第18話 疑惑の影
学園祭の準備が本格化し、校内は普段とは違う賑わいに包まれていた。ハーブのクラスでもメイド喫茶の準備が進んでいたが、そこには予想外の問題が待ち受けていた。
「えっ!? メイド服が……ない!?」
教室の奥で準備を進めていた女子たちの声が響いた。
「どういうことだ?」
ハーブが坂井の方を見ると、彼は青ざめながら衣装が入っているはずの箱を確認していた。
「ない……ないぞ!? ちゃんと注文したはずなのに!」
「おかしいわね……昨日までは確かに届いていたのに」
玲華が眉をひそめる。
「誰かが持ち去った……?」
雪奈が心配そうに呟くと、クラスメイトたちも騒ぎ始めた。
「どうする!? このままじゃメイド喫茶が……!」
「そんなことで騒ぐな」
ハーブは冷静に周囲を見渡した。
(盗まれた可能性があるが、なぜメイド服だけ……? ただの悪戯か、それとも意図的な妨害か)
すると、玲華がハーブの隣に近づき、小さな声で囁いた。
「……何か思い当たることは?」
「……ああ。黒鋼会が関与している可能性もある」
「……そこまで考える?」
玲華は少し驚いたが、ハーブの勘は侮れない。
(もし黒鋼会が絡んでいるとすれば、単なる衣装の紛失では済まないかもしれない)
「とりあえず、学校中を探してみる」
玲華がクラスメイトに指示を出すと、雪奈も控えめながら声を上げた。
「私も手伝います!」
「じゃあ、俺も行くか」
ハーブはそう言いながら、玲華と雪奈とともに学園内を回ることにした。
雪奈と玲華の会話
昼休み、衣装探しの合間に、玲華と雪奈は並んで歩いていた。
「雪奈、ちょっといいかしら」
「はい?」
玲華は少し考えた後、意を決して口を開いた。
「……最近、ハーブとよく一緒にいるわね」
「えっ……そ、それは……」
雪奈は頬を染めて、視線を伏せた。
「……玲華さんこそ、いつもハーブさんと一緒にいますよね?」
玲華は少し言葉に詰まる。
(確かに、私は……)
「……私は、その……あいつの実力が気になるだけよ」
玲華は少し誤魔化すように言った。
しかし、雪奈はすぐに言葉を返した。
「でも……玲華さん、ハーブさんのことを心配してましたよね。あの時の戦いの後も……」
「っ……!」
玲華は一瞬言葉を詰まらせた。
(……あの時、確かに私はハーブを心配していた)
それが何を意味するのか、玲華自身もまだ整理がついていなかった。
雪奈はそんな玲華の様子を見て、少し微笑んだ。
「……ハーブさんって、すごく不器用ですよね。でも、優しいところもあると思います」
「……ええ」
玲華も、小さく頷いた。
その時——。
「玲華! 雪奈! こっちだ!」
ハーブの声が響いた。
盗まれた衣装と黒鋼会の影
ハーブたちが駆けつけると、そこには放置された段ボールがあった。
「これ……衣装の箱じゃない?」
玲華が慎重に開けると、中には確かにメイド服が入っていた。
「なんでこんなところに……?」
「誰かが意図的に隠した、と考えるのが妥当だな」
ハーブは箱を見つめながら呟いた。
(黒鋼会の仕業か、それとも学園内の誰かか……?)
衣装は無事だったが、何かが引っかかる。
(黒鋼会の内部に裏切り者がいる……もし、それが学園にまで影響を及ぼしているとしたら……)
ハーブは、これからさらに警戒を強める必要があると感じていた。
次回予告
学園祭の準備が進む中、ハーブに新たな試練が訪れる。
黒鋼会の影が忍び寄る中、玲華と雪奈の関係にも変化が……!?
次回、第19話「学園祭、開幕!」
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