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第68話 姫の選択

闇の襲撃


「ハーブさん!」


雪奈の叫びが響く中、“影の従者”が放った闇の刃がハーブを襲った。


「チッ!」


ハーブは瞬時に剣を振るい、光の刃で迎え撃つ。


——ギィィンッ!!


激しい衝撃音と共に、闇と光がぶつかり合い、火花を散らした。


玲華もすかさず剣を抜き、雪奈の前に立つ。


「雪奈、下がって!」


「……はい!」


影の従者は不敵に笑う。


「フフ……さすがは”光の剣士”か。だが——」


彼が手をかざすと、辺りに黒い霧が立ち込め、視界を奪われる。


「——これは?」


「くっ……!」


玲華が霧を払おうとするが、闇は形を変え、無数の黒い手となって絡みついてきた。


「なっ……!」


「この闇は、光を喰らう”影縛り”。簡単には逃げられんぞ」


影の従者の声が響く。


ハーブは剣を構え、冷静に状況を見極める。


(闇を媒介に、物理的な拘束をしてくるタイプか……だが——)


ハーブは剣を振りかざし、力を解放した。


「——“閃光斬”!」


剣から眩い光が溢れ出し、闇を切り裂いた。


「なに!?」


影の従者は驚き、後退する。


玲華もすかさず剣を振るい、残った闇を払った。


「やるじゃない!」


ハーブは剣を影の従者に向ける。


「……お前の目的は何だ?」


影の従者は静かに雪奈を見つめた。


「……“姫”を迎えに来た」


「迎えに?」


雪奈は驚き、影の従者を見つめる。


「どういうこと……?」


影の従者は微笑を浮かべる。


「お前の中に流れる”異世界の血”。それはお前がただの人間ではないことを意味している」


「……」


「お前には、この世界にいるべき理由などない。我々と共に来るのだ、“姫”よ」


雪奈は困惑しながらも、毅然とした表情で言う。


「……私は、私の意思でここにいるんです」


「それが間違いだと言っているのだ」


影の従者の手が黒く輝く。


「力を解放し、真なる役目を果たせ」


すると、雪奈の胸が強く痛んだ。


「……っ!」


「雪奈!」


ハーブが駆け寄ろうとするが——


影の従者が雪奈の前に瞬間移動する。


「……っ!?」


「今こそ選べ。“姫”としての道か、それとも——」


影の従者の手が雪奈に伸びる。


玲華が剣を振るうが——


影の従者は闇に溶けるように姿を消した。


次の瞬間——


「雪奈!!」


雪奈の姿が、影と共に消えた。


闇の中の対話


雪奈が目を覚ますと、そこは闇に包まれた異空間だった。


「ここは……?」


目の前には、影の従者が立っていた。


「目覚めたか」


雪奈は身を引きながら問いかける。


「……私をここに連れてきたの?」


「そうだ。だが、恐れることはない。我々はお前を害しようとは思わん」


「なら、どうして……?」


影の従者はゆっくりと歩み寄る。


「お前には、“姫”としての役目がある」


「……“姫”としての役目?」


「そうだ。お前の力が目覚めれば、この世界と異世界の均衡を正すことができる」


「……均衡?」


影の従者は静かに語る。


「世界は今、歪み始めている。“異世界”と”この世界”の狭間が、不安定になっているのだ」


「……」


「その歪みを正せるのは、お前だけだ」


雪奈は息をのむ。


「でも……私に、そんなことができるの?」


「できる。お前にはその力がある」


影の従者は手を差し伸べる。


「来るがいい、“姫”よ。我々と共に」


雪奈の心が揺れる。


(……私が、この世界の均衡を正す……?)


しかし——


「そんな勝手な話、私が納得するとでも?」


雪奈はまっすぐ影の従者を見据えた。


「私は、私の意思で生きる。誰かに決められるのは、もう嫌です」


影の従者は驚いたように目を細めた。


「……ほう?」


「私は、大切な人たちと共にいたい。その気持ちだけは、絶対に譲れません!」


その瞬間——


雪奈の体が淡い光を放ち始めた。


「……!」


影の従者が警戒する。


雪奈の体から放たれる光が、闇を押し返していく。


「私の力は、“誰かに従う”ためのものじゃない。“みんなを守る”ためにあるんです!」


光が爆発的に広がり、影の従者を包み込む。


「……クッ!」


次の瞬間——


——光と共に、雪奈の体が学院へと戻っていった。


帰還と新たな決意


「——雪奈!!」


玲華の叫びが響く。


光の粒子が舞う中、雪奈が学院の中庭に姿を現した。


「雪奈……!」


ハーブが駆け寄る。


「……ただいま、ハーブさん」


「無事でよかった……!」


雪奈は微笑みながらも、拳を強く握る。


(私は……もっと強くならなきゃ)


(誰かに守られるだけじゃなくて、“自分の意思”で戦えるように——)


玲華も安堵しながら雪奈の肩を叩く。


「まったく、心配させないでよね」


「……すみません」


だが、ハーブは険しい表情のままだった。


(“姫としての役目”……異世界の均衡……)


今回の襲撃は、単なる始まりに過ぎない気がした。


(これから、何かが起こる——)


夜の闇の中、ハーブは静かに剣を握りしめた。


次回予告


雪奈を狙う影の勢力——。


異世界の均衡を巡る戦いが、ついに動き出す。


次回、第69話「異世界の王」


隠された真実が、明らかになる——。

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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