ。


「異世界……!? ということは……!」


ヴァルターはにこやかに笑いながら、雪奈に視線を向ける。


「君が”均衡の鍵”……“アストレイア王家”の血を引く者、雪奈・アストレイアだね?」


ハーブは即座に剣に手をかけ、ヴァルターを睨んだ。


「……目的はなんだ?」


ヴァルターは微笑みながら、椅子を引いて座る。


「落ち着け、敵じゃない。むしろ、私は君たちに”協力”しに来たんだ」


玲華が疑いの目を向ける。


「協力? どんな風に?」


ヴァルターは腕を組みながら答える。


「黒鋼会は、君たちの敵だろう? なら、目的は一致している」


「……お前も黒鋼会と敵対しているのか?」


ハーブが問いかけると、ヴァルターの目が一瞬だけ鋭くなった。


「“奴ら”は、私の故郷も滅ぼしたからな」


「……!」


雪奈が驚いた顔をする。


「滅ぼされた……?」


ヴァルターは低い声で続ける。


「私は元々、異世界にある小国の王子だった。だが黒鋼会の手により、国は焼かれ、家族は皆殺しにされた。生き延びたのは、私一人だけだ」


その声には、静かな怒りが込められていた。


「……だから、私は奴らを潰すために力を蓄えてきた。そして、ついに奴らの”本当の目的”を知った」


「黒鋼会の”本当の目的”……?」


玲華が身を乗り出す。


ヴァルターは頷いた。


「黒鋼会は、“均衡の鍵”を使い、異世界とこの世界の境界を完全に壊そうとしている。そして、その先にあるのは——“真なる王の復活”だ」


雪奈が震える。


「“真なる王”……!?」


ヴァルターは真剣な目でハーブを見つめた。


「君たちも気づいているはずだ。この戦いは、単なる”剣士たちの争い”じゃない。世界そのものの均衡がかかった戦いだということを」


ハーブはヴァルターを見つめ返す。


(こいつ……敵ではなさそうだが、信用するにはまだ早い)


「……それで、お前は俺たちにどう協力するつもりなんだ?」


ヴァルターは微笑んだ。


「簡単さ。黒鋼会が動く前に、こちらから”攻める”んだよ」


玲華が驚いた顔をする。


「こちらから……!?」


「そうだ。奴らが完全に準備を整える前に、“均衡の鍵”を狙う計画を潰す。そして、それができるのは——“最強の剣士”である君しかいない」


ハーブはヴァルターの言葉を静かに噛み締める。


(確かに、黒鋼会が動き出した以上、こちらから仕掛けるのも一つの手だ……)


だが、ヴァルターの真意がまだ見えない。


「……もう少し詳しく話を聞かせてもらおうか」


ヴァルターは満足そうに頷いた。


「いいだろう。“戦いの準備”をしよう、ハーブ・グランディール」


次回予告


突如現れた異世界の王子・ヴァルター。


彼の目的は本当に”黒鋼会の打倒”なのか?


そして、“真なる王”とは一体……!?


次回、第72話「剣士の覚悟」


ハーブ、新たな決断を下す——!

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ