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第28話 囚われし記憶

ミラの急接近


「ハーブ、おはよう♪」


翌朝、登校すると同時に、ミラが明るい声で駆け寄ってきた。


「ミラお前……」


「えー、そんな他人行儀な呼び方しないでよ。昔みたいに“ミラちゃん”って呼んでくれないの?」


ミラは甘えるようにハーブの腕にしがみつく。


「ちょっ……!」


玲華と雪奈がギクリと反応した。


「……おい、いきなり何をしてる」


ハーブは冷静に彼女の腕を振り払う。


しかし、ミラはまったく気にした様子もなく、くすくすと笑う。


「相変わらず、クールね。でも、そんなところが好きなんだけど♪」


玲華と雪奈がぴくっと反応する。


「……ねぇ、ミラさん? ハーブに何の用?」


玲華が鋭い視線を向ける。


「うふふ……そんなに怖い顔しないで。私はただ、ハーブと“昔の話”をしたいだけよ」


ミラは微笑むが、その言葉にハーブは一瞬、表情を曇らせた。


(昔の話……まさか、異世界でのことを?)


玲華と雪奈はその反応を見逃さなかった。


(ハーブが動揺してる……やっぱり、この女、何か知ってる!)


だが、ミラはそれ以上は何も言わず、にこやかにハーブの隣を歩き始めた。


ハーブの記憶


授業中。


ハーブは黒板を見つめながら、心ここにあらずだった。


(ミラがここに来たのは、偶然じゃない……)


彼女が関係しているなら——“あの出来事”も、無関係ではないはずだ。


異世界での記憶——。


ハーブは、過去に一度、異世界で“消えたはずの存在”を目にしたことがある。


それは、黒鋼会の者ではなく——“異世界の亡霊”と呼ばれる存在だった。


その影は、じわじわと現実世界に滲み出してきている……。


(まさか、ミラもそれに関係しているのか?)


不安が胸をよぎる。


しかし、その考えを整理する暇もなく——。


「ハーブ、放課後付き合って?」


授業が終わると同時に、ミラが笑顔で声をかけた。


「お前と?」


「そう。ちょっとね、二人きりで話したいの」


玲華と雪奈がぎょっとする。


「ちょ、ちょっと! なんで二人きりなのよ!」


玲華がすかさず食い下がるが、ミラは涼しい顔で言った。


「だって、私とハーブの“昔の話”をするのに、他の人がいたら邪魔でしょ?」


「……っ!」


玲華が言葉を詰まらせる。


雪奈も何か言いたそうにしていたが、気後れしてしまう。


「じゃあ決まりね♪」


ミラはウィンクして、ハーブの腕を軽く叩いた。


玲華と雪奈の悔しそうな視線をよそに、彼女は悠々と教室を出て行った——。


夜の邂逅


「で、話ってなんだ?」


放課後、学園の屋上。


夕焼けが空を染める中、ハーブとミラは向かい合っていた。


「単刀直入に言うわ、ハーブ」


ミラの表情が真剣なものに変わる。


「あなた……自分がなぜ異世界から来たのか、本当に覚えてないの?」


「……!」


ハーブは一瞬、息を呑んだ。


(……やはり、ミラは知っているのか?)


「あなたは“ただの迷い人”じゃない。異世界にとって、特別な存在なの」


ミラの瞳が、鋭くハーブを見つめる。


「あなたの“力”が目覚めれば、世界の均衡が崩れる……そう言われているわ」


「……どういうことだ」


ハーブは眉をひそめた。


「詳しくは、まだ話せない。でも、私はあなたの“味方”よ」


ミラはゆっくりと近づく。


そして——。


ふわりと、ハーブの首に手を回した。


「……っ!」


ハーブの心臓が、一瞬だけ跳ねる。


「あなたが私を選んでくれたら……私は、全部教えてあげるわ」


ミラの甘い声が、耳元に囁かれる。


ハーブの背筋に冷たいものが走る。


(こいつ……どこまで本気で言っている?)


しかし、ハーブが答える前に——。


「何をしてるの、あなたたち!」


玲華と雪奈の声が響いた。


嫉妬と対立


「ちょ、ちょっと! どういう状況!?」


玲華が怒りに満ちた視線でミラを睨む。


「こ、これは……!」


雪奈は真っ赤になって、慌てふためく。


「ふふっ、何もやましいことはしてないわよ?」


ミラは余裕たっぷりに微笑む。


「ただ、私とハーブは“特別な関係”だから……ちょっと距離が近いだけよ」


「はぁ!? 何それ!」


玲華が詰め寄る。


雪奈も何か言おうとするが、うまく言葉が出てこない。


「……とにかく」


ハーブは息をつき、ミラの手を外した。


「ミラ、お前が何を考えているのか知らんが……俺はお前の言葉だけでは信用できない」


「……ふふっ、そう言うと思った。でも、焦らなくていいわ。私があなたを振り向かせてみせるから」


ミラはそう言い残し、軽やかに立ち去った。


残された玲華と雪奈は、ハーブを睨みつける。


「……ハーブ、ちょっと話があるわ」


「わ、私も……!」


二人の迫力に、ハーブは小さくため息をついた。


新たな波乱の幕開け——。


次回予告


ミラの真の目的とは?


玲華と雪奈は、ハーブを巡る争いにどう動くのか?


そして、異世界の秘密がついに明かされる——。


次回、第29話「囚われし姫君」


ハーブの過去が、ついに暴かれる。

読んでくださりありがとうございます!


更新頻度ですがなるべく毎日11時頃と22時頃の2話投稿を目指します!


感想など書いていただくと今後の励みになるのでどんどんコメントしてください!

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