第49話 黒き監視者
影の主
ハーブたちは、影の戦士たちが消えた奥へと進んでいた。
暗闇の中、巨大な扉がゆっくりと開く。
ギィィィ……
その向こうにあったのは、広大な石造りのホール。
そして——
中央に黒いローブを纏った男が立っていた。
玲華が剣を構える。
「……あんたが、この城の主ってわけ?」
男はフードを被ったまま、静かに言った。
「私は“監視者”……名をヴァルター」
ハーブは警戒しながら問う。
「監視者、だと?」
ヴァルターはゆっくりとフードを外した。
現れたのは鋭い目つきの男。銀色の髪と、不気味に光る紅い瞳が特徴的だった。
「……お前たちの動きは、すべて見せてもらっていた」
「何……?」
ミラが眉をひそめる。
ヴァルターは冷静に続ける。
「お前たちがこの城に足を踏み入れることも、影の戦士たちを打ち破ることも、すべて予測の範囲内だった」
雪奈が震える声で尋ねる。
「では……なぜ、私たちをここまで誘導したのですか?」
ヴァルターの口元に、不気味な笑みが浮かぶ。
「決まっている……」
「“試練”を与えるためだ」
闇の試練
ヴァルターが手をかざすと、空間が歪んだ。
ドゥン……!
周囲の空間が一瞬で変化し、彼らは広大な闇の空間へと引きずり込まれた。
玲華が驚愕する。
「これは……!」
ヴァルターが静かに告げた。
「この空間では、お前たちの力が制限される。純粋な技量と精神力のみが試される場だ」
ミラが歯を食いしばる。
「なんて厄介な能力なのよ……!」
ヴァルターは冷淡に言う。
「これが“監視者”の力……」
「生き残れるかどうか、試させてもらおう」
試されるハーブ
次の瞬間——
ヴァルターの姿が分裂した。
「なっ!?」
玲華が驚く。
ハーブは剣を構え、すぐに動きを見極める。
「……いや、これは幻影だ」
「本物はどこかにいる……!」
彼の洞察力が冴え渡る。
ミラが魔法を唱えようとするが——
「……っ!?」
魔力が封じられていた。
「この空間では、魔法は使えない」
ヴァルターが冷静に言い放つ。
玲華が舌打ちする。
「つまり、私たちの剣技だけで突破しろってこと?」
ヴァルターは微笑した。
「その通りだ。さあ、見せてもらおうか——お前たちの真価を」
剣技のみの戦い
ヴァルターの幻影が一斉に襲いかかる。
玲華とミラが迎え撃つが——
「……くっ!」
攻撃がすり抜け、逆に背後を取られる。
「厄介ね……!」
ハーブは冷静に剣を握りしめた。
「——無駄な動きはしない」
彼は一瞬で踏み込み、幻影の動きを見極める。
——ズバッ!!
一振りで、いくつもの幻影が消し飛んだ。
ヴァルターの声が響く。
「ほう……」
「やはり、“剣聖”の力は衰えていないな」
ハーブは目を細める。
「……お前は、何を知っている?」
ヴァルターは薄く笑った。
「いずれ分かるさ……だが、まずはこの試練を超えてもらおう」
「最後の試練だ——」
次回予告
ヴァルターとの本格的な戦闘が始まる。
試練の果てに待つものとは——?
次回、第50話「闇を裂く者」
剣の誓いが、試される——!
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