第33話 目覚めし者
交わる剣——ハーブ vs. ミラ
ハーブは剣を構え、ミラと対峙していた。
玲華は膝をつきながらハーブを見上げ、悔しそうに唇を噛む。
「……気をつけて、ハーブ」
雪奈もまた、不安げな表情でハーブの背中を見つめていた。
「……ハーブさん……」
だが、ハーブは静かに剣を握り直し、ミラを見据えていた。
ミラはそんな彼の様子を見て、妖艶な笑みを浮かべる。
「ようやく、あなたと本気で戦えるのね。楽しみだわ」
「……」
ハーブは言葉を返さず、ただ息を整える。
「じゃあ……いくわよ!」
ミラが一瞬で距離を詰める。
その動きはまるで風のように軽やかで、玲華との戦い以上に研ぎ澄まされたものだった。
ハーブはすかさず防御の構えを取る。
しかし——
「——ッ!」
ミラの剣の一閃を受け止めた瞬間、ハーブの体がわずかに軋んだ。
ミラの攻撃は、ただの剣の斬撃ではない。
彼女の剣筋には、独特の圧力が込められていた。
「……どう? 私の剣の重さ」
「……面倒だな」
ハーブは息を吐くと、剣を払い、間合いを取る。
「でも……それだけか?」
ミラの目が細められる。
「まだ余裕があるのね……いいわ、もっと本気を出してあげる」
——次の瞬間。
ミラの姿が消えた。
「!?」
玲華と雪奈が息をのむ。
ミラの動きが、さっきまでとはまるで違っていた。
ハーブは瞬時に気配を感じ取り、後方へと飛び退く。
だが——
「遅いわ」
背後からミラの剣が迫る。
ハーブは反射的に剣を横に振り、間一髪で受け止めた。
ガキンッ!!
衝撃で足元の石畳がヒビ割れる。
ミラの一撃は、先ほどの比ではなかった。
「……このままじゃ、押し切られるな」
ハーブは冷静に状況を分析する。
だが、ミラはその一瞬の隙を見逃さない。
「終わりよ、ハーブ!」
ミラの剣が再び振り下ろされる。
その剣圧は、玲華ですら受け止めることができなかったもの。
しかし——
キィンッ!!
ハーブの剣が、それを正確に受け止めた。
ミラの目が驚きに見開かれる。
「……何?」
「お前の剣の軌道……もう読めた」
ハーブの剣筋が、先ほどまでと明らかに変わる。
玲華と雪奈も、彼の変化に気付いていた。
「……ハーブの剣が……」
玲華が息をのむ。
「……さっきよりも、ずっと鋭く……!」
ハーブの動きが一段と研ぎ澄まされ、ミラの攻撃を寸分の狂いもなく受け流し始めたのだ。
ミラが剣を振るう。
しかし——
シュッ!
ハーブは軽く身をかわし、ミラの剣を紙一重で避ける。
「ちょっと……っ!」
ミラが焦りを滲ませる。
——ハーブが、覚醒しつつあった。
「ミラ、もう終わりだ」
ハーブが静かに剣を構える。
ミラは歯を食いしばりながらも、次の一撃に全力を込めた。
「まだ……負けるわけにはいかない!」
剣が、空を裂く——。
勝敗の行方
——次の瞬間。
ミラの剣が止まった。
彼女の手首を、ハーブの剣が正確に狙い、僅かな隙間に差し込まれていた。
「……っ!」
ミラの手から剣が滑り落ちる。
カラン——
静寂。
玲華と雪奈が息をのむ中——
ミラは驚いたようにハーブを見つめていた。
「……まさか、私が負けるなんて」
「……勝負は決まった」
ハーブは剣を下ろし、ミラを真っ直ぐに見つめる。
ミラは苦笑しながら、ゆっくりと膝をついた。
「……本当に、強いのね……」
ハーブは静かに剣を鞘に収めた。
「お前の力は確かに強かった。でも、俺も負けるわけにはいかなかった」
玲華と雪奈が安堵の息を吐く。
「……終わったのね」
「ハーブさん……!」
だが——
ミラはハーブをじっと見つめながら、不敵に微笑んだ。
「ねぇ、ハーブ?」
「……なんだ?」
ミラは微笑みながら、彼にゆっくりと近づく。
「私……あなたに惚れちゃったかも」
「……は?」
玲華と雪奈が固まる。
「な、何言ってるのよ、アンタ!」
玲華が顔を赤くしながら叫ぶ。
雪奈もまた、驚きながらも頬を染めていた。
「だって、本当に強かったんだもの。そんな人、放っておけるわけないじゃない」
ミラは可愛らしくウインクする。
「……これからは、もっと積極的にいくわね?」
「……はぁ?」
ハーブは困惑しながらも、ミラの視線を受け止めていた。
新たな三つ巴の関係が、今ここに誕生する——。
次回予告
ハーブを巡る恋の戦いが激化!?
玲華と雪奈も負けじとハーブへの想いを強くする中、彼の日常はますます波乱に満ちたものに——。
次回、第34話「ハーブ争奪戦」
新たな恋の火花が、今、燃え上がる!
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