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第45話 迷いの森

転移の果てに


——パァァァァッ……


光が収まると、ハーブたちは地面に転がるように転移していた。


「うっ……」


ハーブが身体を起こすと、見慣れぬ景色が目に飛び込んできた。


「ここは……?」


辺りは深い霧に包まれた森。木々は巨大で、蔦が絡まり、不気味なほど静まり返っていた。


玲華が頭を押さえながら立ち上がる。


「ちょっと……ここ、どこよ?」


ミラも周囲を見回しながら、転移魔法陣の痕跡を探す。


「……失敗したわね。ちゃんと座標を設定する余裕がなかったから、どこに飛ばされたか分からない」


「なんですって!? まさか、元の学園じゃないの!?」


玲華が驚くが、ミラは小さくため息をつく。


「そんなに都合よくいくわけないでしょ……」


雪奈も不安そうに辺りを見渡す。


「霧が……とても濃いですね……」


彼女の言う通り、数メートル先も見えないほどの濃霧が森を覆っていた。


ハーブは剣を握り直し、慎重に周囲を見渡す。


「ただの森じゃない……異様な気配がする」


——ザザッ……


突然、草むらが揺れた。


「っ!?」


玲華が身構え、ミラも魔法を発動する準備を整える。


「何かいるわ……!」


ハーブは剣を抜き、霧の奥を睨んだ。


「出てこい」


静寂を切り裂くように、闇の中から現れたのは——


巨大な狼だった。


森の主、影狼


その狼は、普通の獣とは異なり、漆黒の毛並みに赤く光る眼を持っていた。


玲華が息を呑む。


「あれ……ただの狼じゃないわね……」


ミラが険しい表情で答える。


「“影狼”……この森に住む魔獣よ」


「魔獣!? 厄介なの!?」


「ええ、特にこの霧の中ではね」


——ガルルルル……!


影狼が低く唸り声を上げ、一瞬で距離を詰める。


「速いっ!」


玲華が叫ぶ。


——シュンッ!


次の瞬間、影狼の姿が消えた。


「消えた!?」


ハーブは素早く動き、背後に剣を振るう。


——ガキンッ!!


剣と鋭い牙が激突する。


「くっ……!」


影狼は瞬間的に霧に溶けるようにして消え、再び別の場所から現れる。


「厄介な能力ね……」


ミラが分析する。


「霧の中に溶け込んで、瞬間的に移動してるのよ!」


「つまり、霧をなんとかすれば……!」


玲華が火炎魔法を詠唱しようとするが——


「待って、玲華!」


雪奈が制止する。


「この霧……普通の霧じゃないです……!」


玲華が驚く。


「どういうこと?」


雪奈は慎重に霧に手をかざし、微かな魔力を感じ取る。


「これは……幻惑の霧です」


「幻惑……?」


ミラが理解する。


「なるほど……だから敵の位置が掴めないわけね」


「でも、どうすれば……?」


玲華が困惑する中、ハーブは剣を構え直した。


「答えは簡単だ。霧を斬る」


——ゴォォォッ!!


ハーブの剣が光を帯び、鋭い一閃が森を切り裂いた。


——“剣閃・風牙”!!


斬撃が霧を吹き飛ばし、視界が一瞬だけ開ける。


その瞬間——


「今だ!!」


玲華が炎の魔法を放つ。


——“烈火弾”!!


火球が影狼の足元を爆発させ、動きを封じた。


「やったか!?」


しかし——


——グルルル……


影狼は傷つきながらも、なおも立ち上がる。


「タフすぎる……!」


ミラが焦る。


「トドメを刺さないと、また霧の中に逃げられる!」


その時、雪奈が前に出た。


「私に……やらせてください!」


「雪奈!?」


彼女は両手を組み、瞳を閉じる。


「……“癒しの光”」


淡い金色の光が雪奈の手の中に灯る。


しかし、それは治癒のためのものではなかった。


「この光は……?」


「影狼は闇の力を持つ……ならば、光の力で!」


雪奈が手を広げると、光が霧の中に広がり、影狼の動きが鈍る。


「今です!」


「——“剣閃・蒼牙”!!」


ハーブの剣が鋭く閃き、影狼の胴を貫いた。


——ズバァッ!!


影狼は最後の咆哮を上げ、地に伏した——。


森を抜けるために


「……倒した?」


玲華が息を整える。


ミラが頷く。


「ええ、完全にね」


雪奈がほっとしたように胸を撫で下ろす。


「でも、この森……まだ何かありそうですね」


ハーブは影狼の亡骸を見つめた。


「この森は普通じゃない。慎重に進もう」


ミラが改めて周囲を観察する。


「森を抜けるには、どこかに出口があるはず……」


「とにかく、先に進むしかないな」


一行は再び歩みを進めた。


彼らの前には、さらなる試練が待ち受けていた——。


次回予告


影狼を退けたハーブたち。しかし、迷いの森はさらなる罠を仕掛けていた——。


次回、第46話「霧の幻影」


ハーブたちは、過去の幻影に惑わされる!?

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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