第34話 ハーブ争奪戦
ミラの宣戦布告
「惚れちゃったかも」
ミラの言葉が静寂を破った瞬間、玲華と雪奈の表情が凍りつく。
「……な、なによ、それ……!」
玲華が動揺しながら声を上げる。
雪奈もまた、驚きと戸惑いの入り混じった表情でミラを見つめていた。
だが、当のミラはまるで涼しい顔で微笑みながら、ハーブの腕に軽く触れる。
「ふふっ、あなたって本当に魅力的ね。強くて、冷静で、それでいて優しさもある……そんな人、私が放っておくわけないでしょ?」
「……」
ハーブは困惑したまま、ミラを見つめる。
玲華や雪奈とは違う、大胆で積極的な態度に、どう対応すべきか判断に迷っていた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
玲華が勢いよく前に出る。
「ハーブは誰のものでもないの! あんたが勝手に好きとか言ったって、関係ないでしょ!」
「ええ、そうね。でも、私は好きなものを手に入れる主義なの」
ミラはクスリと笑いながら玲華の顔を覗き込む。
「あなたはどう? 彼のこと、好きなんじゃない?」
玲華の顔が一瞬で赤く染まる。
「なっ……!? そ、そんなわけないじゃない!!」
「へぇ?」
ミラは玲華の動揺を面白そうに眺める。
「ふふっ、隠さなくてもいいのに。私は正直者だから、好きなものは好きって言うわ」
玲華は拳を握りしめながら、悔しそうに唇を噛む。
「……この女……!」
そんな二人のやり取りを見ながら、雪奈は胸の奥に複雑な感情を抱いていた。
(……私も、ハーブさんのこと……)
だけど、玲華のように素直に言葉にすることも、ミラのように大胆に行動することもできない。
そんな自分の弱さが、今はもどかしく感じられた。
——そんな三人の緊張が張り詰める中。
ハーブは静かにため息をつくと、ミラの手をそっと振り払った。
「……お前、からかってるのか?」
「ふふっ、本気よ?」
ミラは冗談めかしながら微笑むが、その瞳はどこか真剣な色を帯びていた。
玲華 vs. ミラ、恋の戦いが勃発!?
その後、三人は学園へと戻った。
だが、それからというもの——
玲華とミラの間で、激しいハーブ争奪戦が繰り広げられることとなった。
「ねぇ、ハーブ。お昼、一緒に食べない?」
ミラがハーブの腕にしなだれかかるようにして話しかける。
すると——
「ちょっと! ハーブは私と食べるんだから!」
玲華が強引に間に割り込む。
——別の日。
「ハーブ、剣の稽古をつけてあげるわ。あなたの剣筋、もう少し洗練させられると思うの」
ミラが剣を持ち、微笑む。
しかし——
「ハーブなら私が特訓してあげるわ! こいつは私の弟子みたいなもんなんだから!」
玲華が負けじと名乗りを上げる。
——さらに別の日。
「ハーブさん、お菓子作ってきたの。よかったら食べませんか?」
雪奈が少し恥ずかしそうに手作りのお菓子を差し出す。
「ありがとう、もらう」
ハーブが手を伸ばそうとした瞬間——
「待った! そっちはダメ!」
玲華が突然、雪奈の差し出したお菓子を横から奪う。
「えっ?」
雪奈が驚いていると、玲華はじっとそのお菓子を見つめる。
「……毒とか入ってないでしょうね?」
「い、入ってません!」
雪奈が必死に否定するが、玲華は疑わしげな目を向けたままお菓子を眺め続ける。
そして——
「じゃあ私が試食してあげるわ!」
玲華は勢いよく口に放り込んだ。
「!? ちょ、玲華さん、それはハーブさんの……!」
玲華はしばらく口の中で味を確かめると、ようやく満足げに頷いた。
「……うん、おいしい」
「……なら、いいですけど……」
雪奈は肩を落とす。
その様子を見ていたミラは、クスクスと笑いながらハーブに囁いた。
「ねぇハーブ。あなた、本当にモテるわね」
「……なんの話だ?」
ハーブは本気で意味がわからないといった表情を浮かべる。
——こうして、ハーブを巡る玲華とミラのバトルは続き、雪奈もまた、自分の気持ちをどうすべきか思い悩む日々が続くのだった。
次回予告
玲華とミラの争いが激化する中、雪奈は自分の気持ちと向き合おうと決意する。
しかし、そんな中で学園に不穏な影が忍び寄る——。
新たな敵の気配と、恋の火花が入り混じる次回、第35話「迫りくる脅威」
ハーブたちに、新たな試練が訪れる!