第41話 闇の剣士
深紅の時計塔、戦闘開始
闇の波動が塔の中を満たす中、ハーブは剣を構え、目の前の敵——シグヴァルドを睨みつける。
「お前が私の記憶と関係があるというのなら……」
剣を強く握りしめ、気を引き締める。
「力づくで吐かせる！」
シグヴァルドは薄く笑う。
「よかろう……ならば、試してみるがいい」
——シュン！
一瞬のうちに、シグヴァルドの姿が消えた。
「っ！？」
ハーブが身構えた瞬間——
ガキィン！！
突如、背後からの斬撃が迫る。ハーブはギリギリのところで受け止めるが、衝撃が全身に響く。
「速い……！」
玲華が驚愕の声を上げる。
「消えたと思ったら、もう背後に……！」
ミラは冷静に分析する。
「単なる速度じゃない……まるで瞬間移動のようね」
シグヴァルドは淡々と言った。
「これが闇の剣士の技、“影疾風”だ」
——シュン！
またしてもシグヴァルドの姿が消える。
「くそっ……どこだ！？」
ハーブが警戒するが——
ガキン！！
今度は側面から鋭い斬撃が飛んできた。
「ぐっ……！」
辛うじて受け止めたものの、強烈な衝撃が腕に響く。
「ハーブ！」
玲華が駆け寄ろうとするが——
「動くな」
シグヴァルドが指を向けると、玲華の足元から黒い鎖が伸び、彼女の動きを封じた。
「なっ……！？ くっ……抜けない！」
ミラが玲華を助けようとするが、今度は雪奈の前に闇の波動が広がる。
「動けば、その少女もどうなるかわからんぞ？」
「……！」
ミラは悔しそうに拳を握るが、迂闊に動けない。
ハーブは歯を食いしばった。
「卑怯な手を……！」
シグヴァルドは冷笑する。
「戦いとは、勝つことがすべてだ」
「そんな理屈……認めない！」
ハーブは足を踏み込み、一気に間合いを詰める。
「——“剣閃・烈破”！」
彼の剣が閃き、鋭い衝撃波がシグヴァルドを襲う。
だが——
シュン！
またしてもシグヴァルドの姿が消える。
「無駄だ」
次の瞬間、ハーブの背後から鋭い一撃が襲った。
ザシュッ！！
「……っ！」
ハーブの肩に浅い傷が刻まれる。
「ハーブさん！！」
雪奈が叫ぶ。
ハーブは痛みをこらえながらも、シグヴァルドを睨んだ。
「……やはり、ただの剣士じゃないな」
シグヴァルドは剣を振り、血を払う。
「お前も思い出す時が来る……お前が本来、どんな存在だったのかを」
ハーブの心がざわついた。
「私が……本来の存在？」
シグヴァルドは冷たく言い放つ。
「その名……ハーブ。それが本当にお前の名だと思うか？」
ハーブの目が一瞬揺らぐ。
しかし、すぐに剣を構え直し、強い意志を込めて言った。
「何を言おうと関係ない。私はハーブだ。それ以上でも、それ以下でもない」
「……フッ、やはり思い出していないか」
シグヴァルドが微かに口角を上げたその時——
——ズズズ……！
塔全体が闇の波動に包まれ、空間が歪み始める。
「……これは？」
玲華が目を見開く。
ミラが即座に分析した。
「周囲の空間が……変化してる？」
シグヴァルドは無表情のまま言う。
「この場所は我の闇の力に適応する。お前の逃げ場はない」
——シュン！
またしてもシグヴァルドの姿が消える。
「またか！」
ハーブは即座に反応するが——
ガキィン！！
「ぐっ……！」
シグヴァルドの一撃を受け止めるものの、その衝撃は先ほどよりも重い。
「……動きが速くなっている？」
ハーブは異変を感じ取る。
シグヴァルドは静かに告げた。
「闇の中では、我の力は増幅する。お前が勝てる確率はゼロに等しい」
「……ゼロかどうか、試してみろ！」
ハーブは剣を握りしめ、深く息を吸った。
そして——
「——剣閃・零式」
——ドンッ！！
強烈な衝撃波がハーブを中心に放たれる。
その瞬間、塔全体を覆っていた闇の霧が大きく揺らぎ、一瞬だけ視界が開けた。
「……そこだ！」
ハーブは一気に剣を振るう。
シグヴァルドは目を細める。
「……ほう」
次の瞬間——
——ズバァッ！！
ハーブの一撃が、ついにシグヴァルドを捉えた。
血が舞い、闇の波動が大きく揺らぐ。
玲華が叫ぶ。
「やった……！？」
しかし——
シグヴァルドは微動だにせず、ただ冷たい目でハーブを見つめていた。
「……ふむ」
そして、彼は口元に微かな笑みを浮かべた。
「少しは楽しめそうだな」
——ズズズ……
シグヴァルドの傷口が、闇の波動によって瞬時に塞がれていく。
ハーブが目を見開く。
「回復した……！？」
シグヴァルドは剣を構え直し、静かに言った。
「さあ、第二幕の始まりだ」
闇がさらに深まり、戦いは激化していく——。
次回予告
ついに本気を出すシグヴァルド。
増幅する闇の力に、ハーブは打つ手があるのか！？
そして、「本来の存在」とは一体……！？
次回——
「記憶の扉」
ハーブの過去が揺らぎ始める——。
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