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第46話 霧の幻影

迷いの森、深奥へ


ハーブたちは影狼を退けた後も、霧の森を慎重に進んでいた。


——ザッ、ザッ……


足元の枯れ葉を踏む音だけが響く。空を見上げても、厚い木々と霧が視界を遮り、昼なのか夜なのかすら分からない。


玲華が腕を組んで呟く。


「……本当に、ただの森なのかしら?」


ミラも慎重な表情を崩さずに答える。


「いいえ……この森は“迷いの森”と呼ばれている場所かもしれないわ」


「迷いの森?」


雪奈が不安そうに問いかける。


ミラは霧の中を睨みながら説明する。


「異世界にいくつか存在する“特殊な魔力を持つ森”の一つよ。迷い込んだ者は、出ることができなくなる……」


玲華が驚く。


「ちょっと、それってどうすれば抜け出せるのよ?」


ミラは小さく息を吐く。


「この手の森には、必ず“核”があるはず。それを見つけて破壊すれば、霧は晴れる」


「つまり、それを探せばいいってことね」


ハーブは剣を握り直し、前を向く。


「なら、進もう」


霧の奥には、まだ見ぬ試練が待ち受けていた——。


幻影の囁き


歩き続けること数分——。


——スゥ……


ふと、ハーブの耳元に誰かの声が囁いた。


「……あなた……私を忘れたの?」


「っ!?」


ハーブが立ち止まる。


玲華が怪訝そうに彼を見た。


「どうしたのよ?」


「……いや、今、誰かの声が——」


言いかけた瞬間、霧が揺らぎ、目の前に一人の少女の姿が現れた。


長い銀髪、淡い紫色の瞳を持つ、美しい少女。


雪奈が驚きの声を上げる。


「……あの人は?」


ハーブは息を呑んだ。


「……知らない、はずなのに……」


少女は悲しげな目でハーブを見つめる。


「……あなたは、私を捨てたの?」


「……何を言ってる?」


玲華が険しい表情になる。


「待って、ハーブ。何かがおかしいわ」


しかし、次の瞬間——


シュウウウ……!


霧が彼らを包み込んだ。


視界が歪む。


足元がぐらつく。


そして——


——彼らは、それぞれの“幻”の中に引きずり込まれた。


玲華の幻影


玲華が目を開けると、そこは見覚えのある場所だった。


「ここは……黒鋼会の本部?」


見慣れた和風の屋敷の廊下。


しかし、様子がおかしい。


——ザシュッ!!


悲鳴とともに、目の前で仲間たちが次々と倒れていく。


「ちょっと!? 何が——」


そして——


「お前のせいだ」


玲華の前に立っていたのは、血に濡れた刀を持つ自分自身だった。


「……っ!?」


「お前が力を求めたせいで、全てが壊れた」


玲華の心が揺れる。


「そんな……違う……!」


だが、もう一人の自分は嘲笑った。


「お前が戦いを望んだんだろう?」


玲華は震える手で拳を握り締めた。


「……私の選択は……間違いじゃない……!!」


すると——


パァァァ……!


光が玲華を包み込み、幻影が消えていった。


雪奈の幻影


雪奈が目を開けると——


目の前に倒れているのは、血を流すハーブの姿だった。


「……ハーブさん!!」


彼女は駆け寄ろうとするが、足が動かない。


周囲には、黒い影が取り囲んでいた。


「お前のせいだ」


影の一つが囁く。


「お前がもっと強ければ、彼を救えたのに」


「お前はただ、守られるだけの存在だ」


「無力だ……」


「……違う……」


雪奈はかぶりを振る。


「私が……私がもっと強ければ……」


その時——


彼女の手のひらに、温かい光が灯った。


「……私は、もう何も失いたくない……!」


光が爆発し、影を消し去る。


気づけば、彼女は元の森に戻っていた。


ハーブの幻影


ハーブが立っていたのは、廃墟と化した異世界の街。


「ここは……」


崩れた城。焼け焦げた大地。


その中に、剣を持った自分がいた。


「……お前は誰だ?」


「お前は思い出していないだけだ」


黒い鎧をまとった“もう一人のハーブ”が静かに言う。


「お前は、この世界を滅ぼした存在だ」


「……っ!」


「お前はすべてを破壊した。それを、忘れたのか?」


「……違う……そんなはずは……」


「ならば、思い出せ!」


もう一人のハーブが剣を振り下ろした——。


目覚める者たち


「……っ!」


ハーブは息を荒げながら、現実へと戻ってきた。


玲華も雪奈も、地面に膝をつきながら目を覚ます。


「……今のは……?」


ミラが冷静に言う。


「霧が見せる“幻影”よ。おそらく、それぞれの“心の迷い”を映し出したのね」


玲華は拳を握る。


「チッ……厄介なことしてくれるわね……」


雪奈も不安げに呟いた。


「……本当に、ただの霧じゃなかったんですね……」


ハーブは剣を握り直し、前を向く。


「まだ終わりじゃない。森を抜けるまで、油断はできない」


迷いの森は、まだ彼らを試していた——。


次回予告


幻影の試練を乗り越えたハーブたち。


しかし、迷いの森の本当の恐怖は、まだ姿を見せていなかった——。


次回、第47話「森の番人」


霧の奥に潜む“番人”との戦いが、幕を開ける——!

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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