第5話 迫る影と雪奈の想い
昼休み。白陽高校の中庭には、穏やかな日差しが降り注いでいた。
「ハーブさん……その、お弁当、よかったら……」
雪奈は顔を少し赤らめながら、小さな包みを差し出した。彼女が作った手作り弁当だ。
「お前が作ったのか?」
「はい……その、迷惑じゃなければ……」
「……恩に着る。いただこう。」
ハーブは躊躇なく受け取り、包みを開いた。中には、綺麗に詰められたおかずとふっくらした白米が並んでいる。
「……すごく、丁寧に作られているな。」
「えっと、その……お口に合うといいんですが……」
彼女の視線は不安げだったが、ハーブは一口食べると、静かに頷いた。
「……美味い。」
その一言に、雪奈の表情が一気に明るくなる。
「本当ですか!? あの、よかった……!」
「味付けも絶妙だ。どれも手が込んでいる。」
「えへへ……頑張った甲斐がありました。」
そんな二人の姿を、校舎の屋上から見下ろす影があった。
「……アイツ、最近やたらと目立ってんな。」
白陽高校でそれなりに名の知れた男、倉田真司が不機嫌そうに呟く。彼の周囲には、同じく気の荒い数人の仲間が集まっていた。
「転校生のくせに、妙にデカい顔してるよな?」
「しかも、あの雪奈と一緒にいることが増えてる……」
「地味な奴だったのに、急に懐いてきたって話だぜ?」
仲間の一人が鼻を鳴らしながら言う。真司はそれを聞いて、さらに苛立ちを募らせた。
「はっ、何が ‘大人しいお姫様’ だよ。結局、強い男に靡くってわけか?」
彼はポケットからタバコを取り出し、火をつけようとしたが、学校の規則を思い出して舌打ちとともにしまい込む。
「まぁいい……俺たちの力を知らねぇから調子に乗れるんだろうな。」
「それに、ちょうどいい機会だ。」
真司はスマホを取り出し、あるメッセージを送る。画面には「例の件、そろそろ動くぞ」と表示された。
「さて、面白くなってきたな。」
彼の唇が不敵に歪む。校舎の下では、何も知らずに歩くハーブと雪奈の姿があった——。
次回予告
雪奈の手作り弁当をきっかけに、彼女との距離がさらに縮まるハーブ。しかし、そんな彼を快く思わない者たちが動き始める。
「お前、調子乗ってんじゃねぇぞ?」
突如としてハーブの前に現れる真司たち。彼らの狙いは? そして、ハーブはどう対処するのか——?
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