第26話 動き出す策略
黒鋼会の動き
静寂の中、闇に包まれた一室。
黒鋼会の幹部たちが集まり、低い声で言葉を交わしていた。
「——影喰いが討たれたか」
黒いローブをまとった男が呟く。
その声には驚きはなく、むしろ愉快そうな響きがあった。
「やはり、あの少年はただ者ではないな」
「まさか、影喰いにまで対抗できるとは……。異世界の力を引き出す技でも持っているのか?」
「……ハーブ・グレイヴ、か。奴の過去を探る必要があるな」
静かに目を細める幹部たち。
そして、その場にいたもう一人の人物が口を開いた。
「……それなら、適任がいる」
そう言いながら、彼はゆっくりと前に出る。
「そろそろ——彼女を投入する時では?」
その言葉に、幹部たちは意味深に笑った。
「ふむ……確かに、彼女ならば適任だな」
「では、手配を進めよう」
そう言い残し、彼らは静かに消えていった——。
そして、翌日。
学園に、新たな転校生が現れることとなる——。
転校生・ミラの登場
朝の学園。
ハーブ、玲華、雪奈の三人は、昨日の影喰いとの戦いについて話し合っていた。
「結局、誰が影喰いを学園に送り込んだのかはわからないままだな」
ハーブが腕を組みながら呟く。
「でも、黒鋼会が関与している可能性は高いわ」
玲華も真剣な表情で考え込む。
雪奈は少し不安げに、ハーブの袖をそっと引いた。
「……また、何か起こるのでしょうか?」
ハーブは少しだけ微笑み、雪奈の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だ。何があっても、俺が守る」
その言葉に、雪奈は頬を赤く染めて小さく頷いた。
玲華はじっとその様子を見ていたが、わずかにむっとした表情を浮かべる。
だが、その時——。
ガラッ!
教室の扉が開き、一人の少女がゆっくりと歩み入る。
「——皆さん、初めまして」
長い銀髪に、整った顔立ち。
まるで高貴な姫のような美貌を持つ少女が、微笑みながら教壇に立った。
そして、自己紹介をする。
「ミラ・ノクターンです。本日から、この学園に転校してきました」
その名前を聞いた瞬間、ハーブはピクリと反応した。
(ミラ……!?)
ハーブの脳裏に、一瞬だけ過去の記憶がよぎる。
玲華もハーブの様子に気付き、不審そうに彼を見た。
「知り合い……?」
玲華が小声で尋ねるが、ハーブは無言のままミラを見つめていた。
ミラはそんな彼を見つけると——。
「——あら?」
と、嬉しそうに微笑んだ。
「久しぶりね、ハーブ」
その瞬間、教室がどよめく。
「えっ、知り合い!?」
「しかも、なんか親しげ……!?」
玲華と雪奈も驚いた表情を浮かべた。
そして、ミラはゆっくりとハーブに近づくと——。
「また会えて嬉しいわ、ハーブ……♥」
そう言いながら、いきなり彼の腕に絡みついた。
「なっ……!?」
玲華と雪奈が同時に声を上げる。
しかし、ミラは全く気にせず、甘えるようにハーブに寄り添う。
「もう……久しぶりなんだから、もっと喜んでくれてもいいのに」
「……お前、何を企んでる?」
ハーブは冷静な表情を崩さないまま問いかける。
しかし、ミラはただ無邪気に微笑むだけだった。
「ん〜? 別に、ただの再会を喜んでるだけよ?」
玲華は険しい表情を浮かべ、鋭い視線をミラに向けた。
「あなた、ハーブとはどういう関係?」
「ふふっ、どういう関係かしら?」
ミラは挑発的に微笑みながら、玲華の顔を覗き込む。
「私たち、とっても深い関係よ?」
「っ……!?」
玲華の顔がピクリと引きつる。
「そ、そんな……!」
雪奈も動揺し、ハーブの袖をぎゅっと握る。
しかし、ミラは余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、さらにハーブの腕にぴたりと密着した。
「ねぇ、ハーブ? 久しぶりに、昔みたいに私のこと撫でてくれてもいいのよ?」
玲華と雪奈が、同時に「はぁ!?」と声を上げる。
教室中の生徒たちも大興奮だ。
「おいおい、なんだこの三角関係……」
「いや、もう四角関係では?」
そんな周囲の反応をよそに、ハーブはただミラをじっと見つめていた。
(ミラ……やはり、お前も黒鋼会と関わっているのか?)
ミラは依然として無邪気な笑みを浮かべていたが——。
その瞳の奥には、何か別の意図が隠されているようだった。
次回、第27話「揺らぐ均衡」
新たなヒロイン・ミラの登場。
彼女の目的は? そして、ハーブをめぐる関係はどう変化するのか?
物語は、さらに激しさを増していく——。
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