第37話 闇の狙撃手
不穏な影
「……ここ最近、妙な気配を感じる」
ハーブは校舎の屋上で風を感じながら呟いた。
玲華と雪奈、そしてミラも一緒だ。
「確かに……なんか視線を感じるのよね」
玲華も頷く。
ミラは腕を組みながら考え込んでいた。
「ふふ……単なる勘違いならいいけれど、私の経験上、こういうのはだいたい厄介な問題に繋がるわ」
「ハーブさん、危ないことにならないといいのですが……」
雪奈が心配そうに口を開く。
ハーブは小さく笑った。
「まあ、警戒しておいて損はないな」
そう言った瞬間——
——シュッ!
鋭い風を切る音がした。
「っ!?」
ハーブは即座に動いた。
「伏せろ!」
ドンッ!!
次の瞬間、何かが玲華のすぐ横を通り過ぎ、壁に突き刺さった。
「なっ……!?」
玲華が驚いて振り向くと、そこには黒い矢のようなものが突き刺さっていた。
「今のは……?」
ミラが目を細める。
「……狙撃だな」
ハーブは剣を構えながら辺りを見回した。
(どこから撃ってきた? どの角度から……)
すぐに視線を巡らせるが、敵の姿は見えない。
だが、殺気だけはまだ感じる。
「……気をつけろ、まだ来るぞ!」
その言葉と同時に——
——シュンッ!
またしても矢が放たれた。
「雪奈!」
「——っ!」
雪奈の未来視が発動する。
(次の矢は……私の足元!)
雪奈はとっさに後ろへ跳び、矢を避ける。
「……やっぱり、見えた」
「雪奈……お前の力、本物だな」
ハーブが感心したように頷く。
「ありがとう、ハーブさん……でも、まだ怖いです……」
雪奈の額には汗が滲んでいた。
「狙撃手の位置を特定しないと……!」
玲華が周囲を見渡す。
「でも、どこから撃ってきてるの?」
「ふふ……それを探るのが先ね」
ミラが妖艶な笑みを浮かべながら、小さな装置を取り出す。
「これは……?」
ハーブが尋ねると、ミラは得意げに微笑んだ。
「熱源探知機。隠れていても、発射地点を特定できるわ」
「さすがミラ、用意がいいな」
ハーブが感心する。
「ふふ、私の情報網を甘く見ないで?」
ミラはスイッチを入れ、探知機を起動させた。
次の瞬間——
「見つけたわ。校舎の向こう、時計塔の上」
ミラが指を差す。
ハーブはその方向を睨みつけた。
「……よし、俺が行く」
反撃開始
ハーブは屋上の縁に足をかけた。
「ちょ、ちょっと!? いきなり!?」
玲華が慌てるが、ハーブは気にしない。
「奴がここから狙えるってことは、向こうからも丸見えだ。早く仕留める」
「……わかりました。私、ハーブさんをサポートします!」
雪奈が一歩前に出る。
「雪奈?」
「私の未来視があれば……敵の動きが見えます。だから……!」
雪奈の瞳が再び淡く光る。
「撃ってくるタイミングを教えます!」
「頼む」
ハーブは剣を構え、時計塔へ向かって跳躍した。
「ハーブさん、右です!」
雪奈の声が響く。
——シュッ!
矢が飛ぶ。
だが、ハーブは雪奈の指示通り右へ回避し、狙撃を避けた。
「……よし!」
ハーブはそのまま時計塔へと駆け上がる。
(このまま距離を詰める!)
だが——
「甘いな」
不意に、冷たい声が響いた。
「っ!?」
ハーブの背後に、新たな気配。
「後ろ!?」
雪奈が叫ぶ。
振り向くと、そこには漆黒のマントを纏った男が立っていた。
「……やれやれ、未来視を持つ厄介な娘がいるせいで手こずったが……ここまでだ」
男の手には、漆黒の短剣。
「ハーブ、今度こそ死んでもらう」
その言葉と共に——
男の刃が、闇を裂いた。
次回予告
狙撃手の正体とは?
そして、ハーブはこの危機をどう切り抜けるのか——!?
次回、第38話「影の暗殺者」
闇に潜む刺客との死闘が、幕を開ける——!
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