第39話 新たなる影
新たな勢力
「……ふぅ」
ハーブは深呼吸し、剣を鞘に収めた。
傷口からの出血はすでに止まりつつあったが、痛みは残る。
玲華が険しい顔で言った。
「さっきの暗殺者……絶対にただの敵じゃないわ」
ミラも腕を組んで同意する。
「ええ、黒鋼会のやり方とは違う。戦闘技術もそうだけど、あの連携と戦術……かなり計算されていたわ」
「でも、黒鋼会とは別の組織なんて……そんなの、あり得るんでしょうか?」
雪奈が不安そうに呟く。
ハーブは考え込む。
「可能性はある」
「えっ……?」
「黒鋼会が俺を狙っているのは分かる。だが、あの暗殺者の技……まるで異世界の暗殺術のようだった」
玲華が驚いた顔をする。
「異世界の……?」
ミラは静かに頷いた。
「そうね。普通の戦士にはできない技。つまり——異世界からの刺客の可能性が高い」
「異世界から……」
雪奈が小さく息をのむ。
すると、玲華が苛立ったように言った。
「なんなのよ……どいつもこいつも、ハーブを狙ってばっかり!」
「玲華さん……」
「雪奈、あなたもそう思うでしょ!? こんなに次々と敵が現れるなんて、おかしいわよ!」
玲華の叫びに、ハーブは静かに答えた。
「……俺の過去が、そうさせているんだろうな」
ミラが目を細める。
「つまり、あなたの“記憶”が戻れば、何が起きているのか分かる……?」
「かもしれない」
玲華は拳を握りしめた。
「だったら、さっさと思い出しなさいよ! でないと……ハーブがまた狙われる!」
「玲華……」
玲華は悔しそうに唇を噛みしめた。
「私……もう、ハーブが傷つくのは見たくないのよ……」
「……俺だって、こんな状況を続けたいわけじゃないさ」
ハーブは玲華の肩にそっと手を置いた。
玲華は少しだけ驚いたような顔をしたが、やがて小さく頷いた。
「……うん」
その様子を見ていた雪奈も、小さく口を開く。
「私も……戦えるようになりたい」
「雪奈?」
「今の私は、ただ見ていることしかできない……。でも、それじゃダメだって分かったんです」
雪奈の瞳に、強い決意の光が宿っていた。
「だから……私も、力を手に入れます」
ミラがくすっと笑う。
「……ふふ、いい覚悟ね」
「ミラ?」
「私も手伝ってあげるわ。あなたが強くなるなら、それも面白いじゃない」
「ありがとうございます……!」
雪奈が深く頭を下げた。
玲華も、雪奈の肩をぽんっと叩く。
「よし、なら私も協力するわよ!」
ハーブはそんな二人を見て、ふっと微笑んだ。
「……頼もしいな」
新たな手がかり
その時、ハーブのスマホが鳴った。
「……?」
画面を見ると、一通のメッセージが届いていた。
『真実を知りたければ、深紅の時計塔へ来い』
「深紅の時計塔……?」
玲華が眉をひそめる。
ミラが考え込む。
「……あの場所ね」
「知っているのか?」
「ええ。学園の旧校舎にある、古い時計塔。今は誰も近づかない廃墟になっているわ」
雪奈が不安そうに言った。
「そこに行けば……何か分かるんでしょうか?」
ハーブは画面をじっと見つめた。
(このメッセージ……誰が送った? 罠の可能性もある)
だが——
(それでも、行くしかない)
ハーブはゆっくりと頷いた。
「……よし、行こう」
玲華も雪奈もミラも、決意を固めた表情で頷く。
次の目的地は決まった——。
深紅の時計塔で、何が待ち受けているのか。
彼らは、その答えを知るために向かうのだった。
次回予告
謎のメッセージを頼りに、深紅の時計塔へと向かうハーブたち。
そこには、彼の過去に関わる重大な秘密が眠っていた。
新たなる勢力の正体とは?
次回、第40話「時計塔の秘密」
ついに、真実の扉が開かれる——。
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