第23話 静かなる侵略
静けさが夜の学園を包み込む。だが、その闇の中で、確実に“何か”が動き出していた——。
異変の始まり
「……最近、どうもおかしい」
玲華は教室の窓際で腕を組みながら、ぽつりと呟いた。
昼休み、ハーブ、玲華、雪奈の三人は学園の中庭で昼食をとっていた。
「何か、あったのか?」
ハーブが問いかけると、玲華は真剣な表情で言葉を続けた。
「転校生が消えている件……それだけじゃない。今朝、何人かの生徒が“体調不良”で欠席しているの。しかも、みんなここ数日で転校してきた子ばかり」
「それって……偶然じゃないんですか?」
雪奈が少し不安そうに尋ねる。
「偶然ならいいんだけどね。でも、ただの風邪にしては、ちょっと出来すぎていると思わない?」
玲華の言葉に、ハーブは考え込む。
(転校生が消えた後に、体調不良者が続出……何か関係があるのか?)
だが、その疑問を整理する間もなく——。
「——失礼するよ、皆さん」
穏やかな声が、彼らの会話に割り込んだ。
振り向くと、そこに立っていたのは鷹森だった。
「またお前か……」
「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか、ハーブ君」
鷹森は相変わらず柔らかな笑みを浮かべている。
「君たちに少し気になることを伝えに来たんだ」
「気になること?」
玲華が鋭く聞き返すと、鷹森は軽く頷いた。
「——昨夜、この学園に“異変”があった」
「異変?」
ハーブが目を細める。
「何があったんだ?」
「……旧校舎の扉が、何者かによってこじ開けられていたんだ」
その言葉に、三人は思わず息をのむ。
旧校舎——。今は使われておらず、立ち入り禁止となっているはずの場所。
「何者かが、そこに侵入した形跡がある。君たち、心当たりは?」
「いや……」
ハーブは答えながらも、昨夜のことを思い出す。
(あの時感じた、妙な違和感……まさか、旧校舎に何かがいるのか?)
「まぁ、今のところはただの報告さ。君たちも気をつけたまえ」
そう言い残し、鷹森は去っていった。
玲華と雪奈は顔を見合わせる。
「旧校舎……行ってみますか?」
雪奈が小さな声で提案した。
「……行くしかないわね」
玲華はそう決断し、ハーブも無言で頷いた。
こうして、彼らは“異変”の真相を確かめるため、旧校舎へと足を踏み入れることになった——。
旧校舎の闇
夕暮れ時。
学園祭の後片付けがまだ終わっていない校舎とは違い、旧校舎はひっそりと静まり返っていた。
「ここ……本当に人が入った形跡があるの?」
雪奈が不安そうに辺りを見渡す。
「少なくとも、鍵が壊されていたのは確かよ。鷹森が嘘をつくとは思えないし」
玲華は慎重に周囲を確認しながら、そっと扉を押した。
ギィィィ……
重い音を立てながら、旧校舎の扉が開く。
「……行くぞ」
ハーブが先頭に立ち、三人は静かに足を踏み入れた。
廊下は埃っぽく、壁には長年の劣化によるひび割れが目立つ。
だが——。
「……何か、変だ」
ハーブは立ち止まり、周囲を見渡した。
旧校舎は確かに古い。しかし、何かが違和感を生んでいる。
玲華も同じことを感じたのか、険しい顔をしていた。
「この空気……ただの廃墟じゃない。何か、“違う”ものがある」
「違う……?」
雪奈が首をかしげたその時だった。
バサッ——!
突如、廊下の奥で何かが動いた。
「……!」
三人が身構える。
「誰かいるの?」
玲華が声をかけるが、返事はない。
だが、次の瞬間——。
「——見つけた」
不気味な声が、闇の中から響いた。
そして——。
廊下の奥から、異形の“何か”が姿を現した。
次回予告
旧校舎に潜む“何か”。
黒鋼会とは異なる、新たなる脅威。
そして、ハーブの過去が少しずつ明らかに——。
次回、第24話「異世界の亡霊」
学園の平穏が、音を立てて崩れ始める——。
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