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第55話 静寂の前兆

戦いの余韻


深紅の時計塔での激戦が終わり、ハーブたちはようやく静けさを取り戻していた。


玲華が大きく伸びをしながらため息をつく。


「ふぅ……やっと終わった……」


ミラは壁にもたれながら、冷静に状況を整理する。


「でも、エゼキエルは逃げた。結局、決着はついてないわ」


雪奈は少し心配そうにハーブの方を見た。


「ハーブさん、大丈夫ですか……?」


ハーブは肩の傷を軽くさすりながら、ゆっくりと頷く。


「大したことはない。エゼキエルの剣は強かったが……まだ終わりじゃない」


玲華が腕を組んで考え込む。


「エゼキエルの言葉……“本当の意味で決着をつける時が来る”って、どういうことなのかしら」


ミラが冷静に推測する。


「……彼は何かを待っているのかもしれないわね。あるいは、こちらの動きを見極めているとか」


「そんな悠長なことをしてる場合じゃないのに……」


玲華が不満げに呟くが、ハーブは静かに考え込んでいた。


(エゼキエル……お前の目的は何なんだ? ただの戦い好きとは思えない……)


そんな空気の中——


ガラガラ……


突如、塔の奥から扉が開く音が響いた。


全員が警戒し、すぐに武器を構える。


ミラが低い声で言う。


「……まだ敵がいるの?」


玲華が剣を構えながら、扉の向こうを睨む。


「もう勘弁してほしいんだけど……」


やがて、ゆっくりと扉の奥から現れたのは——


黒いローブを纏った人物だった。


謎の使者


ローブの男は無言のまま、ハーブたちをじっと見つめている。


その異様な雰囲気に、玲華が警戒を強めた。


「何者……?」


ミラが慎重に相手の様子を探る。


「敵意は感じない……けど、ただの人間じゃないわね」


ハーブは静かに男を見据えながら口を開く。


「お前は誰だ?」


ローブの男は一歩前に進み、静かに口を開いた。


「……お前たちがこの塔の試練を乗り越えた者たちか」


低く響く声。その声には、不思議な威圧感があった。


玲華が苛立ったように言う。


「質問に答えなさいよ。あなたは何者?」


男は少し間を置いてから、ゆっくりと言った。


「私は“影の使者”……お前たちに伝えねばならぬことがある」


ミラが僅かに目を細める。


「伝えること……?」


男は頷いた。


「この戦いの裏で動いている“真の存在”についてだ」


ハーブは鋭い目を向ける。


「……真の存在?」


男は続ける。


「お前たちはまだ知らぬ。お前たちの戦いは、単なる戦闘ではない……この世界に根付く“光”と“闇”の均衡を揺るがすものなのだ」


玲華が困惑する。


「均衡……? 何を言っているの?」


男は淡々と告げる。


「エゼキエルは、ただの剣士ではない。彼は“ある存在”の意思に従い動いている……」


ハーブはその言葉に、心臓が軽く跳ねるのを感じた。


「“ある存在”……?」


男は静かに頷く。


「お前の記憶にも関わる存在だ」


ハーブの瞳が僅かに揺らぐ。


(俺の……記憶……?)


雪奈が心配そうにハーブを見つめる。


「ハーブさん……」


男はさらに続ける。


「お前たちは、やがてその存在と対峙することになるだろう……だが、今のままでは勝つことはできぬ」


玲華が剣を握りしめる。


「なら、どうすればいいの?」


男は静かに告げる。


「“試練”を受けよ」


ミラが驚いたように眉を上げる。


「試練……?」


男はゆっくりと手を掲げた。


次の瞬間——


ハーブたちの周囲が闇に包まれた。


玲華が驚く。


「な、何!?」


ミラがすぐに術を構えるが——


シュウゥゥ……


闇は静かに晴れ、ハーブたちはいつの間にか別の場所に立っていた。


玲華が周囲を見渡しながら息を呑む。


「ここは……?」


そこは広大な黒と白が交錯する空間だった。


空には星々が瞬き、地面には不思議な模様が刻まれている。


男の声が響く。


「ここは“狭間の領域”……光と闇が交差する世界」


ミラが険しい顔をする。


「……つまり、ここで試練を受けるというわけね」


男は静かに告げた。


「ここでお前たちは“己の真実”と向き合うことになる」


ハーブは剣を握りしめながら、じっと男を見つめた。


(己の真実……か)


果たして、この試練が何を意味するのか——


ハーブたちは、新たな運命の扉を開くことになる。


次回予告


突如として訪れた“試練”の地。


ハーブたちは、この不思議な空間で何を知るのか——?


次回、第56話「狭間の試練」


己の真実を知るための、過酷な試練が始まる——!

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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